○ニール・ディランディ編
「どうしてここにいる、ニール」
驚いて駆け寄ろうとすると、ニールはまあ、と照れ臭そうに呟いた。
「なんつーのかな……。ま、たまにゃあ、あんたを迎えに来てもいいんじゃねえかな、って思ってさ」
「それは……嬉しいな」
グラハムは微笑んだ。ニールはその笑顔を見て、行くぞと素っ気なく呟いてふいと視線を逸らす。
そのまま、ニールが歩く隣に並んで一緒に歩き始める。ニールは街中のショーウィンドウをちらちら覗き込んで、もうすっかり春だな、と呟いた。
「ああ、君の誕生日はまだ少し寒かったがね」
「……そうだったっけ?」
そんな記憶は、と思い出そうとしたニールは、そもそもこの男が誕生日にニールを一歩たりとも家から出してくれなかったことを思い出した。
「ってか、寒いとか暑いとか言えるような状況じゃなかったじゃねえか、あの日」
ついでに付け加えさせて貰えば、夏でもないのに服も着せて貰えなかった。ニールの誕生日なのに。
思い出したように恨み言を口にするニールに、グラハムがそれは申し訳なかった、と耳元で囁く。
「外でベタベタすんなよ、恥ずかしい」
「しかし、君と二人で並んで帰るなど、これだけでも……というよりも、ニール!」
「なんだよ」
「今初めて気付いてしまった、私は家族と家に帰るのは初めてだ!!」
これが噂に聞く「お迎え」というものか、これは素晴らしい体験だ、と目をきらきら輝かせながら訴えてくるグラハムに、ニールは暫く黙った後で、良かったな、と呟く。
「……それじゃ、いっそ初めての寄り道も経験すっか。迷子もなかなか楽しいもんだぜ?」
「君の子供の頃が目に見えるようだが、いいだろう、お供しよう」
言いながら家に帰るのと逆方向の角を曲がった二人の姿は、寄り添いながら雑踏に紛れて消えて行った。
楽しそうにグラハムを引っ張り回すニールが満足して家に帰り着くまでには、まだかなりの時間がかかりそうであった。
―――MISSION MISFIRED.
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