○ハレルヤ・ハプティズム編
ちゃーんちゃちゃーん♪ ちゃーちゃーちゃーちゃーんちゃちゃーん♪、という鼻歌が聞こえてきて、グラハムは足を止めた。
「この川井憲次サウンドの鼻歌は……武力介入?」
「その通りよォ! よお、此処であったが百年目だなぁ、ガノタの残念な金髪さんよぉ!」
途端、目の前に現れた黒髪の青年に、グラハムは眉を顰めた。
「む、君は……」
「喧嘩番長見参! もとい、ハレルヤ様のお出ましよぉ!」
ぽん、とグラハムは手を打った。思い出した。
「ああ、あの……KYの」
「空気読まねえ様はそちら様だろうがぁ! 今日はよぉ、ばれんたいんでーとやらのお礼参りに来させて貰ったぜ」
「……私は君にチョコレートを渡した記憶はないが」
言うと、黒髪の青年は小馬鹿にしたようにハッ! と嘲笑った。
「語るに落ちたなぁ、フラッグ・ファイターさんとやら。お前、アレルヤにチョコレートを渡しただろう? アレルヤのものは俺のもの、俺のものは俺のもの、すなわちお前のチョコは俺様が美味しく頂いたも同然!」
よくわからないが、とグラハムは呟いた。
「つまり、お返しをしてくれようというわけか」
「だから最初っからそう言ってんだろタコがぁ! 雑種かてめえ!」
「いや、今少し余所の金ぴかが混じらなかったか」
「細かいことはいい! それでよぉ、俺様がお前のために、素晴らしいギフトとやらを用意してやったぜぇ。超兵様からの贈り物、有り難く受け取りやがれ!」
ギフトと言っても、とグラハムは困惑した顔でハレルヤを見る。
「君は手ぶらでは……」
「超兵様はなんでも手早いのよ! 一分で用意しておいたぜ!」
「一分……というか既に十分近く経過しているが」
「細けえことはいいんだよぉ! ソーローな男は嫌われんだぜ!!」
ざっくりと言い捨てて、ハレルヤは長身を屈めるようにして、二色の瞳でグラハムの顔を覗き込んできた。
「さて、テメエの可愛い眠り姫様とやらだけどよぉ、今頃、王子様が助けに駆けつけんのを待ってんだろうなぁ……」
「!! 貴様、ニールになにかしたのか!!」
「さぁてね」
愕然とするグラハムを前に、くっくっく、とハレルヤはどうみても悪役の笑みを浮かべる。
「自分の目で確かめればいいじゃねえか、エロ同人誌みたいに!」
「……ニールに何かあれば貴様を生かしてはおかんぞ!」
言いながら走り去るグラハムの背中を、ハレルヤは哄笑と共に見送っていた。
家に帰り着くと、リビングの床にニールが倒れていた。焦って駆け寄り、抱き起こす。
「……ニール、大丈夫か!?」
思わず着衣の乱れを確認して何もないことにホッとしたグラハムに、ニールは弱々しく微笑みかけた。
「なんか、……あいつが、アレルヤが、急に遊びに来て。チョコレート、の、お礼だって、……くれたオレンジジュース飲んだら、からだが、へん」
呟くと、ニールは青い目をきらりと熱っぽく光らせながら、グラハムのネクタイに手を掛ける。呼吸がかなり荒い。
「なあ、……あついんだ、グラハム」
たすけて、と舌足らずに耳元で囁かれ、一体あの超兵は何を仕込んでいってくれたのか、と思いながら、グラハムは請われるままにリビングの床の上に引き倒されたのだった。
―――WOW! MISSION FULL COMPLETED!!(「世界の悪意が見えるようだよ!」)
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