『約束の土地』
遥かな土地の宗教の、その約束の土地にはミルクの河が流れていると、ものの本には書いてあります。
飢えることも、乾くことも、争うことも。・・・何もない、永遠の楽園。
三蔵に聞いたら『坊主に言うな。景教の教えは好かん。』と鼻で笑い飛ばされましたけど。悟空に至っては『ミルクだけ〜?そんなのつまんねぇじゃん。やだな、俺。』だし。悟浄は・・・耳も貸しませんでした。夢みたいなおとぎ話には魅力を感じないのだそうです。
その時は、笑って流せてしまえたのですが・・・どうにもこうにも、寝付きが悪くて仕方がないのです。
もし・・・もし。もし、です。もし本当に・・・そんなところがあったら。僕は、一も二もなくそこへ行こうとするかも知れません。
はっきり言って、こんな甘い幻想は僕だって好きじゃない。
何もしないで暮らしていくなんて、ある意味地獄です。そんな無為はおそらく耐えられないでしょう。根っからの貧乏性ですから。
けれど。
僕を惹きつけて止まない、ただ一つの事柄。
甘いミルクの流れる伝説の約束の土地の、その名は・・・・・・
『カナン』
・・・・・・『花楠。』
女々しいと笑いますか?僕だって笑っちゃいます。高々、この程度のことに揺れる心に。
けれど。僕にとってこの単語は特別な意味を持つでしょう。
はるけき未来に約束された豊かな楽園。
僕が二度とたどり着けない場所。
―――――彼女は僕の『約束の場所』でした。今までも、・・・そして、これからも。
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