高い買い物?

 

 

 

 

 最近、アカリは淋しくて仕方がない。

 幼なじみのヒカルは急に囲碁なんか始めたと思ったらなんだかどんどん強くなって知らない所へどんどん行っちゃうし。慌ててアカリも囲碁を始めたけれど、アカリが何とか碁を打てるようになった頃には、ヒカルはとっくに棋院とかいう所へ入って、アカリなんかとはもう碁を打ってはくれなくなった。

 囲碁部の部員だって思うように集まらない。

 そんなこんなで、最近のアカリは超ブルーだ。

 今日だって折角久々に家でカップケーキを焼いたから、ヒカルの所へ持っていってやったのに、ヒカルは「いらねぇよ、そんな甘ったるいもん。今腹減ってねーもん。」の一言だし。しょうがないから部活へ持っていこうとしても、

「今日はみんな来られないって言ってたなー・・・。」

 クラスの皆で食べようにもお昼時は終わっている。何となくブルーな気持ちが増したようで、アカリは力無く理科室のドアを開けた。

「・・・・・三谷君。」

「おう。」

 理科室には先客が居た。イレギュラー囲碁部員三谷祐輝が、折り畳みの碁盤を広げて一人で黙々と石を並べていたのだ。誰も居ないと思っていたアカリは、意表をつかれて入り口で立ちすくむ。

「・・・何だよ、今日は活動日じゃねぇのかよ。それともオレがいちゃ悪いかよ。」

「う、ううん、ちょっとビックリしただけ。三谷君が来てるとは思わなかったから・・・・・・。」

「オレの対局ノートまで勝手につくっといてよく言うぜ。お邪魔なら帰ってもいいんだぜ、別に。」

「そんなことないない!!お願いだから居てよ、ね?今日他に誰も来ないみたいで、私一人でどうしようか思ってたの!!」

 ちろりんと睨んで立ち上がりかける三谷を、アカリは慌てて押しとどめた。この上三谷にまで帰られては、本当にアカリはひとりぼっちだ。

「・・・しゃーねーなーぁ・・・・・・」

 三谷は上げかけていた腰を再び下ろし、鼻をひくひくと震わせた。

「・・・何か・・・いい匂いがしねぇか?」

「あっ、私カップケーキ焼いたんだった!!・・・三谷君、食べる?」

「・・・・・・食べる。」

 あっさりと頷く三谷にカップケーキの箱を差し出すと、五個入りのそれを彼はぺろりと平らげて、

「丁度腹減ってたんだよ。」

 と呟いた。

「・・・美味しかった?」

「・・・みんなこんなもんなんじぇねぇの?カップケーキって。」

「・・・・・・・・・・。」

 三谷相手に本気で喧嘩したって仕方がないことを既に学習しているアカリは黙ってため息を付いた。本当にひねくれているというか素直じゃないというか・・・・・・

「・・・じゃ、オレが直々に対局してやるよ。そこに座れば?」

 いきなりそう言われ、アカリが少し慌てる。

「ええっ?!そんなこと言われたって・・・」

「置き石は?早くしろよ。」

「えーっと・・・・・・」

 あまりにも珍しいと言えば珍しい三谷からの申し出に、アカリは戸惑いながらも対局を始めた。

 

 

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「・・・下手くそ。・・・・・・」

「仕方ないでしょう?私まだ初心者なんだからぁ!大人相手に一杯打ってた三谷君に勝てるわけないじゃない!!」

「・・・に、したって進藤の幼なじみとは思えねぇよなー・・・」

 しみじみと同情するように呟かれ、アカリがムキになる。

「三谷君、もう一局!!もう一局相手してよ。」

「やだね。」

「ひどーい!!」

「だってお前下手くそなんだもん。」

 あっさり言い放って三谷が立ち上がる。

「そんなぁ、ねぇ、お願いだからー。」

「・・・そうだなー、どうしてもって言うんなら、何か食いもん持ってくるごとに一局打ってやってもいいぜ。」

「えー、ぼったくってないー?それ〜。」

「嫌ならいいんだぜ。」

「・・・わかったわよ〜・・・またなんか作ってきてあげるね。」

「クッキー。」

「・・・・・・。」

 ふくれっ面のアカリを無視しながらも、三谷は碁盤の前に座り直してくれた。その様子と無言で碁石を並べ始める様子を見て、もしかしたらさっきのカップケーキのお礼のつもりなのかしら、でももうちょっと他に言い方があるじゃないよねー、と複雑な思いに駆られるアカリであった。

 

 とりあえず、しばらくはアカリのブルーな気持ちもちょっと和らぐかもしれない。

 

 

 

 

――――― 終

 

 

 

 

 

 

<言い訳>

初めてのノーマル(笑)なヒカゴでアカリ×三谷です(笑)

りょうくんの囲碁サイト独立記念でした。