| 一本気 |
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ほっとけねぇ。 ああ、あんなにヘボヘボな腕前で強いか弱いかもよくわかんねぇヤツなんだけど・・・ なんか、こう、キラッと・・・時々だぜ?時々、だけど・・・目が離せないんだ。 だからさぁ、つい・・・面倒を見ちまうんだよなー。全然、全く、大したことない腕で、俺から見りゃぁほんっと格下で、一緒に打ってて気が滅入るようなやつなのにだぜ? だけど・・・・・
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「おーい、和谷ぁ。肉まん買いに行くんだけどさぁ、お前いらねぇ?」 「あのなぁ・・・進藤・・・」 「何?」 「何じゃねぇだろう?お前今度の若獅子戦出るつもりなんだろうが!!こんな所でのんきに茶ぁしばいてる場合か?」 「いいじゃん。肉まん買ってくるくらい。あ、あ、そうだ。」 そう言ってぱたぱたと走り去った進藤ヒカルは、ずるずると自分の荷物を引きずってくるとそりゃあ嬉しそうに中を探り始めた。一体何を始めるつもりなんだ、と不審に思って手元を覗き込んでみると、進藤が引っ張り出したのは何と良く駅の売店なんかで売ってるような安っぽい二つ折りのボードゲームの・・・碁盤だった。いそいそと外套を着ながら進藤がそれをダウンジャケットのポケットにねじ込むのを見て、俺は呆れて声を掛けた。 「何だぁ?お前そんなモン持ち歩いてんのかぁ?」 「うるせーな、これさ、便利なんだよ。碁石が磁石になっててちょっとぐらぐらしたくらいじゃずれないしさぁ。」 「あーん?何処の世界にそんな安っぽそうなモンで碁を打ってる院生が居るよ?」 「いるじゃん。ここに。」 「・・・お前は院生規格外品だからいいの。」 「なんだよそれぇ!!感じ悪いなぁ。・・・・・・行くぞ佐為」 ぶちぶち言いながら進藤は二宮金次郎よろしくゲーム盤を広げて何かぶつぶつ言いながら出ていこうとした。 「おい、ちょっと待てよ、進藤。」 「・・・あぁ?何だよ。」 「・・・・・・やっぱり俺も行く。」 実は、さっきから小腹が減ってどうしようもなかったのだ。
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「だぁからさぁ、ここでこっちの一子切ってさ、・・・」 「ばぁか、それよりこの黒を・・・」 近所のコンビニで肉まんと缶入りのお茶を買って公園のベンチで食べながら、俺は結局その「ちゃちな」碁盤での囲碁に真剣に付き合ってしまっていた。 「ああっ、もー、わっっかんねーよっ!!投了っ!!」 「はは、ざまぁねぇな、進藤。」 「あー、ちくしょー、良いトコまではいったと思ったんだけどなぁー。」 「まだまだだなぁ。落ち零れ院生さんよぉ。」 「るっせー、次は勝つからな!!」 ・・・嘘だ。 実は内心冷や冷やものだった。一組の俺がともすれば劣勢に追い込まれるほど、進藤の腕はこの短期間で上昇し続けてる。 ・・・こいつ、碁を始めて一年経ってないって言わなかったか?! 始めて聞いたときは冗談かと思ったけれど。この上達具合なら、もしかして・・・
『打倒塔矢アキラの第一歩か。』 いつだったか、こいつのそんな呟きを耳にした。 ・・・こいつなら、もしかして。 いいや、まさかな。こんな、ぽやんとしたお子様があの塔矢に勝てるわけがない。 だけれど。もしかしたらそうなるかもなぁ、と時々思う。 こいつなら、もしかしてやってしまうかも知れない。ただひたすらに囲碁に打ち込んでいるこいつなら。 こんなに一途に、真っ直ぐに。 ―――――ただ、塔矢アキラだけを見つめて。 「・・・どうしたんだ?和谷。難しい顔して。肉まんに石でも入ってたのかよ?」 「・・・いや。」 ・・・何だろう。胸が痛い。ひりつくような焦燥感。同じ思いを、一度だけしたことがある。アレは・・・塔矢がプロ試験の初戦をリタイアしておきながら、あっさりプロになってしまったときだ。 ・・・いつか、俺はコイツにも置いて行かれてしまうんだろうか。 とても手の届かないような高みへ、コイツも駆け上っていってしまうのだろうか。 誰も手が出せないような場所へ。 「・・・はは・・・それこそ、馬鹿な・・・だよ、な。」 「なぁーにしてんだよー、和谷ー!!先に帰っちまうぞー?!」 いつの間にか缶入りの鳥龍茶を飲み干した進藤が遥か彼方で手を振っている。 「あっ、テメェ薄情なヤツだなぁ、待ちやがれ!!」 慌てて立ち上がって後を追う。
―――――不思議な胸の痛みは、まだ消えてくれない。
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<言い訳。> 俺が悪かった・・・もう和谷ヒカはやんないよ・・・ そっか・・・今気付いたわ・・・私ってアキヒカだったのね・・・(慟哭) サヨナラ何も知らない私。 だだだだ・・・駄文をすみません(涙) 煮るなり焼くなりサーバーから永久追放するなりお好きになさって下さい〜(汗) では!! 装丁もりょうくんのに合わせようとして失敗しました直リンクオッケーです(失踪)
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