おやすみ・1
by坂本 了さま
笑うのも、怒るのも、眠るのも。
君はいつも唐突で。
縛られない、君だけのスタイル。君だけのタイミング。
「もー、ルフィったらそんなところで寝ちゃったの?」
夕飯のすぐ後、しばらく見張り台の上でで何やら海鳥と騒いでいたと思ったら、今は甲板の真中で大口を開けて転がっている船長を発見して、航海士は呆れた声をあげた。
「今夜は雨が来るって朝から散々言ったっちゅーの! 起きろっ」
がすがすと蹴りを入れてみるも、当然そんなことでこの男の眠りを破れるワケがなく。
「いーですよ、ナミさん。このバカはオレが運んどきますから」
明日の仕込を終えてキッチンから出て来た料理人が咥え煙草で空を見上げた。
今にも泣き出しそうに黒く凝った雨雲。
「降り出したら、見張り台の登りは滑りやすくなりますよ」
航海士の手には大きめの黒のレインコート。
今夜の見張り番であるところの剣豪は、やはり用意がいい方とは言えなくて。
「…ほんとに…バカが多くていやんなっちゃうわ」
肩をすくめると、軽く手を振った。
「じゃ、こっちのバカはよろしくね、サンジくん。おやすみ」
「おやすみなさい」
身軽に宵闇に消える背中を見送ると、料理人は大きく煙を吐き出した。
先ほどの航海士よりも更に乱暴さ5割増で、げしっと寝転ぶ男の腹に足を乗せる。
「おい、クソゴム」
「ん…オレの…にく……」
あまりにお定まりすぎる寝言を呟く船長に大きく眉を一つしかめて、よっこらせっと肩に担ぎ上げる。じゃがいも袋の要領。
野郎相手に。引き摺らないだけ大サービスだ。
だらんと放り出された腕がそのまま料理人の顔面にぶちあたって。
腹がたったので噛み付いてやった。
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