どうしてどうしてどうして。
どうせこういう事になるんなら、どうしてもっと早く、佐為と出会えなかったんだろう。
そうすれば、もっと早く碁を覚えられて―――もっと早くアイツに追いつけるかも知れないのに。
アイツ。塔矢。
すました顔して。努力なんかと無縁な天才少年に見えるのに。
その実、誰よりも負けずギライで努力家でちっともなりふり構ってなくて、そのくせすっげー謙虚でさ。
神様はズルイ―――なんて、言いたくない。絶対。
ただ無性に自分が悔しい。
あと1年でも2年でも早く、碁を始めていたのなら―――ああ、こんな事グチにしかなんないって、いくらオレだってわかるけど。
畜生、オレが全速で走っても、アイツもうんと先をやっぱり全速で突っ走ってんだよな。
でも、見てろよ。
きっと、オレの全速力の方が、アイツより速いはず。だから、いつか必ず捕まえる。
で、追い越してやるんだ。
その日が明日にでも来てほしくて、胸の奥が焼き付きそうだけど、大丈夫、とオレは自分に言い聞かせる。
先はまだまだ長いんだから。多分。
<End>

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