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○第三章○
「ドラコ・マルフォイ/絶望」
それが、僕の胸の中に有ると気がついたのは、何時のことだっただろう。
理解したとたんに、焦燥感に駆られた。
―――――なぜだ?なぜ、僕は、こんなにも孤独を感じている?
欲しいものは何でも与えられる。高価な物でも、稀少な物でも。けれど、けして満たされることはない飢餓感。
満たしたくて、その思いを手近にいた両親にぶつけた。…今思うと、あの両親に対して、適切な方法を取らなかった、と反省もするが…あの時は、それで精一杯だった。拗ねて甘えて、愛情を引き出そうと何度も試みた。
両親は。手に負えなくなった僕を領内の離れ屋敷に隔離した。
ショックだった。父上も、母上も。義務感はあるけれど、僕を本当に愛してくれている訳ではない…
僅かばかりの反抗期の後に、僕が悟ったのはそれだった。
代償を求めた。
友人が出来れば、恋人が出来たら、この飢えは消えて無くなるだろうか。
僕はただ、がむしゃらに、愛してくれる人を捜した。愛を与えてくれる人、好意を寄せてくれる人を求めた。
グリフィンドールの三人組に出会ったのは、丁度そんな頃だった。
お節介で、人の事情にまでずかずか踏み込んでくる、頭が良くて妙に鋭いグレンジャー。
行動の全てがむかつくが、とにかくお人好しで人畜無害であることだけは折り紙付きのロン。
そうして。
多大な期待を受け、背負った運命の重さによろめきながらも、いつだって人のために一生懸命な…ハリー。
奴らはよせばいいのに、僕にまでちょっかいをかけてきた。
だから。あいつらの所為で、いつの間にか僕はちょっとだけ…人を信じても、好きになっても、いいのだと…思うようになってきていた。
そう。
あの日、父上からの手紙が来るまでは。
『我が息子へ』
その一文で始まる父上からの手紙は、僕の行動を詰問し、グリフィンドールとの馴れ合いを非難し、ハリーやロンとの友情を叱責するものだった。
僕は。
生まれて初めて、父上に反抗した。次の休みの日に屋敷を訪れ、自ら父親の部屋に出向いて、説得を試みたのだ。
「僕は、ハリーやロンとの友情を大事にしています。もちろん、グレンジャーも悪い奴ではありません。父上、どうぞ彼らとのつき合いをお許し下さい。」
「…もう、よい。ドラコ。」
「父上、僕は…」
なお言い募ろうとする僕を、煩げに手を振って黙らせる。
「彼らとのつき合いは、勿論歓迎しているぞ?…事情が変わったのだよ、ドラコ。」
そう言うと、父上はぞっとするような凄味のある笑顔を浮かべた。
「まもなく、『あのお方』が力を取り戻され、ハリー・ポッターの豎子を踏み潰す日が来る…その時のために、お前は精々彼らと仲良くしているといい。」
「父上…!!」
僕は、後頭部を殴られたようなショックを受けた。『あのお方』が復活する。そうなれば、僕の父上とハリーは敵同士…僕は、どちらかを選ばなきゃいけない。
そんなことは、分かっていた。
けれど。
分かっていたけれど。
目の前にその事実を突きつけられると、覚悟も何も、できていなかったことに気づく。
どこか、実感として危惧していなかったに違いない。
「おや、何を蒼くなっている、マルフォイ家の跡取りが。お前が精々ハリーと友情とやらを育めば育むほど、引き裂かれたときの奴の痛みも、悲しみも、憤りも…計り知れないだろうな、ドラコ?」
でかしたぞ、と嬉しそうに言われ、僕は目眩を起こした。
「父上は…」
やっとの事で掠れた声を絞り出す。
「…父上は、僕を…ハリーと対峙なさるときの道具にするおつもりですか…?」
「道具?…ドラコ、口を慎みなさい。むしろ、切り札と言うのだよ。」
くっくっく、と肩が震える。愉快で堪らないようだ。
「あの、ハリー・ポッターが、お前を前にして、戦えるのかどうか、楽しみだよ、ドラコ。」
さっさとホグワーツに帰って、ハリーとの友情ごっこに精を出すがいい、我が息子よ。
高笑いと共に送り出された僕が…どんな風にして学校に帰ってきたのか、よく思い出せない。
その晩、頭が熔けそうになるくらい、必死になって考えを巡らせた。
父上は、僕をハリー相手の駒に使うつもりだ。
人質か、洗脳か…どちらにしても、この手でハリーを殺すような決断だけは…ごめんだ。
けれど。僕はまだ、父上を裏切れるほど…彼を憎むことも、できない。
この期に及んでもまだ、どこかで親の愛情を求めている自分が居て、ブレーキをかけるのだ。
どうしたらいい。
どうすれば良かった?
どちらも選べないまま。
朝の光と共に、僕は一つの結論を下した。
道具として使われるのは我慢ならない。
けれど、父上にも逆らえない。
ならば、自分自身を消してしまうしかない。
僕の存在が、皆に負担をかけるのなら。
白々と、明ける空と一緒に、心が凪いでいく。このまま、全ての感情を凍結させれば。何もかもなくしても、悲しくないだろうか。
「ハリー…」
これが最後、と呟いた名前は、分厚いブロードのカーテンに吸い込まれて消えていった。
三日後、僕はハリーに別れを告げた。
僕と君との道は分かたれた。もう二度と、交わらせない。
恩着せがましく死んでやるのは矜持に関わった。
僕の方も、ダメージは大きかった。
三日三晩、また眠れない日々が続いた。
涙はとうに枯れ果て、ただ瞳を空虚に開けているだけの夜を過ごし、これがハリーの為なのだと自分に言い聞かせ続けた。
しかし、やはりどこか僕の様子はおかしかったらしい。心配だと煩く付きまとってくるグレンジャーを心無い言葉で退け、クラップとゴイルの物問いたげな視線を無視しながら、僕はただ一つのことに没頭した。
失われた魔術の一つ、『闇』の召還。
それに喰われた者は、魂さえもこの世に残らないで消え失せるという。
どうせ死ぬなら、魂でさえ、誰にも利用されたくはない。たとえ父上にも、『あの方』にも。図書館司書のマダム・ピンスの目を潜り抜けて手に取った禁書は、純血の魔法使いである僕でさえ、つい躊躇うような禍々しい気を放っていた。
それでも、いざとなると決心が付かず、材料をそろえたり、魔法陣の手順を解いたりとぐずぐず準備をしていた僕だったが、父上から一時帰還を促す催促の手紙を受け取って、心を決めた。
今度帰ったら、どちらか選ぶことになる。ハリーか、父上か。
もう、後戻りはできない。
僕は僕であるために、術の発動を決意した。
調合した材料を混ぜ合わせ、一枚の札を描き上げた。中央に自分の血でサインをする。…後は、術の引き金を引くだけ。
元々そんなに持ち物はなかったが、僕は身辺を整理し、机に向かって遺書を書きかけて…止めた。
今更、死ぬ理由を弁解などしてどうする。…たとえハリー相手でも。下手な同情など、受ける気も引く気もしない。
また一晩、眠れない日が続いた。
翌日。寝不足の頭で廊下を歩く僕の前に、急に人影が出現した。避けようともしないその人物に、文句の一つも言ってやろうと不快気に眉をつり上げて顔を上げる。
「…ウィーズリー、君か。」
「やぁ、ドラコ。ちょっと話してもいいかな。」
背の高い人影は、毎度お馴染みロン・ウィーズリーの物だった。気の重い人物の出現に、ずきずきと頭痛が走る。
「…悪いが…」
「待てよ、じゃあ、そのまま、歩きながらでいいから聴いてくれ。」
避けて歩き出す僕の後を、ウィーズリーが慌てて追いかけてくる。
「ドラコ、ハリーが、目に見えて憔悴してる。食事もしないし、笑わない。」
「…それで?」
僕には関係ないだろう?という風に返事をするが、内心は心配で堪らない。けれど、気取られるわけにはいかない。絶対に。
「説得に行ったハーマイオニーも、…何かすごいショックを受けて帰ってきたみたいだった。そして君も戻ってこなかった。」
「ふぅん?」
不屈の意志を持つグレンジャーには、手を引かせるためとはいえ随分と酷な事を言ったから…罪悪感が胸を満たす。勿論、表にはちらとも見せないが。
「それだけじゃない。…君だって、辛そうだ、ドラコ。」
なぁ、何があった、としつこく食い下がってくるロンに、僕は足を止めて食ってかかった。
「君には関係ないだろう、ウィーズリー。ハリーのような下賤な奴と関わる時期は過ぎたってことだ。第一僕はスリザリン、お前たちはグリフィンドール、今までの方が不思議だったんだよ。辛そう?お前の目は節穴だな。辛そうに見たいだけなんだ。ハリーもな。捨てられた、という事実を認めたくないんだろう。いい加減、目を覚ませ、と、伝えておけ。」
それだけだ、と吐き捨てるように告げた僕の目を見つめ、ロンは大きく瞳を見開いた後、ゆっくりと、諭すように口を開いた。青い瞳が、悲しげにけぶる。
ふと、思った。僕の瞳とこいつの瞳は、同じブルーでも随分深さが違うものだ、と。僕の目の色が「翡翠」なら、こいつの瞳は「サファイア」か。
「なぁ、何で、どうしてハリーを避ける…?というより、君をそれほどまでに頑なにさせる原因は何なんだい?僕は、それが知りたいよ。」
心配そうに…本当に心配そうに語りかけてくるロンの口調と、全てを見抜いているような視線は、疼く心に凍みいって、酷く痛んだ。
「君は、ハリーとグレンジャーの心配だけしていればいい…違うのか?」
僕なんぞ、君の眼中にも入っていないんだろう?わざと意地悪くそう言ってやると、ロンは、躊躇いながらもきっぱりと口を開いて告げた。
「僕は、ハリーを親友だと思っている。ハーマイオニーのことは…愛してる。でも、正直君のことはあまり気に入らない。」
「…上等だ。」
「だけど、君にも辛くあって欲しくない。それじゃ、いけないのか?」
「欲張りだな。」
僕をまっすぐ見据えてくるロンの瞳には迷いが無くて、思わず視線を逸らしながら答える。
こんな風に言えたら。
こんな風に、真っ直ぐになれたら。
どんなにか、救われていただろう。
またしても、どす黒い気持ちで胸の中が一杯になる。
ロン・ウィーズリーなんか、くたばってしまえばいい。
「僕は、お前なんかに心配されたくない。反吐が出るほど迷惑だ。さっさと消えろ、目障りなんだよ、ウィーズリー。」
吐き捨てるように言って、踵を返す。
「待てよ、おい、話はまだ…」
しつこく肩に手をかけてくるロンを、僕は手に持っていた本で思いっきりひっぱたいた。
「やかましい!」
弾みで手から本が抜け、筆記具やファイル、羊皮紙共々当たりに散らばる。僕ははぁはぁと肩で息をしながら怒鳴りつけた。
「お生憎様、僕の方もお前が大嫌いだウィーズリー!貴様には純血魔法族のプライドはないのか?!矜持は?!ハリーだの、グレンジャーだの、皆マグル出身の輩じゃないか、そんな奴らと馴れ合って何が楽しい、ウィーズリィ!恥を知れ!!」
「…なん、だと?」
いくら君とはいえ、あの二人への暴言は許さないぞ。ゆらり、と立ち上がったロンの背後に、紛れもない怒気が伺える。
「…そうだ。それでこそ、僕と君らしい。」
せいぜい楽しく愛情ごっこをするんだな。僕に関知しないところで。…できるならもう二度と、見えないような場所でやってくれ。
後半は言葉にならなかったが。僕はそう言い捨てると、散らばった本を掻き集めて足早に立ち去った。
スリザリン寮に戻り、机の上に本を放り出して…一冊、足りないことに気がついた。
「…ああ。」
召還術の魔法書がない。…まぁ、今更関係ないか。がっちりと闇の魔法がかかっていて、純血の魔法使いじゃないと近寄ることさえ出来ない本だ。誰が図書室から持ち出したか大騒ぎになるころにはもう僕はこの世にいない。それに、内容も今更…術が今夜にも発動しようという今になっては、必要もない。
「…そういえば、ウィーズリー。」
あいつも、純血だったか。ちらりとそんなことが頭をよぎったが、今は考えないことにした。
とにかく、少しでも…眠りたい。ここしばらく、殆ど睡眠らしい睡眠を取っていない。
取り留めもない思考を止めると、僕は瞬く間に眠りの淵へと落下していった。
良い、月だ。
今夜は、死ぬにはいい晩だ。
窓から差し込む月の光にぼけっと思いながら、体を起こす。既に消灯時間も過ぎていたらしく、僕のベッドの周りの寝台にも、全てカーテンが巡らされている。ゴイルとクラップ…あいつらにも、随分世話になった。起こさないように、小さく感謝の言葉を口にする。
寝台から下りて、服を着替えた。死に装束にするつもりの新しい制服一式。上からは着慣れたローブを羽織る。どうせなら、ただの「ホグワーツの学生である」「スリザリン寮の」ドラコ・マルフォイとして生を全うしたかった。
マルフォイ家の子息である、そんなつまらない事情に、引き裂かれないような。
グレンジャーと成績を競ったり、ロンと口喧嘩をしたり、ハリーと未来を語り合ったり。指から零れ落ちてしまった、優しい時間。
望めない事だろうが…願わくば、そのままの日々がこの後も、ずっと。君たちの上に降り積もりますように。
同室の奴らを起こさないように、そっとドアの外へ滑り出した。
術の発動は今夜二時。それまでに、ピープスやフィルチをかわして、魔法陣を描けるような場所へ辿り着かなくては。
前方にばかり、気配を配っていた僕は、だから気づかなかった。ドアを閉めた後、僕の隣のベッドに寝ていたはずのクラップとゴイルが起きあがり、こっそりと白いフクロウを飛ばしたことに。
ホグワーツの周囲を取り巻く、不吉な森。いつもは迷うのが不安で足を踏み入れるのも嫌だが、今夜は別だ。何と言っても、最早戻ってくるつもりがないんだから。躊躇うことなくざくざくと奥へ分け入り、手頃な場所を探す。
すぐには発見されないような場所がいい。なるべく学校から遠いところが…。
一時間以上歩いただろうか。木立の間の僅かな平地を見つけた僕は、此処を己の死に場所と決めた。絡み合う木が障壁になって、多少のことが起こったくらいでは学校からも、森番…ハグリッドの小屋からも何も分からないだろう。ポケットから取り出した蝋石で、呪文を唱えながら複雑な魔法陣を描き始める。
手順を少しでも間違えたら、死ぬより酷い目に遭う。全ての仕掛けがおじゃんだ。慎重の上にも慎重を重ね、僕は時間をかけて一つの幾何学図形を描き上げた。蝋石をそのあたりの草むらに放り投げ、続けてポケットから呪詛のかかった札を取り出し、中央に置く。これを描き上げるのに、どれだけ苦労したことか…
「アグロン・テタグラム・ヴァイケオン…」
厳かに、呪文の詠唱を始める。同時に、微かに大気が振動を始めた。術が効き始めている証拠だ。
「レトラグサムマトン・クリオラン・…エリオラ・オネラ…」
呪文を唱え終わると、僕は魔法陣の中央を見据えた。
「さぁ、闇よ!現れよ!代価は僕の魂だ、全て喰らって、僕の意志と考えを受け継ぐといい…」
一息つく。
「…ヴォルデモードと。闇の申し子と、共食いしてしまえ。」
自分と引き替えに、強大な闇の獣を自由に使役する。僕が見つけた中でも、最高の自己犠牲呪文が、これだった。目を閉じると、ハリーの顔が浮かぶ。最後に、もう一度…君に名前を呼ばれたかった。
「ドラコ!!!!」
「…!!」
幻聴か、と思った。
二度目に名前を呼ばれて、ようやく振り向いた。
夢かと、思った。
何もなかったはずの漆黒の闇の中、キラキラと銀色に光る布の中から、ハリー・ロン・グレンジャーの三人組が姿を現す。
「ドラコ、闇の獣を召還しようなんて、どうしてそんな馬鹿なこと思いついたのさ!」
ハリーが叫びながらこちらへ駆け寄ろうとする。
「な…ぜ…、ここが…」
「お前が落としていった本だよ。」
面白くもなさそうにロンが言う。
ああ、そうだ、こいつならあの本にも手を触れられただろうが…ロンにまさかアレが読めるはずが。
そこまで思って、僕ははっとしてグレンジャーを見た。あれほど酷く傷つけたのだ、彼女が僕を助けようとするはずがない。
そう、彼女なら、僕の意図を見抜く恐れがある。現に、原因を父上との確執であると見抜いていた。その聡明さが空恐ろしくて、わざわざ念入りに酷い言葉を選んで傷つけたのだから。
しかし、彼女は…微かに、微笑んだ。『分かっているわ』と言わんばかりに。
「私じゃないわ、スネイプよ。内容を見て、びっくりして…貴方の同室の子達に頼んで、貴方がこっそり部屋を抜け出したら、教えてくれる手はずにしてもらったの。」
クラップのベッドに、鳥籠が増えていたのまでは気づかなかったみたいね?くすりと微笑む彼女の表情…どうやらホグワーツ一の才媛の頭脳は、僕程度の想像の範疇を超えていたようだ。
「それで、ヘドウィックが君の後をつけて…居場所を僕達に知らせてくれたんだ。ピープス達に見つからないように走ってくるの、大変だったんだからな!」
おまけにこんな夜中に森の中を障害物三人四脚させられてさぁ、とロンが文句たらたらの口調で告げる。
「ご苦労だったね、ヘドウィック。」
ハリーの肩に、ヘドウィックが舞い降りる。真っ白なフクロウは、夜の闇の中でまるで天の御使いのようだ。
―――――ならば、ハリーは、『救い』か。
思わずそちらへ向かいそうになって…背後からの、激しい気圧の変化に慌てて振り返った。
時計の針が二時を指す。
魔法陣の中央で。静かに、闇の種が、萌芽した。
術が、発動してしまった。
『ハリー、君は…遅かったみたいだ…』
それを見た瞬間…僕の中をまた、絶望が満たしていく。
「ドラコ、さぁ、こっちへおいでよ、逃げよう?」
ハリーが手を差し出す。僕は、首を振ってそれを拒絶した。
「駄目だ。もう、戻れない。」
戻っても…仕方がないんだ。結局、僕は君を選べはしないんだから。
「何を馬鹿な…さ、早く!!」
何があっても、僕は君の味方だよ!そのハリーの言い種に、僕の中で何かがキレた。
こいつ、一体誰の所為で人がこんな悲壮な決意をしたと思っているんだ!!何もかも無駄にしやがって!
「やかましい!ハリー・ポッター!!誰が味方かは僕が自分で決める!」
「おい、ドラコ!少なくともその魔法陣の中の奴は味方じゃないだろ!!」
ロンが横合いから口を出す。僕はそちらにも蔑むような視線を送った。
「君は阿呆か、ウィーズリー。僕がお前達を仲間だと思っていたと、本当に信じていたのか?」
引きつるような、高笑い。空しい響きだと感じたのが、伝わらなければいいが。
君たちだけは。
「友情ごっこはなかなか面白かったぞ!」
傷つけさせない。
誰にも。
「だが、もうおしまいだ!僕は闇と一体化して、永遠の力を手に入れるんだ!!」
元々僕の身に流れる血は、闇の魔法を好む。ならば、『あの方』とは違う闇に溶け込んで、君たちの無事を祈ろう。
君たちを、助けよう。
「さようならだ、ハリー!!」
どこでもない、ところで。
瞬間の、本音。最期の最期に、君の名前が口を衝いて出た。
「ドラコ!帰ってきてよ!!僕の所へ、帰ってきて!!」
ハリーが怒鳴りながらこちらへ近づく。僕はまた一歩、後じさった。足が殆ど魔法陣のヘリに触れる。今一歩でも中に入ったら、術が暴走してずたずたにされてしまう。仕方なくそこで踏みとどまった。
闇が、また少し広がって、僕のそばに近づく。ヒヤリとした感触に、僕は「死」を感じた。
結局何もかも、僕の思い通りになる物など、一つもなかった。
もう、生きていたくない。
ならばせめて、己の死に場所くらいは。思った瞬間、全ての絶望を込めて叫んでいた。
「僕の側に寄るな、誰も、だ!」
→TO NEXT STAGE
ドラコパパの声は青野武さんでお願いします(笑)
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