+++「Sabbath Night」+++ |
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「ええと、ハーマイオニー…これ。」 当日、ロンから大きな箱を渡されたハーマイオニーは、満面の笑顔で微笑んだ。 あの悪夢のダンスパーティ(既に悪夢と化している)から苦節…年、 ハロウィンの仮装のパートナーという名目を付け、ハリーを別寮の少年の元に押しつけ、 やっとのことで彼はハーマイオニーを誘うことに成功したのだ。 彼女のために、ロンは苦心をして華奢な王女様のような衣装を選んだ…筈であった。 喜んでくれるかな、と内心ドキドキもののロンの前で箱を開けたハーマイオニーが首を傾げる。 その後で、おずおずと口を開いて彼に問いかけた。 「確かに…可愛いけど…ロンの趣味とはちょっと違わない?」 苦笑気味にハーマイオニーが箱から取り出したのはパンダの着ぐるみ。 ロンが大きく目を見開いた。 「え、あれ〜?!ぼ、僕、お姫様みたいな衣装だって頼んだんだけど…。僕が騎士の格好で…。」 明らかに度肝を抜かれているらしいロンの態度が作為ではないことを見て取ったハーマイオニーが、僅かに安堵しながら尋ねる。 「誰に?」 「ハリーに、あいつもパートナーに着せる衣装を用意するって言うから、一緒に頼んでくれるって言うから、それで…。」 そこまで言ってから、ハッとしたように顔を上げる。 「ハリーだ…あいつが取り替えたんだ!!」 いくら自分が優勝したいからってそこまでするか?!と青ざめるロンに、 やっぱりね、とハーマイオニーがため息を付く。 「ハリーね…。自分の所の姫君によっぽどドレス着せたかったんじゃないかしら?」 その言葉に、ロンが些かウンザリしたような表情を浮かべた。 「ったく、僕らなんてライバルにならないだろうに?」 ため息を付くロンに、ハーマイオニーはそうね、と一応相づちを打ってみせたが、 自分はともかく長身で痩躯のロンがナイトの衣装を付けたりしたら、 それはそれでかなり目立つだろうと、親友の策略に敵ながらあっぱれと内心拍手を送る。 それとは別に、私がお姫様の格好じゃなくてもいいから、 ロンのナイト姿は見たかったのになぁ、とちょっぴり恨めしく思ったが。 ロンがくしゃくしゃと赤毛の頭をかき混ぜた。 「うわ、ごめんよハーマイオニー…ハリーを今からとっちめてくるけど、衣装間に合うかなぁ…。」 間に合わないだろうなぁ、当日だし… とかなり真剣に落ち込んだ様子のロンの言葉に我に返ったハーマイオニーは、構わない、と首を振った。 「別に綺麗な衣装を着たかった訳じゃないもの。パンダはパンダでなかなか愛嬌があって可愛いかもしれないわ?」 「だからって君にそんなもの着せられるか!」 慰めるつもりで言ったのだが、しかしロンにも男の意地という奴が存在するようで、 絶対駄目だ!と首を振る。その真剣な様子に、ハーマイオニーが微笑んだ。 笑い出しそうな彼女に、ロンが不機嫌な表情になる。 「何がおかしいんだよ。」 「ううん、別に。でも…。」 「ん?」 首を傾げたロンに、ハーマイオニーがにこにこと笑いながら告げる。 「ね、私にお姫様が似合うって思ってくれたんだ?」 途端に、ロンの顔がさっと赤くなった。 「い、いや、それはあの…馬子にも衣装っていうか。」 へどもどと急に取り繕い始めたロンに、ハーマイオニーが嬉しそうに微笑む。 「エスコートしてくれるつもりだったの?騎士様。」 「…うるさいよ!」 言いながら、ロンは彼女に向かって手を差し出した。 「あーもう、いいや。どうせコンテストの優勝争いしたかった訳じゃないしさ、 このままパーティフケようぜ?どうせハリーは遅くまで帰ってこないだろうから、 僕の部屋でも来たら?新しい漫画とお菓子増えてるし。」 「校則違反よ?」 「だって、着ぐるみで行く方がマナー違反だろ。」 「それもそうね。」 言いながら人気の無くなった談話室を更に逆行する二人を止めるものは、もうその夜は誰もいなかった。 END
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