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「なんだ一体?こんな人気のないところに呼び出して?」
明らかにその気のなさそうで迷惑げな第一声に、ジニーの勇気は少しだけ挫けた。
「あの…。」
「早く言えよ、僕だって暇じゃないんだ。」
意地の悪い口調、傷つける言葉。
本当になんだって自分はこんな奴が気になって仕方がないんだろう、と思う。
…本当は気づきかけているが。
それでもここに呼び出されて来てくれる底意に。
優しいのね、などとは死んでも言う気にならないが。
腹を立てたら、少し勇気が出た。
顔を上げて、グレーがかったガラスのような蒼い瞳を見上げる。
「あのね、…バレンタインデーのカードをあなたに渡そうと思って…。」
「君は馬鹿か?男から女に送る物だろう、それは。」
片眉を上げての皮肉か?嫌味か?と聞いてくる棘のある言葉になんて、今更めげはしない。
「だってあなたがくれないんですもの、私があげるしかないじゃない?」
微笑むと、ひとしきり白痴かお前は、だのこれだからウィーズリーの家の奴は、だの毒づいた後で、
「…まぁ、受け取ってやらないでもない。」
とぶつくさ言いながら手を出した。
「ありがとう。」
言いながら、用意してきた白い封筒を手渡す。
彼は即時に開封して、子供っぽいだの文句がありきたりだのけちを付けた後、にっと笑った。
「…じゃあまぁ、これをくれたって事はこっちは用なしって事だ。」
「…こっち?」
首を傾げる彼女の前に、手品師のようにぽんと彼の手の平から飛び出す小箱。
「え、え、ええっ?!」
「またうるさく付きまとわれては敵わないからな…用意してあったんだが、無駄だったな?」
意地悪そうにくっくっく、と笑うとジニーが手を伸ばすより先にその箱を隠してしまう。
「ず、ずるい!」
「どっちが?」
今や哄笑に変わりそうな楽しげな口調でドラコ・マルフォイは彼女の勢力圏内から逃走する。
「待って、私に用意してくれてたんじゃないの?!」
「別に君にやらなくてもいい。…スリザリンにだって女は沢山いるからな。」
「ミリセントになんてあげたら吼えメール送るわよ?!」
「勘弁してくれ。全く、子供ってのはやかましいな。」
途端、ぽんと投げ渡されるプレゼント。
「開けて見ろ。」
「子供じゃないわ、一つしか変わらないのよ?」
文句を零しながらも、期待に溢れて小箱を開けると……
「…なんで?なんでバレンタインデーの贈り物がオモチャの兵隊かなぁ?」
がっくりと肩を落とすジニーを余所に、ドラコはお腹を抱えて笑っている。
「お前にそっくりじゃないか。ブリキで機械仕掛けでちょこちょこ歩くところなんてそっくりだ。」
「…女の子につける形容詞じゃないわよ?!」
「おやおや、それは失礼、レディ・ウィーズリー。」
反省の色さえ見えない。
ジニーは盛大な溜息を吐くと、手の平の中の小さな玩具を見つめた。
分かってる、興味を持ってくれているのね?
…まだまだオモチャ扱いだけど。
彼女の好きな彼の子供っぽさと大人びたところのアンバランスさと来たら、
兄のロンでさえ顔色を無くすほどの落差が存在する。
興味があることを興味があると知っているのか、認めたくないのか。
でも、構ってくれるうちはきっとまだ脈があるのに違いない。
だったらもうしばらく。
私はあなたのおもちゃでいいわ。
少女はほんの少し大人びた表情で呟くと、傍らを歩く白金の頭髪に微笑みかけた。
「…いいわ、ありがとう。嬉しい。大事にするわね。」
少年は、盛大に嫌な顔をした。
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end.
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