『ふたり』

-最終学年-



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 さわさわと葉擦れの音のような、下級生のざわめき。

「ほら、見た?あれがハリー・ポッターよ。」
「彼が一緒の学校にいるなんて、最高よね!」
「クィディッチのチームが星の数ほど引き抜きに来ているらしいわ。」
「現役学生で唯一のプロでしょ?…憧れる。」
 黒髪で緑の瞳の青年は、長い足をせわしなく動かすと、目的の人物の元へと急ぐ。

 名前を呼ばれて振り返った人間を見て、下級生達はまた溜息をついた。

「ハーマイオニー・グレンジャーだわ!」
「学年主席なんでしょ?学校始まって以来の才媛らしいわよね?」
「官庁入り、確定なんですって?バリバリのエリート候補生よねぇ。」
「…というか。羨ましいわ、お似合いで。」
 この溜息混じりの羨望の声に、何人もが唱和した。

「入学してからずっと一緒で、親友でもあって恋人なんて、素敵よね?」
「ハリーは彼女しか見えていないって評判だもの、割り込む隙もないんじゃない?」
 ハリーがそこで栗色の髪の毛の少女に追いつき、何事か囁いた。
 少女は微かに眉を上げて一言、二言返す。

「…私だったら、あんな風にハリーに話しかけられたら、溶けて死んじゃうわ、きっと。」
「そうよね、あんな風に喋るなんて無理よねぇ?」
 ハーマイオニーはつん、と顔を上げて歩いていこうとする。
 ハリーが後を追い、彼女の腕から書籍の山を取り上げた。
「優しいのね…?」

 ウットリした声が流れる前で、黒髪の青年はさり気なく恋人の顔に自分の顔を寄せる。
 ハーマイオニーが照れたように彼の鼻先を軽く弾いた。
 じゃれるような抗議の態度の彼を置いて、ハーマイオニーはまた歩き出す。

 後輩の夢見る乙女達は、ウットリと溜息をついた。
「素敵…!!」
「大人のカップルよね。」
「理想の恋人達よ!羨ましいわ。最終学年までには、私もあんな恋人見つけたい…!」
「あら、ハリー・ポッターを超えるのは無理よ。」
「ええ、羨ましいわよね、本当に……。」

 囁きの波の中。
 後輩達の憧れと羨望の的である校内一の鴛鴦カップルは、悠々と歩き去ってゆく。
 仲睦まじげな会話を交わしながら……

*****


「ハリー、何の用事ですって?」
「ハーマイオニー、お願い、お願いだから、教えてくれないか、変身術の試験範囲。」
 しかし、ハーマイオニーは冷たく言い放つ。
「ロンに聞きなさいよ。」
「アテにならないから聞いてるんだろ?…なに怒ってるんだよ?」
 目を合わせようともしない恋人に、ハリーが不審の声をかけた。
 ハーマイオニーの返答は素っ気ない。

「別に。」
「最近、怒られる事なんて何も…、あ、荷物持とうか?」
 下手に出るように、慌てて彼女の腕から本を受け取る。
 ハーマイオニーはつんとした表情のまま言う。
「怒ってません。」
「怒ってるよ!!」
「怒ってないわよ!…全く、ロンから聞いてるんだから!」
「……何を?」
「ハニーデュークスの新作のチョコレートの試供品、貰ったんですって?」
「…あ、うん。」
「二人で食べたでしょ。」
「な…!アレは元々二個しか…!」
「そういう貴重なものこそ半分にわけて食べようと言う思いやりと博愛精神は無いわけ?」

 このハーマイオニーの台詞に、ハリーが流石に呆れた表情になる。

「…あのね、たかがチョコレートでそんなに怒るなよ!
 大体、文句があるならロンに言えよ!
 二人で先に食べようっていったのあいつだよ?」
「でも!ハリー、可愛い恋人にわけてくれるのはあなたの役目でしょ?」
「そんなに食べたかった?…じゃ、まだこの辺に…。」
 残ってるかも、とちゃっかり顔を近づけてくる黒髪の少年の鼻先を指で弾く。

「痛い!」
「図々しい。」
 呆れたように呟いた彼女が少し微笑んだので、ハリーはホッとしてその側に寄りそう。
 ハーマイオニーが彼を見上げて、にっこりと笑った。

「で。美味しかった?」
 笑顔に見とれたハリーが、うっかり正直に応える。

「え?あ、うん。」

 途端、ハーマイオニーがまたしても断罪後の検事の表情に戻った。
「…やっぱり試験範囲なんて絶対教えない。」
「そんな、ハーマイオニー!!」
「食い物の恨みは深いんだから。」
「あーのーねぇっ!!」
「文句があるならハニーデュークスのミルクチョコレート一ヶ月分で手を打つけど?」
「暴利だよ!」
「どこが?心の痛みを考えると当然の損害賠償よ。
 あ、普通のはダメだからね、ちゃんとクマのマークが付いているのね?」
「それ、一番高いやつじゃないか!!!」
「男に二言はなしよ、魔法界の英雄さん?」
「まだ、何にも言ってないってば!!!!!」


 下級生は、彼女たちの敬愛する『こじゃれたアダルティーなベストカップル』とやらが、
 このように犬も喰わない低俗な会話を日々繰り返して居ることを。
 幸せなことに知らないのであった。





**********

END.

 

 

みどりんのお誘いにのって早速。
piroさんのすごく素敵な雰囲気の二人のイラストに寄せて。
素敵な雰囲気の二人だったのに…!!
お笑いにしちゃってすいませ…(逃亡)

あ、この作品にもの申したい人は
ハリハーフェス内専用掲示板
拙サイト裏・青砥屋茶寮内の掲示板をお使い下さい。
(ただし、ロンハーサイトです…ご注意下さい)

 

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