君が好き胸が痛い

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 待ち合わせはこの辺りだと思いながら、相変わらず魔法使いや魔女で賑わうダイアゴン横町を歩いた。
 新学期の学用品リストを手に、ショウウィンドウを冷やかしながら、人混みのハイペースよりゆっくり歩く。

 そろそろ目的地、と思い始めた頃に、ぴょこんと一つ飛び出る赤毛の頭を見つけた。
 雑踏の中でも誰より目立つのだけれど、僕は手元のリストから顔を上げない。
 そのまま、もう少し、もう少しとワザと彼の方を見ないで歩く。

 彼の方が、先に僕を見つけるように。

 案の定、辺りを見回していた君が僕を発見して、ぱあっとその顔に満面の笑みが広がる。
 ホラね、これが見たかったんだ。
 先に僕を見つけて嬉しそうな君。

「ハリー!」
 雑踏の騒がしさに負けないように声を上げて僕を呼ぶ。
 もう二、三回呼んで欲しくて気付かないようにしようかと思ったけれど、もう限界だった。
 顔を上げて初めて君に気付いた振りをして。
 大きく手を振り返して側に駆け寄る。

 息を弾ませて、顔を上げる。

「「久しぶり!!」」

 挨拶がハモって、声を立てて笑う。
 逢いたくて、逢いたくて。君にあったら何をしようと、待ち合わせのこのダイアゴン横町の、それこそ片隅の店まで全部チェックして。

 いざ今日君にあったら、それだけでもう、後は静かなトコで二人で積もる話でもできればそれでイイや、と思っている自分が居る。
 だけど、ロンは違ったみたいで、嬉しそうに歩き出す。

「な、どこから行きたい?忙しいぜ、今日は!」

 うん、そうだね。
 僕だってとても忙しい、君に会えて。
 会えなかった時間の話を聞きたい、聞いて欲しい。
 だけど、何から手をつけて良いかもう分からないくらい君としたいことが多すぎて。
 君と行きたいところが多すぎて。
 黙ってにこにこ笑っていたら、じゃあまずは教科書だ!と腕を引っ張られた。

 並んで歩き出す。行き先なんてどこだって構わない。

「でも、久しぶりだね、ロン。また、背伸びた?」
「ん、ああ、夜になると体痛くてさぁ。…君も伸びたか?」
「…あはは、嫌味?それ。」
 差が開いて行くばっかりですよ、どうせ!と言いながら。
 ふざけてその腕に自分の腕を絡める。
「おいおい。」
「”ロン、エスコートして頂戴?”」
 女の子風の声音で見上げて囁くと、君は青い目を大きく見開く。
「…馬鹿か?」
「そうかも。」
 一つ肩をすくめ、呆れたように、でも振り解くなんて絶対しない。
 君からの拒絶が僕は一番恐い。

 二人で歩き出す。
 いつものように。
 もう少ししたら、きっと先に来て本の海の中で埋もれている三人目の親友をサルベージしに行かなくちゃいけないと思うけれど。

 今は、二人だけ。
 ハーマイオニーには悪いけれど、もうしばらく恋人の書籍と戯れていて貰うことにして。


 ロンはいつだって、僕の「特別」なんだから。


 あの日、あの時、ホグワーツ行きの列車の中で、君は少しだけ勇気を出して僕の座るコンパートメントへ来てくれた。
 一緒に座って、話をした。お菓子を分けて食べた、傷を見せた。

 それが、どんなに嬉しかったことか君に分かるかい?

 あの時触れた暖かさ、熱さは、今でも僕の心の一番奥深いところに火傷みたいに残っている。
 どんなに心が凍えても、寒くても辛くても。
 君のことを想うと、その傷が熱を持って、暖かくなれる。

 ロン、君はやっと、僕が出会えた奇跡なんだ。
 誰にも渡さないよ、誰にも。

 英雄だと人は僕のことを呼ぶ。生き残った男の子だと。
 この世界で僕は本当に多くの物を手に入れた。
 両親の遺産でお金は心配しなくて良いし、恩師もできた、理解者もいる。
 家だってあるし、家族代わりに可愛がってくれる人も沢山できた。
 好きな子だって居るし、女の子から定期的に手紙も貰う。
 魔法の力だって今のところなんの心配もない。学校の成績くらいだ、気になるのは。


 欲しい物はある程度持っている。
 あとは君だけでいい。


 本当は。
 君だけ、僕一人の物になってくれれば、それだけでいい。
 なんだったら、今まで手に入れた物全部と引き替えたって構わない。

 何年経っても君は僕の親友で、それは変わらない。君は僕の側を離れない。
 それは知っている。
 普通はそこまで望めば十分なことも。
 ああ、だけど。
 君は僕のこの気持ちを知らない。
 焼け付くような熱さも知らない。

 世界中が君と僕のふたりだけだったらなぁ、と思う。
 君ともっと話ができたらなぁ、と毎日話していても考える。
 夏休みは長かった。
 君と来たら筆無精で…なんで僕はハーマイオニーから君のことを聞かなくちゃいけないんだ、
 と、白い便せんを眺めながら何度もぼやき続けた。

 今日、会えたから。
 本当は世界中の色が、音まで変わっている。


 これから先、僕はきっと逃げられない運命と対決することになるけど、それでも最後まで君と居たいと思っているのは我が儘だろうか?
 危険な事なんて無いように、何と引き替えでも君を守るから。
 だから、最後の最後まで君は一緒にいて欲しい。
…土壇場になるまでそんな危険なことできるかどうか、分からないけど。

 君を失ったら、僕は全てを止めてしまいかねないし。
 まぁ、でも今はそんな土壇場の選択の話は止めて。
 答えなんて、もっとずっと切羽詰まってからでいい筈だから。

 とにかく、今は。
 本音が口を衝いて出る。

「もっと、君と一緒にいられたらいいのになぁ。」

 呟くと、ロンが惚けた顔で何を言うんだ、今日からはずっと一緒だぜ?と返事をする。

 僕はただ、微笑んだ。
 君が微笑みを返してくれる。

 眩しくて、疚しくて。
 凄く幸せで、気持ちが伝わらなくてとんでもなく孤独で。

 いつもの表情の下の、本当の僕を。


 君はまだ、知らない。





**********

...end.

 

 

テーマ曲、昔なつかしKANです。覚えていますでしょうか(笑)
今まで本腰で書いたことがあんまりなかったのですが、もしかして…私のハリロンて、メタクソ甘いですか?(汗)
ハリーさんよろめき編、みたいな感じで。(笑)
課題曲がものっそ好きな曲なので、(古いんですが)ちょっぴり「ハピネス」とか入ってるかも(笑)
まぁ、なにをどうしてもハリーさんはロンに首っ丈、と言うことです。
しかし↓これがハリロンに聞こえる私って末期ですか〜。普通はロンハーくらいですか〜(笑)
ロンハーはここまでメロリンラブな二人でもないのよね、何となく。

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人ごみに君を見つけても まだ気づかぬふりして
君の笑顔を先に見たい 別に意味なんかない

話したいことは多すぎる 何から話せばいい
とにかくすごく忙しい 君に会えたからいい

ああ 君が好き 胸が痛い
もっと君の近くにいたい
ふざけきってた僕のくじけそうな孤独を
ああ 君は知らない

夕暮れに君と歩いても何かがぎこちなくて
ほしいものはある程度持ってる あとは君だけでいい

ああ君が好き胸が痛い
もっと君を近くで見たい
平気な顔の僕の泣きそうな孤独を
ああ 君は知らない

街は確実に時が過ぎ
まわりはそろって年をとり
かわらず僕は まだ君が好きで
ずっと同じ場所で足踏みだけで

ああ君が好き胸が痛い
きっと最後は君といたい
平気な顔の僕の泣きそうな孤独を

ああ 君はまだ僕を
ああ 君は知らない

―――"Kimigasuki Munegaitai" By KAN

 

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