「ハリポタ年末特別警戒スペシャル本人確認お願いします」


「本人確認?」
「そう。」
 ハリーが微笑んで頷く。
「このごろはホグワーツも物騒だからね。」
 にっこり笑う少年に、っていうかこの学校が物騒じゃなかったことなんてあったっけか、と首を傾げる赤毛の少年。
「で、何をすればいいの?」
 尋ねる少女の髪の毛は栗毛。微笑んで答える黒髪。
「マグルのね、極東のテレビ番組を見てて知ったんだ。じゃ、説明するよ。」
 またかい、という単語はおくびにも出さず大人しく拝聴する親友二人。
 かくして、獅子寮は自治政府により年末特別警戒に入ったのだった。


□其の一:ロナルド・ウィーズリー確認編。

 翌日。
「ああ、疲れた…。」
 伸びをしながら帰ってくる赤毛の少年、珍しくソロで。
「太った婦人、中に入れてよ。合い言葉は…」
「ちょっと待った!」
 途端、誰何の声が挙がる。むっとして振り返るロン。
「…なんだよ。」
「君は確かにロン・ウィーズリー君かな?」
「な、何を言うんだよハリー!!」
「悪いけど、本人確認するって言ったろ?質問に答えて貰うよ。君がロンなら簡単に答えられる問題ばかりさ。」
「…なんだよ。」
 ぴん、とたつ指。英雄の微笑みは今日も真っ黒い。
「質問。飼っているフクロウの名前は?」
「…ピッグヴィジョン。」
「正解!じゃ、嫌いな食べ物は?」
「…コンビーフ。」
「ピンポーーン!じゃ、ラストの問題!!」
「やっとか、何だよ。」
「好きな女の子は?」
「そりゃ勿論ハー…って何を言わせるんだーーーーーっっ!!」
「…ちっ、引っかからなかったか…。」
「当たり前だ!」
「で、『ハー』って誰のこと?」
「…っ!!」
 転んでもただでは起きない地獄耳にロンはたじたじ。しばし思い悩んだ後、苦し紛れの言い訳。
「ハー、ハー…ハークション大魔王…」
「つまんない、却下!」
「ハー…はーるよ来い、はーやく…。」
「あー、惜しいなぁ、一発目で欲しかったなぁ…。」
「ハ、ハ…ハーレイ・ジョエル・オスメント…。」
「あー、ずれてきたなぁ……でも演技派子役だよね〜。」
「ハー…ンガリー舞曲…。」
「もう人間でもないじゃん!!…何処まで行けるか行ってみる?」
―――――‐‐‐‐‐‐

 ボケツッコミは何処までも終わりなく続き。
 その後、ロンが無事本物として認められたかどうかは謎のままである。


□其の二:ハーマイオニー・グレンジャー確認編。

「ただいま!…さて、さっさと帰って今日の復習しなきゃ。」
 重い本を腕に抱えて獅子寮の扉の前に立つ少女が一人。
「ちょっと待った!!」
 またもや上がる誰何の声。今度は複数。
「…何よ。」
「君は本当にハーマイオニー・グレンジャー嬢かな?」
「気になるわよね。」
 忘れてた、そういやコノヒト達そんなことで盛り上がってたわ〜、とがっくりと項垂れる栗毛の少女。
「…手早くお願い。」
 さっさと開き直る辺りロンよりずっと裁けきっているというか往生際が非常によろしい優等生の少女は溜息混じりに返事をする。
「では、質問!飼っている猫の名前は?」
「クルックシャンクス。」
「正解!じゃ、第二問!!初恋の人の名前は?」
「…っっなっ、関係ないでしょ?!」
「いや、こちらの手元にある内部資料(獅子寮自治政府が極秘に製作)では確認済みです。」
「か、か、確認済みって!誰なのよ!言ってみなさいよ!!」
「…えーと、ロンじゃないのは確かよね。」
 横合いからのアドバイスに愕然とした表情になる少女。
「ラベンダー!あんたこないだの夜中の暴露話大会の内容、喋ったわね!!」
「ううん。ここで真偽の判定をするだけ。」
「同じ事よっっ!!!」
 女の友情とはかくも儚い裏切りによって安直に崩壊するものか、と世の中の真理を悟りつつハーマイオニーは深い溜息をついた。
「……ギルデロイ・ロックハート先生?」
「正解〜。良かったわよね、ハーマイオニー、初恋は叶わないって言うし!これで次のロンはばっちりよ!」
 友人のからかいの声に憤然と反論するハーマイオニー。
「誰がロンなんか!!」
「…呼んだ?」
 瞬間、背後からの声に思わず愕然と振り返る。
「…ロン!!」
「僕が何?ハーマイオニー。」
「え、あ、いや、…えーと。」
 珍しく狼狽えまくる頭脳明晰沈着冷静な少女の唯一無二の弱点の登場にニヤリというかむしろ最上級ニヤレストくらいの黒々とした微笑みを浮かべる獅子寮自治政府審議員達。
「あーのねー、ロン。ハーマイオニーがさっき…。」
「きゃああ!言わないで言わないでハリー!!」
「あなたにも聞かせてあげたかったわ、初恋の人の名前…。」
「ラーベーンーダーーーー!!」
 もういいから早く中に入れてよお願い!と慌てふためいて懇願する少女に、じゃあラストの問題ね、とハリーが手元の羊皮紙を読み上げる。
「質問。『デモクリトスの原子説の影響を受けたプラトンが挙げた『プリマ・マテリア』と、その説をアリストテレスがどのように進化させたかを述べよ。』」
「ええ?決まってるじゃない、火・水・地・風の四大元素の事だわ。アリストテレスはそれでは満足せずに他の実体を求め、それが第五の物質、俗に天界の物質と呼ばれるもので、エーテルと名付けられたんじゃない。」
「…だって。正解?」
「分かり切ってるでしょ、昨日スネイプの宿題に出たじゃない…の……。」
 そこで質問者の意図に気付く動揺したとは言え腐っても学年首席。
「ハリー、あなた達、最初からそれが目的で…!!」
 キッと背後を振り向き、条件反射で非難の眼差しに謝罪する少年一名。
「ゴメンよ、ハーマイオニー。」
「ロン!あなたも共犯?!」
「いや、僕はなにか分かんないけど急にハリーに呼び出されてここに来たら宿題が分かるって言うから。」
「ハリー!!!!!」
 少女の抗議の声も既に正解を羊皮紙に書き付けて脱兎の如く逃げ去った黒髪の獅子寮自治大臣の耳には馬耳東風だった。


□其の三:ドラコ・マルフォイ確認編。

「ああ、今日も疲れた…。」
 気怠げに呟きながら蛇寮の入り口へさしかかる少年。そこに上がる誰何の声。

「ちょっと待った!」
「…なんでお前がここに居るんだ、ポッター。」
 一日の終わりに真っ黒煤渡り大黒天な顔を見て些かげんなりするドラコに頓着せず、ハリーが続ける。
「君は本当にドラコ・マルフォイ君かな?」
「…失礼な奴だな!僕が他の誰かと間違えようがあるっていうのか?!」
「いや本人確認。最近物騒だし。」
「心配するな!僕の名前は引導代わりだ、迷わず地獄に堕ちるがいい、ポッター。」
「…長七郎江戸日記?意外と渋い趣味だねマルフォイ。親父さんの影響?」
「やかましい!貴様が僕の何を確認したいんだ、言ってみろ!!」
「じゃ、まず。」
 おもむろに取り出される革張りの手帳。後ろに金文字できっかり書き込まれている名前は『トム・リドル』。ドラコの表情が僅かに引きつった。

「お、おい、ポッター、なんか僕その手帳…にしてはやけに大きいそれ、父上の書斎で見たことがあるような気が…。」
「ああ、気のせい。ほら、映画で盛り上がってるしタイムリーでしょ?」
「気のせいって…!!」

 問答無用でハリーは質問を読み上げる。
「第一問!!ドラコ・マルフォイ君が五歳の誕生日に貰ってからずっと寝るときは肌身離さず抱いて寝ていて、未だにそれがないと眠れないテディ・ベアの名前は?」

 白皙の顔が朱に染まる。
「な、な、な、な、…ポポ、ポッター、きさ、貴様…、どど、どこで…。」
 動揺のあまりどもりまくるドラコを後目に、ハリーは微笑んで質問を続けた。

「第二問!ドラコ・マルフォイ君が七歳の時に両親に捧げた詩のタイトルは『ファンキー・流れ星ブギウギ』ですが、それを暗唱してください!」
「〜〜〜〜〜〜っっっっ!!!!!」

「第三…」
「ポッターーーーーーーーーッッッッッ!!!きき、貴様、一体何処でそんな話を聞きつけてきたんだ〜〜〜〜〜っっっっ!!!」

 ぱたむ、とおもむろに革表紙の手帳を閉じ、微笑むハリー。
「あ、ホントだったんだー。意外と可愛いところあるねマルフォイ。」
 クマ抱いてないと寝られないなんて、とニタニタ笑われ、ドラコ・マルフォイ、憤死寸前。

「いいいい、いったい、その、手帳は…。」
「ああ、これ?」

 書き込むと返事が返ってくる魔法の日記帳〜、とにっこり笑う魔法界の英雄。

「君のお父さん、なんか色々この日記に書き込んでたみたいだよー、育児記録。」
「…っっあのっっ!!!!!」

 ふるふるとこめかみをひくつかせ、ドラコ・マルフォイは一散にスリザリン寮に駆け込んでいった。

 その晩、ルシウス・マルフォイ氏が夕食の席で愛息からの吼えメールを受け取ったらしいと言うニュース速報が、某屋敷しもべ妖精より獅子寮の英雄閣下にこっそりと伝えられたそうである。


□最終回:ハリー・ポッター確認編、または復讐編。

 クィディッチの練習着を着用してファイアボルトを抱え、練習から帰ってきたばかりのハリーがグリフィンドールの入り口にさしかかる。
「ただいま、『太った婦人』。えーと、…」

「ちょっと待った!」

 待ちかまえていたように上がる誰何の声。
「おや、ロン、ハーマイオニー、ついでにマルフォイまで。何の用?」

「「「本人確認に決まってる!(だろうが!)(でしょう?!)」」」

 異口同音に発せられる声。ハリーが肩をすくめた。
「随分警戒厳重だね?」
「年末だからな。」
「物騒だし。」
「そろそろ事件が起こりだす時期よね、毎年?」

 うんうん、と頷く三人の顔にはきっちり『復讐』と書かれている。ハリーが苦笑した。

「じゃ、いいよ、聞いたら?」

 がさごそとドラコがローブの下から大判の封筒を取り出す。

「ちゃんと情報も用意したんだぞ、マグルの私立探偵を雇ってだな、ポッターの叔父叔母と従兄弟から…」

 ロンが鼻白んだ表情になる。
「あいつらの情報が当てになるもんか、ハリーを閉じこめてる奴らだぞ?」

「やかましいウィーズリー。…僕からだ。第一問。ハリー・ポッターはホグワーツに入学するまでマグルの学校に通っていたが、その時に頭をくりくり坊主に剃られたときの渾名…。」
「ユル・ブリンナー?あ、『十戒』の時ので、是非。」
 呆れたように眉を吊り上げるドラコ。
「…おい、何を図々しいことを抜かすんだポッター。」
「だって、それしか覚えてないし!『王様と私』名作だよね中身はともかく!あれ、そういえばリメイク版に出てた家庭教師の息子って…。」
「……………。」
「たしかトム・フェルトンとかいう俳優だったよね〜、可愛かったよね〜、今どうしてるんだろうね〜、スレてなきゃいいけどね、手癖悪くなったりとかね〜?登場するなり本の中身を破……。」
「………もういい。」

 頭を抱えるドラコを、代わって!と栗色の髪の毛の少女が押しのける。

「じゃあ、私ね。第二問。ホグワーツに来るまでに、ハリーが無自覚に使った魔法の回数は?」
 その丸坊主にされた髪の毛が伸びたりね、ばれると結構由々しき問題よね、うん、と頷いてみせる真面目な少女に、ハリーは小さな溜息をついた。

「ハーマイオニー、残念ながらあれ、魔法じゃないんだ。」
「…はぁ?魔法じゃないなら何だっていうのよ。」

 言ってみなさいよ?と促すハーマイオニーに、ハリーは微笑んで続けた。

「あのね、あれはイリュージョンだったの。」
「…はぁ〜〜〜???」
「人呼んでデビッド・カッパーフィールドの少年時代とは僕のことさ。」
「そんなネタ、ダニエル・ラドクリフ好きじゃないと分かんないわよ!!!」
 言いながら、彼女も気勢をそがれたように溜息をつく。
「…なりふり構わないわね…。」
「尻尾捕まれて困るような隠し事はしてないからね。」

 にこにこ顔を崩さないハリーと、悔しそうなハーマイオニー。その肩を溜息混じりに赤毛の少年が叩いた。

「どけよ、二人とも、だらしないなぁ…ラストは僕だぜ。…第三問。」
「なんだよ、ロン。」

 にやりと笑うロンに、ハリーが眉を顰める。

「この間から机の上に飾ってある、レイブンクローの紋章入りのいつまでも返しに行かない落とし物は、誰の?」

 ぴし。

 ハリーの表情が凍り付く。

 どうやら金的に命中したらしい、とロンがほくそ笑む間もなく、ふうわり微笑んで振り返るハリー。
「…聞いていい?」
「あ、うん。」
「それ、誰の本人確認?」
「決まってるだろ、ハリー・ポッターだよ。」

 当然だろ、とあきれ顔の赤毛の少年に向かって、背中から生えた悪魔の羽根と尻尾を隠そうともしていない黒々とした表情で、ハリーは続けた。

「ごめん、間違ってた。僕、ハリー・ポッターじゃないんだよ。」
「…はぁ?」
 ハリーじゃないって、君はどう見ても…と続けようとするロンに向かって、ハリーは首を振る。

「僕は「ハリー・ポッター」じゃなくて「ロン・ウィーズリー」なんだよ。実は。今から本人であることの証明をするから!」

 いうなりくるりと向き直った先には栗色の髪の少女。

「えーと、僕がロン・ウィーズリーであることの証拠だけど、まず、枕の下にハーマイオニー・グレンジャー嬢の隠し撮り写真を秘匿してます。」
「…!!」

 がぼーん、とロンの口が衝撃で開いた。

「で、周りに聞こえないように毎朝毎晩その写真にキスをしながら「おはよう」と「おやすみ」を…」
「〜〜〜っっ、はは、ハリー、ストーーーーッップ!!!」
「ついでに一週間に一回くらいは「おはよう、ハニー」とかに変更になったり…」
「わーーーーっっ!!!わーーーーーっっっっ!!!!」

 慌てて手を振り回すロンに頓着せず、すらすら続ける黒髪の少年。

「いや、僕ハリーって人は知らないけど小さい頃から隠したいものは枕のカバーの中に押し込む癖があるからそこを探せば今でも確かに写真はあると思う僕が、ロン・ウィーズリーでーす。」
「ななな、なんでそ、…!!」
「ついで言うと、ベッドの下にはハ……」

 ざぁっ、とロンの顔から音を立てて血の気が引く。

「ああもう!分かったよ!君がロンでいいよ!通れよ!!!」
「え、あの、ちょっと、ハリー、私もう少しその話聞きたい…。」
 思わず引き止めるハーマイオニーの目の前から力尽くでハリーの腕を掴んで引きずり込む、自らの髪の毛より赤く染まった少年。

「聞かなくていい!!さっさと通れったら!!!」
「そう?まだまだ本人の証拠挙げられるけど?」
「挙げるな〜〜〜〜っっっっ!!!!」
「ええ、ちょっと、ハリー、ロン、待ってったら!!」

 わいわい言う声と共に、ばたん、と扉が閉じられた。
 にこやかな微笑みと共に獅子寮談話室に無事進入を果たした黒髪の英雄。

 途中から事態を遠巻きに見つめていた蛇寮の少年は、やはりハリーを敵に回すのは止めよう、と心の奥底から誓いながら。
 あいつが蛇寮でなくてホントに良かったー、組分け帽ナイス!と考えながら自らの巣へ帰っていったのだった。


完!!



―――安易に英雄を敵に回すのは危険です。よく考えた上で行動してください。




....End.




日記でちょっと書いていた馬鹿話を完結させました(笑)
お笑い以外なにものでもないです…。ちなみに元ネタはスマスマ。妹に聞きました(笑)
ラストの復讐編はゴロちゃんとキムタクのネタです。ハリーは吾郎、ロンがキムタク…。
実際は飼っている猫の名前とキムタクの暴露話だったかな…??
お粗末様でした〜〜〜。



+++back+++