世界でたった一つの花



**********






(SIDE-RH)

 ヒーローになりたいただ一人君にとっての


 ロンは彼女が好きだった。
 何故過去形かと言われると、それは過去の時点の話だからだ。

…説明をしよう。
 「彼女」とは一般的にロンが恋心を抱いていると噂されている
 グリフィンドール寮のハーマイオニー・グレンジャー嬢ではなく。

 まぁごく淡い、少年の初恋、といったところの話だ。
 金色に揺れる細い絹糸のような髪の毛が好きだった。
 繊細な手、磁器で作ったような華奢な肌の壊れそうな具合が堪らなく守りたいと思わせた。
 最も、そう思う男は彼だけでは当然なく、
 只の子供だったロンなどは当然差し置かれてどこかの男が早々に攫っていってしまったが。

 あのころの想いはどこへ行ったのか、と時々思うことがある。
 世界中にあんなに輝いて見える人は居ないと思っていたのに。
…ロンにとって、今やオンリーワンは栗色の髪の毛の少女のことのみを指す。

 面食いだと思ってたんだけどなぁ、僕、と軽い溜息が漏れる。
 ハーマイオニー・グレンジャーは「美人」とはちょっと言えない。
 すごく「可愛い」部類には入るが、今までのロンの好みとは到底言えない。
 彼はもっとこう、儚げで壊れそうな感じの線の細い、
 守ってあげたい女の子が好きだと思っていた。

 ハーマイオニーは別に線なんか細くない。
 むしろその鳶色の瞳は生気と知性に光り輝いているし、
 肌の色は血色が良く、真っ白だが流石に「透き通る様な」とは言い辛い。
 髪の毛も眉毛も、意志の強さを現すようにきりっとしている。
 「守ってあげたい」どころかこっちが守られそうなくらい、ちっこいのにパワフルだ。

 それでも。
 ロンにとって、世界でたった一輪、手に入れたい大事な花は彼女以外にはない。
 いい格好をして見せたいのも、やせ我慢も今や全て彼女の為だ。

 そして彼は。
 生まれて初めてのバレンタインデーの贈り物を彼女にするべく、
 目下頭を悩ませている最中なのだ。

 一般的に思いつくようなもので、彼女が喜ぶとは到底思えない。
 だからといって、誰でも思いつく書籍など、今更過ぎる。
 心から彼女を喜ばせたい、などという話は。
 本当は。
 ブルー・ローズの様に、夢みたいな話なのかもしれないのだけれど。

 むしろ彼が素直に胸の内を打ち明けるのがきっと一番の贈り物なのかもしれないが。
 手ぶらで彼女に心だけを捧げるなどという選択肢は、生憎ロンの頭にはない。
 彼女に追いつくほどの価値を、自分に認めていないからだ。


 悩んで学んで考えて、手探りで今日も彼は彼の恋を探している。

 世界でたった一輪の彼の花の為。



*****




(SIDE-HD)

 贈り物は花を一輪。

 バレンタインデーに届いたのはそれだけだった。
 ご丁寧に箱に入れて、梱包して。リボンもかかって。

 ドラコは少々呆れ気味に過剰包装な花を見ようと包装を解いた。

 中には、見たことの無いような珍しい色のバラが一輪。

「…へぇ、ブルー・ローズか…!どうやって作ったんだろう、魔法かな?」

 それはこの世に存在しない「青い薔薇」で。
 きっと自然物では無いだろう、と見当を付けながらもドラコはご満悦だった。
 添えられているのはシンプルな純白のカード。

『君の様な花だと思いました。』

 文句はたったこれだけ。

 それでも満足そうに暫く花を撫でていたドラコは、
 花に合う一輪挿しを探しに立ち上がった。

「どれがいいか…ベネチアン・ガラスの器にするか、それとも…。」
 首を捻っている内に、ふと気付くことがあった。

 違和感を解消するために、もう一度箱の中を覗く。
…見間違いなどではない。
 薔薇の棘は全て抜いてあった。

…これは。

『君のような花』

 それは、すなわち。

 棘を抜かれた、人工物の薔薇の花。

「どんな皮肉だ、ポッターーーーー!!!」

 激怒した少年が黒髪の英雄を許したのは、
 ジャパニーズマグル風に言うとホワイトデーにかかろうとするころの話であった。





**********

...end.

 

 

だからどの辺がバレンタインデー向け創作だって?(笑)
一応メインはハリドラです。ハリドラですってば。
ロンハーはお陰様で微糖気味です…。

 

+++ back +++