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ハリーと彼女の逢う日は必ず、太陽の差さない曇り空の日が多い。
偶然なのか、そうじゃないのかは分からないけれど。
空は本日も、薄暗い綿で覆われている。
彼女に声をかけたのは、彼の方からだった。
「ハーマイオニー、お待たせ!…遅くなってごめんね。」
「ううん、そんなに待っていないわ?」
言いながら、彼女は手にしていた文庫本に几帳面に栞を挟み込んでからおもむろにハリーの腕を取る。
「さて、今日はどこに連れて行ってくれるのかしら?」
図書館?それとも郊外の大型書店?博物館も好きよ?と言われ、ハリーが頭を掻いた。
「ハーマイオニー、許してよ…やっぱり怒ってない?」
「あら、怒っていないわ?だって、夕べロンと飲んでいて寝過ごしたんでしょ?」
にっこりと微笑みながらやっぱり「怒っています」オーラを出す彼女に、ハリーが愕然とする。
「な、なんで君、そのこと…。」
「私にはなんでも打ち明けてくれる親友が居ますから。」
そう告げるハーマイオニーの後ろで見覚えのある小さなフクロウが得意げに小さく鳴いた。
「ピッグ…!ロンのやつ、密告したな…!!」
「密告だなんて、言いがかりよ?」
次回のスネイプのレポートの要点を教えてあげたけれど、
とハーマイオニーが小さく続けたのを聞くに、彼の赤毛の親友はあっさりと買収されたらしい。
「ダメじゃない、お酒なんて飲んで騒いだら!あなた達未成年なのよ?」
そして、折角の二人きりの楽しい休日だというのにとっぱちから始まる学年主席のお説教に、
ハリーは何とか彼女に会おうと頑張って抑え付けていた二日酔いの頭痛が復活してくるような気がした。
「…聞いてるの、ハリー?」
「えー、あ、うん。」
あまり気のない返事にむっとして彼の顔を覗き込んだハーマイオニーの表情が変わる。
「いやだ…あなた、顔色真っ青じゃない!」
「うー…それは。」
二日酔いです、等と白状すればきっと次は雷が落ちるだろう。
ハリーにとっては「例のあの人」などよりよほど怖い恋人の尋問に、思わず視線を泳がせる。
ハーマイオニーが深い溜息をついた。
「ハリー…本当はね、ロンはあなたを夕べ引き留めすぎたから、怒らないでやってくれって手紙を先に送ってくれてたの。」
だから遅刻の理由を知っていたのよ、と言われ、ハリーが過保護な親友に苦笑する。
「僕が君に捨てられないように?」
「ええ、嘆願書が来たから、今回だけは許してあげる。ザルの御親友にももう飲ませないようにして頂戴。」
「…了解しました、監督生様。」
流石に神妙に頷いてから、ハリーが笑った。
「でも、今日は久しぶりのデートだし、僕なら全然動けるから、どこかに行こうよ、予定通り。」
しかし、このハリーの誘いに彼女は首を振った。
そしてハリーが抗議するより早く代案を挙げる。
「いいわ、今日はお天気も悪いし…私の部屋でゆっくり話でもしましょうか?」
ハーマイオニーの提案にハリーは勿論のこと諸手をあげて賛成したが、ふと思いついて尋ねる。
「そういえば、この前のデートの時もそんなこと言って結局君の部屋で過ごさなかった?」
このハリーの質問にハーマイオニーは急に頬を染め、くるりと振り向いて先に歩き出してしまう。
慌てて後を追いながら、ハリーが続けた。
「ね、…そういえば二人で外にって、ここのところあまり出かけてないよね?
僕のクィディッチの練習とかの都合で天気の悪い日にデートするのが多いしさ、僕達。
もしかして、気に障った?」
今からでもどこでも付き合うよ、と気遣わしげにハリーは尋ねたが、彼女の返事はない。
「ね、ハーマイオニー…。」
「ハリーは屋内のデートは嫌い?」
突然聞かれて、ハリーはやや面食らいながら返事をした。
「いいや?最高だよ。他人に煩わされないし、記者は居ないし、
ハリー・ポッターだってサインねだりにくる奴も居ないし、君は美味し……。」
「一言余計よ!!」
どうやらますます機嫌を損ねてしまったらしい。
ハーマイオニーがぴしゃんと言い捨てて、大股で歩き出す。
諦めてそのまま一緒に後ろを歩いていると、二、三歩前を歩いていたハーマイオニーが
ぴたりと立ち止まり、赤い顔のまま戻ってきて、そっと背伸びしてハリーに耳打ちした。
「曇りの日のデートは好きなの。…天気が悪いのを口実に、ずっとあなたの側に居られるから。」
ハリーは彼女が返事は?と聞くより早く、抱き寄せて同意のキスを贈った。
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END.
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