HAPPY MERRY CHRISTMAS

 クリスマス?しばらく忘れてたわ、そんなイベント。

 なんだそれ。旨いか。

 ああ、知ってるけど何するんだ、そんな日に。

 なに?やりたいの?

 サァ、やったことハ。

 ……くだらん。

 あまりに気の乗らない仲間達の反応に、マールが不満の声を漏らした。

「え〜〜〜?やろうよやろうよクリスマスパーティ!!プレゼント交換したりー、御馳走食べたりー!!」

『別に。』

 異口同音でそう返され、マールが「がーん!」という擬音と共にへこむ。

「大体お前、花見の時にもそんなこと言ってろくなことにならなかったじゃねーかよ…」

 ぼやくのは、酔い潰された経験を持つカエルで。「だってだってぇ〜」と指をつつくマールに、にっこり笑いながらクロノまでが

「普通でいいじゃないか。ね?」

 と宣言してしまった。

「ルッカ〜〜〜このデリカシー無し男二人に何か言ってやってよ〜。クリスマスなのよ〜?」

 とルッカに救いを求めるも、「自力で何とかしなさい!」とか言われちゃったりして。

「むー。」

「大体、なんでそんなクリスマスやりたいわけなの?マール。」

「御馳走食べられるから?」

「クロノ、お前なぁ、エイラじゃないんだから…」

「何か言ったか、カエル!」

「や、別に。」

「……馬鹿馬鹿しい…」

 口々に責められ、マールが逆ギレした。

「うるさーーーいっっっ!!いいのやりたいのっ!!私今まで友達とかとクリスマス会なんかしたことがなかったからやりたいのっ!!せっかくクロノとかルッカとかカエルとかロボとかエイラとか(一拍置いて)魔王とかに出会えたんだし?このメンバーで、クリスマスにパーティしたいのっ!!」

 半泣きで言われ、クロノとカエルが折れた。

「そこまで言うなら…なぁ?」

「ああ、俺は別に、構わないぜ。」

「二人とも、全くマールに甘いわねぇ…」

 苦笑しながら、こちらも人のことは言えた義理じゃなくマールに甘いルッカも頷く。ルッカが承知したことをロボが否定する筈もない。

「エイラ、なんか面白そうなことなら大歓迎!!」

 しかし、後の一人は……

「フン、くだらん。私は…」

「魔王、プレゼントは一人一つだからね、用意しておいてね?」

 と機先を制してにっこり笑われ、思わず首を縦に振っていたり。

「いや、待て小娘!今のは…」

「さーてそうと決まれば計画立てようっと!!」

 勿論幹事は聞いちゃ居ない。「ひゅうるり〜」と北風の音を響かせる魔王に、ぽつりとカエルが呟いた。

「敵ながら、哀れを感じるぜ……」

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「マール、すごく張り切ってるね。」

 ツリーに使う樅の木を切り出しに駆り出されたクロノが、めぼしい木を物色しながら前をゆくマールに語りかける。

「うん、だって今年のクリスマスだけは、絶対やりたかったんだもん!!みんなで。」

「そうだね。マールに言われてみれば、その通りかなぁ。」

 何となく納得したような様子のクロノに、マールが軽い笑い声を立てた。

「何だよ。」

「ううん。何でもない。」

------本当は。

「変なやつ。あ、あれなんかどうかな。」

------本当はね、クロノ。

「良いんじゃない?じゃ、お願いね、クロノ!!」

------来年からはね、貴方と、二人で…過ごしたいんだけどな。

「へーい…おーい、カエル!決まったからこっち来て手伝ってくれよ!!」

 森の別方向から返事が返ってくる。

「おお、いい枝振りの木じゃねぇか。勿体ネェなぁ。」

「…じゃ、『ラヴォスの日』の直前まで行ってから切る?」

「…名案だとは思うが鬼だな、お前…」

------ねぇ、クロノ。

「マール!何笑ってるんだよ!ルッカにシルバード取ってきて貰って!!」

「はーい!」

 マールのくすくす笑いは止まらない。カエルとクロノが顔を見合わせて『変なやつ。』と呟いても。用事を言いつかって走り出したマールが、急に振り返る。ぶんぶんと、クロノたちに向けて手を振った。

「ねぇ!!」

「はい?」

「何だぁ?」

 彼女の声に、なにやら相談をしていたクロノたちが振り返る。満面の笑みで、マールは叫んだ。

「今年のクリスマスは、絶対!盛り上がろうねー!!」

「おーっす!」

 カエルが軽く片手をあげる。

「分かったよ!!」

 クロノもにっこり微笑み返す。

 返事を確認して、マールはまた走り出した。心も体も、うきうきと弾んでいる。

「私、世界中で一番、幸せだわ。」

 世界の危機だと言われても。このくらいの心の余裕が無くてどうするのか。

「ルッカー!!あのねー!!」

 ポニーテールを揺らし、少女は仲間の元へ真っ直ぐ駆けていった。

 

>>END

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おまけ:

「ぷぷぷ、プレゼント、だと…この私が…」

 男の手が屈辱で震えている。

「この魔王に、よくも…」

 魔王のクリスマスは、それほど楽しいものではなさそうである。

 それでも当日、律儀な魔王はプライドにかけて約束を守り、交換会で当たったロボの手編みマフラーによって更に憤死寸前の精神状況に追い込まれるのであった。

 魔王の用意した所である明らかに呪いのかかっていそうな豪華な宝石入り指輪の方はというと貰ったルッカが顔を引きつらせながらこっそりカエルの指にはめてみたりしたもんだからまたひと騒動起きるのだが。

 それは、また別の話。

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