―――To Your Good Assists.



○ディランディツインズ編

 振り返ったグラハムの前に立っていたのは、美貌の戦術予報士だった。……ソレスタルビーイングの。
 確かカタギリの思い人だった女性、と思い出したグラハムは、足を止めて女性に向き直る。

「こんにちは、ミス・クジョウ。私に何か……」
「ええ、お願いがあってやって参りました。勝手ながら、先にロックオン・ストラトス、兄の方ですけれど、彼にも迎えを寄越してあります。一緒においで下さいませんか?」

 微笑みながらもきっぱりと言われて、グラハムはただ頷くしかなかった。

 その頃、トレミーの中では、双子の弟に引っ張ってこられた兄の方が、弟に食ってかかっていた。

「グラハム貸せって、なんだよそれ!」
「いや、だから説明しただろ? 今度のミッションに、天然の金髪碧眼の美女が必要なんだって」
「金髪碧眼の美女ぉ!?」
「ターゲットが目がないらしいんだよ」

 あのな、とニールはため息を吐いた。

「……ていうか、アレは男だぞ?」
「なんかさ、毛髪検査されて、天然の金髪じゃねえと潜り込めないパーティなんだってよ」
「なんだそれ、そもそも劣性遺伝だろ、金髪自体」
「エーカー少佐はどこをどう見ても地毛だろ、あれ。性格的に絶対染めてねえと思う」

 というか、先に性別の検査をしたらどうだとニールは言いたかったが、とりあえず口を噤んだ。
 最近は遺伝子の検査だけではよく分からないグレーゾーンが多いらしいと聞くし。
 そこに、ドアが開くエアの音がして、美貌の戦術予報士が姿を現した。

「あら、もう来てたのね、ロックオン」
「お久しぶりです。……てゆーか、いきなりなんなんです、俺だけならともかく、グラハムとか」
「リンダさんは人妻だしねえ……危険な目に遭わせるわけにいかないじゃない?」

 じゃあうちのグラハムならいいんですか、という喉元まででかかった際どい台詞をニールはなんとか呑み込んだ。

「今、ティエリアが傷を隠す特殊メイクをしてるとこだから」
「なあ、ティエリアが潜入のとき着てたみてえなドレス着せんの?」
「どうかしら、ブルーのドレスがいいんじゃないかって選んできたけど」

 適当なことを言ったスメラギの後ろで、ドアが開いて刹那が姿を現した。

「スメラギ・李・ノリエガ」
「あら、どうしたの刹那」
「俺は世界の歪みを見た」
「……歪み?」
「……理不尽だ」

 ぶつぶつ呟く刹那に続いて、ティエリアがやや得意そうに部屋に入ってくる。

「ああ、皆揃って居たのか。丁度いい。今度の任務、できれば僕が行きたかったが、天然の金髪の壁はどうしようもなかった。だが、僕はやるときはやる男だ。しかも徹底的に、完璧に! 見ろ、このティエリア・アーデのマスターピースを!!」

 言いながら指差す後ろから、青いドレスを身に纏った金髪碧眼の美女が入ってくる。
 呆気に取られたニールがグラハム? と小さく呟くと、影を落とす長い睫が微かに伏せられて肯定の意が告げられた。
 ニールが思わず呻き声を上げる。

「おいおいおい、マジかよ……」
「このティエリア・アーデの辞書に妥協という文字はない!」
「お前さんはむしろ躊躇を学べよ……」

 なんだかどっと疲れて肩を落とすニールの隣で暫く沈黙した後、ライルが思い切り腕を高く上げた。

「はいはいはーい、スメラギさん、パーティへの潜入のエスコート役、俺がやる」
「ライル!?」
「大丈夫大丈夫、男だって分かってるから」

 いい女にはいい男がついてないと箔が付かねえだろ? と言うライルに、ニールは食ってかかる。

「いや、そうじゃなくて! グラハムは俺のなんだけど!」
「兄さんはもうマイスター辞めたんだろ? いいから指くわえて見てろって」
「なんだその理屈!!」
「ぼ、僕のマリーの方が美人だよ! 負けないんだからねっ!!」
「「アレルヤは黙ってろ!!」」

 不愉快そうに怒鳴る兄とへらへら笑いながら煽っている弟(と、巻き込み事故の超兵)を交互に見比べつつ、グラハムは内心で、どうやらホワイトデーのお返しを今日中にニールから回収するのは無理のようだな、と平和なことを考えていたのだった。





―――OVER.



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