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「納得がいかない……。」
戦場でカミーユ・ビダンは呟いた。愛機Zガンダムのコックピットの中である。
そこに通信回線から聞き慣れた声が入ってくる。
『何をブツブツ言っているのだね、カミーユ君。往生際が悪いぞ。』
クワトロだった。カミーユがむっとした顔でマイクに向かって怒鳴る。
「ええ、そりゃあなたには負けますけれどね!」
そこに三人目の声も入ってくる。
『カミーユもシャアも喧嘩しないの!行動開始まで後一分切ってるよ?』
アムロ、それはないだろう、先に突っかかってきたのはカミーユだよとクワトロが唸るような声を上げた。カミーユも負けてはいない。
「僕がなんだって言うんですか。十代のいたいけな少年相手に大人げないですよ?大尉!!」
『私がなんだというのだね?大体何処の誰がいたいけな少年なのだ、言ってみたまえ!!』
ブツッと百式とZの回線に最大音量でνガンダムが割って入る。
『ああもう、うるさいから!今度喧嘩したら問答無用でファンネルで撃ち落とすよ?』
威嚇一発。機体性能でもパイロットの技能でも明らかに劣るクワトロとカミーユはぴたっと口を噤んだ。アムロが更に二人にこの先の行動の説明をする。
『いいかい、敵はボス以外は大したこと無いけど雑魚敵の数がとにかく多くて鬱陶しいから、まずは全員で戦力を削っていく。その間ボスに側にいられるとそっち牽制しなきゃいけないから、カミーユはウエイブライダーで戦場をとにかくボス連れて走り回ること。』
「え?でもアムロさん、多分追われるのはアムロさんのνガンダムですよ。最近ずっとそうじゃないですか。」
『大丈夫。一番最初に一発ボスに被弾させてから逃げりゃイヤでも頭に来て追ってくるよ。』
「……………。」
カミーユががくっとコックピットで突っ伏す。それって敵陣ど真ん中のボス敵に近づいて一発かましてから全力疾走ということだろうか。…一機で。
『シャアはねー、とりあえずメガ・バズーカー・ランチャーで周囲から削りにかかってよ。俺が真ん中からファンネルで掃討にかかるからさ。あ、あんまり戦闘の中入ってこないでね、間違えて撃ち落としちゃ悪いから。』
『………承知した。』
心なしかクワトロの声も冴えない。絶対にそれだけでは終わらないという予感は多分ニュータイプの勘だけではないだろう。案の定アムロが更に要求を続ける。
『で、最後に雑魚一掃した辺りでカミーユとシャアがボス誘導して帰ってきて三機で蛸殴りねー。頑張ろうね、っていうかタイミングが命だから。途中でボス近づけてもいけないしカミーユがあんまり遠くに行ってもボス警戒するから、百式もちゃんと後ろでちらちらするんだよ、いいね?』
『…それは、敵機と戦いながらボスの牽制もしてカミーユの軌道修正の補佐にも入れ、ということか?』
ぼそっと呟くクワトロに向かってアムロの御機嫌な通信が入る。
『そうそう、やっぱりシャアは頭の回転早いねー。あ、カミーユ、ボスの体力削っても良いけど倒しちゃ駄目だよ。νガンダムさ、もうちょっと経験値上げたいんだよね。』
カミーユが項垂れたまま声を絞り出す。
「…………ええ、分かってますとも。アムロさんの獲物を横取りなんてしません。」
『そう?悪いね。お礼に今度Zの整備と改造俺がしとくからね。』
その言葉にがばっとカミーユが蒼白になって顔を上げた。
「いや、アムロさん余計なこと…じゃないそのお気持ちだけで十分ですからっ!!」
慌てるカミーユの声を遮り、面白がるようなクワトロの声が入る。
『ああ、良いじゃないかアムロ。カミーユが喜ぶぞ?こないだ君が開発した敵を引き寄せるプログラム『くっつくひっつく素敵索敵くん』とかあの素敵にご機嫌な武器のモーニングスター、『おはようマイマザー☆一番星君グレイト』とかZに装備させてやりたまえ。』
「大尉、余計なこと言わないで下さい!!」
クワトロはどうやらこのあいだ自分の百式に気がついたらアムロと共犯のカミーユによって自動パイロットリジェクション機能、名付けて『レッドコメット専用カタパルト飛びます飛びますクン』が付けられていたのを相当根に持っているらしい。ちなみにスイッチはアムロが握っていて、クワトロが妙なことをしたら問答無用でコックピットから放り出される仕掛けだ。
『何を言う、アムロの愛が受け取れないのかねカミーユ!』
「熨斗もリボンもつけて詰め合わせて大尉に謹呈しますからっ!大尉こそアムロさんの愛情一身に受けて独占してくださって一向に構いませんよ?」
『私は懐の広い男だよカミーユ君。』
「大嘘ぶっこかないで下さい!」
そこまで叫び合って、はっと何かの気配に気付いたカミーユとクワトロはほぼ同時に左右に飛び別れる。
―――キュイイィィィィィィン。
その二機の間をもの凄い勢いで白いファンネルが通り過ぎていった。
『ちっ…外したか。』
『外したか、ではないだろう?!危ないではないか、アムロ!!』
『やっかましい!次喧嘩したら撃ち落とすって言っただろう二人とも!!』
「だってアムロさん、今の本気、本気でしたでしょ?!」
『俺はいつでも本気だっ!!』
多分、クワトロとカミーユでなければ一撃で沈められていただろうファンネルがゆるゆると持ち主の白い機体の元に返ってくる。まったくもう、と怒ったように言うアムロにまったくもうはこっちの台詞だ!…と今の攻撃で寿命の縮んだクワトロとカミーユが心の中だけでツッコミを入れる。何のかんの言いながら結構気の合う二人組である。
『いいかい、じゃあ行動開始するよ?名付けて『ピンポンダッシュ大作戦』!!頑張っていこう、シャア、カミーユ!!』
アムロの檄に、思わずクワトロとカミーユは先程までの争いを忘れてお互いツッコミを入れた。
―――なんだよ『ピンポンダッシュ大作戦』って。
―――アムロ、もう少しましなネーミングはなかったのかね…。
途端、二人の心の声に感応したのか不機嫌な声が降る。
『……なんか言った?』
百式とZのコックピットの中で機体ごとパイロットが首をぶんぶんと思い切り横に振る。
『いいや、今日も敵攻略の最短時間更新を目指そうと言っていたのだよ、なぁカミーユ君。』
「ええ、クワトロ大尉、力を合わせて生きて帰りましょうね!」
―――戦場じゃなくて敵の攻撃からでもなくてアムロの立てる無謀で滅茶苦茶な作戦から。
無言の共感の下、クワトロとカミーユはそれぞれの持ち場に散って行く。アムロに逆らえない分の鬱憤は敵で晴らすとして、とりあえずは与えられたリクエストをこなすのが先決だ。
「ああもう、僕は関係なかった筈なのに!なんであの馬鹿ップル達と一緒に出撃なんてしなきゃいけないんだ?!」
ぼやくカミーユに周囲は同情はしても、世知辛いこのご時世救いの手はどこからも差し伸べられないのだった。
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というか。
間もなくクワトロがサザビーに乗り換えた事により、赤白青の三色のおフランスのエスプリの効いた小粋な配色で揃ったこのパイロット達が戦場で『ロンド・ベルの悪玉トリオ』とか『地獄のダンゴ三兄弟』とか『三色旗の悪夢』とか『恐怖のトリオ漫才』などと呼ばれるようになるのは、そう遠くもない近い将来の出来事である。
本人達は自由と平和の象徴のトリコロールだと力説しているらしいが、敵どころか味方にさえも信じられているかどうか怪しいというのは周知の事実である。人間日々の行動が大事だという良い見本であろう。
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「で、悪玉トリオなら誰がドロンジョ様?」
「………間違いなく君だろう、アムロ…。」
「そうかなぁ?」
「………ドクロベェ様だなどと恐ろしくて言えたものではないだろう…?」
「え?なんて?」
「いや、私はタイムボカンには詳しくない、と言ったのだよ。」
「おしおき、するよ?」
「やめてくれ、私は畳の上で孫と曾孫に囲まれてくたばるのが夢でね。」
「嘘ばっかり……。」
「ちなみに君が看取って末期の水を取ってくれるのが第一希望なのだが。」
「第二希望以下もちゃんと用意しといて。」
「つれないな。」
「第一希望専願なら考えてもいいけど?」
「…実を言うとアムロ。」
「なに?」
「第一希望は一緒の墓に入ることなのだが。」
「……ガンダム連れてっていい?」
「………ハロまでにしてくれ、兵馬俑じゃあるまいし。」
訂正。エースパイロットとそのパートナーだけは常に前向き思考である。
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「ジュドー、せめて君とでも組みたいんだけど。」
「ヤダ。俺まだ死にたくねーもん。」
「カルテットで出撃しようよ!」
「ぜーったいイヤだ!!!」
「頼むよ、クワトロ大尉とアムロさんを止められるのは君しか居ない!」
「そーんーな嘘臭い自衛隊の勧誘みたいなこと言ってもダメダメ駄目!」
「じゃ、ZZの改造頼んじゃうぞ、アムロさんに。」
「やめてくれっ!!カミーユ、なんで俺まで不幸の連鎖反応に巻き込もうとするんだよ!」
「連鎖反応っていうか核融合だよアレは既に。だからさぁ、数少ないニュータイプ同士力を合わせて仲良くしようと思って。」
「お前が言うと胡散臭いんだよ!他を当たれよ!シーブックとかさぁ!!」
「ジュドーが来れば次を当たるよ。よく言うだろう?『一人はみんなのために、みんなは一人のために』って。一緒にロンド・ベルのダルタニャンと三銃士を目指そうぜ!!」
「……もしかして俺がポルトスでアトスがクワトロ大尉でアラミスがお前か?」
「詳しいな、ジュドー。」
「悪いけど俺、『仮面の男』とだけは関わらないようにしてんだゴメン。」
「ジュードーーー!!」
…カミーユはまだ諦めきれないらしい。
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「艦長、あいつらまだ往生際悪くなんかしてますけど…。」
「いい、もういいんだアストナージ。俺はもうあいつらがちょっとでも長くラー・カイラムから離れていてくれればそれでいい。」
艦長と他の乗組員はもう既に進化というか適応というか「我関せず」を貫いているらしい。
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ロンド・ベルのトリコロール。
自由(青)・平等(白)・博愛(赤)をそれぞれ現していると言うが、真実かどうかは誰も知らない。
どっとはらい。
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>>>END
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