また会いましょう
-You're the Only One-

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 ※世界はSRW設定です。


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☆Y☆


 きぃん、と鼓膜を打つアムロの怒鳴り声に、シャアの口元に笑みが浮かぶ。

「心配してくれるのかい?」
『ああ、あなたがそんな無茶をしなければこれからはしてもいいかなと思ったところだよ!!』
 憎まれ口を叩くアムロにくっくっく、と含み笑いをしながら、シャアはサザビーのメインエンジンを全開にした。
「アムロ、悪いな。もう遅い、今着いたところだ。」
 通信機の向こうから盛大な溜息が聞こえてきた。

『…何を言っても無駄だろうとは思ったけど。シャア、無茶はするなよ!』
 アムロが叫ぶのに、ふっと微笑みを洩らす。
「了解、もうしばらく巡回後帰艦する。…ベッドメイクを頼めるか?」
 この言葉には思い切り皮肉を効かせた返事が返ってくる。
『メイキングするほど寝てないだろう?あなたは自分の部屋で。』
「なに、君の部屋でも…。」
『ああもう、無駄口叩くんならもう切るよ!早く帰ってこい、ばかっ!』
 馬鹿とは何だ馬鹿とは、と言い返してやろうとしたが、その前にぶつっと音声が映像ごと切れる。
 その回線を避けてメインの回線を開き、シャアは不審な信号が出ていた宇宙塵の周囲を一周した。
 カメラとセンサーを使って調査し、特に不審なものがないことを確認して、マイクに向かって語りかける。

「こちらサザビー。特に不審なものはないようだ。これから帰投する。」

 通信を入れた後で、シャアはふと不吉な予感に眉を顰めた。

「…誰か、居るのか?」

 切ったはずの通信ボタンに指を伸ばし、電源を入れ、カメラを切り替えながらオンにする。

「ラー・カイラム、聞こえるか。嫌な気配がするので外カメラに切り替える。」
 手短に用件だけを述べ、意識は360度に設定されたスクリーンに集中する。旗艦からは了解、とだけオペレーターの通信が入った。耳に入るのは微かなエンジン音と自らの心音。
 心を落ち着けて、周囲の空気を探る。彼はアムロやカミーユのようなずば抜けたニュータイプではないから、シャアは自らの感覚をクリアにして周囲の状況を自分の中に受け容れた。
 流れる宇宙塵、壊れた機体の破片…ここは元は戦場で、今も残るノイズや塵が存在を分かりにくくしてくれるので、ロンド・ベルが潜るのに丁度良かった。
 拡散する世界にただ一つ残っている、赤い機体。その中に座る、自分。

 ふっと、意識の隅を濁った点が横切ったような気がした。まるで目の前を飛んだ蠅か虻のようだったが、シャアは躊躇い無く再びサザビーのエンジンを点火する。指は迷い無くメイン回線をラー・カイラムに向けて開いた。

「ブライト、聞こえるか。」
『ああ、大尉。まだ帰ってこないのか?』
「…の、予定だったが敵が居る。引き続きサザビーで探るが、ラー・カイラムのセンサーも有効にしてくれ。」
 一息に言うと、色めき立つ回線の向こう側は無視して回線を一方的に切り、メインスクリーンをオンにした。

「…さて、どこから出てくるものやら。」
 サザビーに死角はないのは分かっている。ステルス素材か何かで上手く隠れているのだろう。
 不意打ちで来られても十分対処できる機体パワーはあるが、メインの武器の不在だけが気になった。
 しかし、男は呟く。

「なに、そんなものは腕次第でどうとでもなる。」
 不敵に微笑む。『ジオンの赤い彗星』は、自分が何者であるかを片時も忘れたことはなかった。

 その時、スクリーンの隅にノイズのようなものが走った気がした。亡霊の様な一瞬の影を捉え、サザビーが躊躇うことなく思い切り右腕を裏拳にして叩きつける。

「そこだっ!!」

 ガキィ、と金属質の手応えがあった。ザザァ、とノイズの走る音がして、黒く鈍く光る敵機影が姿を現す。見たことがない機体であるところからして、どうやら新型機のようだ。
「ふん、ステルス防護が剥がれ落ちたようだな。姑息な真似をするからだよ。」
 シャアは本当に愉快そうに、隠れて不意打ちを狙うつもりだった敵を嘲った。敵の機体の瞳に灯りが点き、今やはっきり聞き取ることが出来るほど大きくなったエンジン音に気分が高揚する。普段はどうあれ、モビルスーツに乗っているときのシャアは生粋の軍人だった。

「出会ったのが『赤い彗星』であったことを、後悔するのだな。」
 言い放ち、シャアは唯一の武器であるビームサーベルを手にした。この位のハンデなど、戦いを愉しむ人間にとっては寧ろ愉快なスパイスのようなものだった。

 少なくとも、男にとっては。

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 勝負はシャアが優勢だったが、とはいえとどめの一撃をなかなか打てず、サザビーのコックピットの中で男が軽く苛立った声をあげる。

「ええぃ、サザビーが完調なら手こずる相手ではないのだが…。」
 シャアが舌打ちをする。近場の哨戒だけだから、と一機だけで出たサザビーはメイン火器とファンネルが調整中で、武器といえば接近戦用のビームサーベルを携帯しているくらい。
 ここのところ警戒警報は殆どが小惑星の屑等ばかりだったから、彼を始めとするクルーが油断していたのも真実だった。最終決戦を前に甘い、と自嘲する。そのまま敵間者のユニットに意識を向け。

 シャアは、覚悟を決めた。

 サザビーは、だらりと体の脇にエネルギーを切ったビームサーベルを垂らした。
 エンジンも最小に抑え、シャアは瞳を閉じる。恐ろしいほど意識が澄んでいくのが分かった。
 右、いや、左から来るのか。そんな敵の動きを察知しようとすることすら意識的に止め、ニュートラルな精神の世界に突入する。
 受け身のまま、シャアは周囲と完全に一体化していった。

 じりじりと、敵ユニットがサザビーに近づく。ビームライフルが完全に交わされたのを警戒してか、腕に斧のような武器を持っていた。暗器、と俗に呼ばれる類のものになるだろう。背後から赤いモビルスーツを狙うべく、密やかに接近する。

 シャアは、全く気付いてないようにも見えた。動く気配もないサザビーを見極めたのか、一気に敵ユニットが動き出す。

 ふっと、青い瞳が見開かれた。

「…そこだっ!!」

 飛んでくる斬撃を紙一重で交わし、その勢いを利用して懐に飛び込みざま、居合いの要領で再び熱源を灯されたビームサーベルが敵ユニットのコアを貫く。

 両断され、黒い機体は一瞬にして宇宙の塵へと化した。

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 いつの間にか殆どの乗組員が集まったメインブリッジのモニター前で、勝負を決めたサザビーに向かって歓声が上がる。
 そろそろ遅れてヘルプに出たカミーユのZガンダムが到達する頃だ、という事もあってか、ブリッジの空気には幾分余裕が生まれていた。

「肉を切らせて骨を断つ、流石はシャア大佐、といったところか…。ああいう戦い方はあの人にしか出来まい。」
 アナベル・ガトーが画面を見ながら感じ入ったように呟いた。他のスクリーンを見ていた人間達も呆気にとられている。
 赤いサザビーはシャアが乗り移ったように、アムロが絶好調の時のνガンダムに負けないほど滑らかな動きで肉弾戦を行い、軽々とビームサーベルを扱う。

 最後の一撃が決まった瞬間など、幼いパイロット達はアニメのヒーローを見たときのように興奮したものだ。

「凄い凄い!!クワトロ大尉ってただの赤いオジサンじゃなかったんだね!」
 などとかなり失礼な言動も混じっていたが、とにかくクワトロ大尉は一躍英雄のようになっていた。

 ただ一人、苦い顔をして見守っていたアムロを除いて。





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To be Continued.

 

 

六話目。先が見えてきました〜(笑)
誰だよ三話では終わらないけど五話ならなんとかとか言ったの!(お前だ)
モビルスーツの肉弾戦、ファースト以来大好きです(笑)
飛び道具なんか邪道だ!ガンダムファイト!(違います)
シャアは相当嬉しそうに戦ってますよ、これ。
フラストレーション多いんだろうね、総統職。

 

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