|
**********
※世界はSRW設定です。
*:*:*:*
☆X☆
翌日、久々の非番に積もり積もった寝不足を解消してすっきりした顔でデッキに現れたアムロに、コウが駆け寄ってきた。
「おはようございます、アムロさん。後でちょっと僕のガンダム見て貰えますか?」
「おはよう、コウ。いいよ、久々にゆっくり寝たから調子もいいしね。」
にっこり笑いながらコウと別れてブリッジに入っていくと、ブライトが今朝も苛々とマグカップの縁を叩きながらオペレーターに指令を出していた。
「だから、さっきの警戒信号の哨戒には誰が出て居るんだ?」
「今確認中です、もう少しお待ち下さい。」
声をかけるのを躊躇いつつ、アムロがブライトに向かって挨拶をする。
「おはよう、ブライト。…元気そうだね?」
「これが元気に見えるとは夕べはさぞかし良く眠れたんだろうな、アムロ。」
じろっと黒い瞳に睨み付けられ、アムロが首を竦めた。
「う、いや、その…。」
「構わない、エースパイロットが不調では残りの人間全部の志気に響くからな、お前は取れる内に十分休息を取っておけ。艦長命令だ。」
ふっと厳しい視線を和らげ、ブライトが苦笑する。その時、オペレーターが回線をブライトに繋ぐ。
「哨戒に出た機体、分かりました。モビルスーツです。」
ぎゅっとまたブライトの周辺の空気が固くなる。硬質な声でオペレーターに問い返す。
「分かったか、パイロットは誰だ?」
「クワトロ大尉ですが…。」
「やっぱり…。」
ブライトは呟いてもう二言三言言葉を交わした後、眉間の皺を揉みほぐしながらどかっと椅子に座り込む。
「あれほど若い者か、ここの所出番の無かったロボットに任せろと言ったのに…。」
控えていたオペレーターが艦長を振り仰ぐ。
「機動性ならモビルスーツが上だ、とサザビーで出て行かれたそうですが…。」
分かった、と手で制し、ブライトがアムロを振り返る。
「アムロ、状況は聞いたとおりなのだが、アストナージからの報告によるとサザビーは今メイン火器とファンネルが整備中らしい。」
その言葉に、アムロが愕然と目を見開く。
「…えぇ?!それってビームサーベル一つ?!あのバカ、そんなので出撃したのか?!」
「ちょっと行って見てくるだけだ、と言っていたらしいがな。大尉の飛行能力と機動性からすると哨戒地点からは十五分もかからずに帰投できる筈なのだが、お前デッキに行って誰か見繕って出してくれないか。」
言われて、ブライトらしくない過保護な発言に不平垂らしくアムロが口を尖らせる。
「そりゃいいけど、そのままでも良いよ。あのバカちょっとは良い薬なんじゃない?一人で帰ってくるだろ、子供じゃないんだから。」
途端、ブライトの癇癪玉が盛大に破裂した。
「馬鹿者、クワトロ大尉はもう四日ほど寝ていないはずだぞ?!」
思ってもみなかった言葉に、アムロが文字通り寝耳に水、と飛び上がる。
「え、ええ?!」
はぁ、とブライトが深い溜息をついた。ニュータイプの癖にこいつはなんでこんな嫌になるほど鈍いんだ、とまで言われてその言い草に憮然とする。
「なにも、そこまで言わなくても…。」
しかし、苦労性の艦長の舌鋒には容赦がなかった。
「アムロ、お前は夕べ休みだっただろう?クワトロ大尉は大体はお前に合わせて非番のシフトを入れて居るんだが、昨夜は姿を見かけないと思わなかったか?」
「そういえば…。」
ここのところ余りに不在だったので忘れていたけれど、そういえば昨日の昼くらいに今夜はどうこう言っていた気もする。色々と考えることが多すぎて、夕方には綺麗さっぱり忘れていたが。
最も、シャアはアムロがどんなに厳重にセキュリティロックをかけようとも天才ハッカー並の解析能力を駆使してアルゴリズムを無視した不規則変数によるドアロックを突破してくるので、無理にアムロが覚えている必要はそもそも無きに等しい。
なんであれが日頃発揮されないかねぇ、とアムロはその度にちょっぴり泣きたくなるのだけれど。
色んな意味で硬直するアムロを前に、ブライトはできの悪い生徒に説明するように噛んで含めるよう語りかける。
「お前が自室に引き取った直後だったか、モビルスーツのオペレーションプログラムが問題を起こしてな。泡を食ってお前を起こしに行こうとする連中を、たまたまお前の後まで残った大尉が止めたんだ。エースパイロットは休ませるべきだと主張して。その代わりに自分が付き合って徹夜だ。夕べは非番だからとその前に散々無理を押してシフトを入れたところだったのになぁ。」
ブライトは深々と溜息をつく。ぽんぽん、と肩を叩く姿からして、彼自身も朝まで一緒に付き合ったのかもしれない。
「…だから人手はなんとかするから今朝から休めと言ったのに、早朝シフトが大尉だったから、誰か行かせようと手間取っている内にこの様だ。サザビーだって昨日νガンダムの代わりにプログラムテスト機に使われていなかったら整備も終わっていた筈だし…。」
一気に言い切って、よくよく貧乏籤の好きなお人だとブライトが顔に手を当てる。
アムロが焦ったように手近なデスクに駆け寄り、コンソールからサザビーへの直通回線のボタンを押した。
「シャア、シャア!!聞こえるか?!シャア!!」
ややあって、微かにノイズ混じりの聞き慣れた声が聞こえてくる。
『おや、アムロか。おはよう。昨夜はすっぽかして悪かったな。』
アムロが噛み付くようにマイクに向かって怒鳴りつけた。
「ばか、そんな話をしているんじゃない!哨戒なんていいし不審な信号なんて今からカミーユでもジュドーでもコウでもシローでもヒイロでも誰でも確かめにやるからあなたはとりあえず帰ってこいっ!!」
言うだけ言って苛々と返事を待っていると、愉快そうな声がその依頼を拒否する。
『しかし、もう少しでポイントに着くのだよ。』
今度こそ、立場も外聞も忘れてアムロは回線に向けて喚き立てた。
「知るか、放っとけ!!」
**********
To be Continued.
|