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※世界はSRW設定です。
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☆W☆
「ですから、別に俺が居るからシャア…総帥が地球連邦に拘る訳ではなくて…。」
何度目かの質問の返答に窮し、アムロは言葉を濁していた。シャアの取り巻きは苦手だ、と冷や汗をかく。
今アムロが聞かれているのはネオ・ジオンの急進派の関係者で、普段この手の手合いはシャアが決して彼には近づけないのだが。
一般にネオ・ジオンに関係する事柄は一切ロンド・ベルには持ち込まないようにしているシャアが、ブライトとの対談と言うことで本当に珍しくマスコミを連れてきたのだ。
たまたまというか作為的なのか、廊下を歩いていた女性レポーターに民間の方は軍艦の中を勝手に出歩かないでください、と注意したはずが逆に質問責めにされて、アムロは辟易していた。知らないと言って立ち去れば良かったのだろうが、生憎とアムロはその辺の芸当が下手くそだ。
「その、俺が止めてもシャア…総帥はやろうとしたことは成し遂げる人ですし…。」
「その通りだ、ついでに言わせて貰うと部屋から出るなと言い渡したレポーターに寛容に答えることもしないな。」
背後から厳しい声が響き、レポーターだけでなくアムロも文字通り飛び上がった。
「シャア、…総帥。」
乾いた声で名前を呼ぶと、厳しい声が固い返事を返す。
「アムロ、君が私を総帥と呼ぶ必要はない。」
キッパリと言い切って、シャアは女性レポーターの方を向き直る。
「約束が守れないのなら取材の話は無かったことにする、と言ったはずだな?」
底冷えのするような冷たい視線でレポーターを見据え、シャアは最終通告を突きつける。
「今すぐ機材をまとめて帰りたまえ。私はネオ・ジオンの総帥として連邦との共同戦線の展開についての取材は受けると言ったが、私人としての下賤なゴシップを提供する気はさらさらないのだよ。」
火のように燃えあがる怒気に、アムロは気圧されてしまった。
シャアが怒るところは初めて見た、と場違いな感想を抱く。いつもは静かな大空の色の瞳に、激情の炎がちらちらと翳るのが見えて。
そしてアムロは。
何故だかちょっと、興奮してしまった。
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「バカか、君は。ああいう手合いにはノーコメントを押し通して逃げれば良いのだ。」
腕を掴まれるようにして連れ去られたエレベーターの中で、シャアが我慢しきれなかったように憤然とした口調でアムロに言い放った。アムロは慌てて弁解を試みる。
「そ、そんなこと言ったって、俺マスコミになんて慣れてないし…。」
「だからといって、…!」
まだ何か言い募ろうとして、シャアは首を振って口を噤んだ。
「…まぁ、仕方がないか。君がマスコミずれしていないのは私が一番良く知っている。元凶を突き詰めればラー・カイラムにあの手の輩を乗せてしまった私も悪い。すまなかったな、アムロ。」
この言葉にアムロが慌てる。何でも背負い込む悪い癖が再発したとばかりに金髪の男に言い募った。
「いや、なにもあなたが謝る必要は…。」
言いかけた唇を伸びてきた長い指が塞ぐ。ふわりと花が咲いたように微笑まれ、一段と艶やかさを増す美貌にアムロは息が止まりそうになった。
「いいんだ、アムロ。…面倒をかけてすまないな。君には何物にも束縛されない自由な存在でいて欲しいのに、不自由な私と居させるばかりに不憫をかける。」
心の内側から迫り上がってくる抑えようのない熱を湛えた青い瞳に惹き込まれる。
喉が酷くカラカラで、上手く音さえ出せない。掠れた声で名前を呼んだ。
「…シャア。」
呼ばれた男は、その声に我に返ったように視線を外す。
「それでも手放せないのが私の業だと理解しているのだが、君となら鳥籠も悪くないと思ってしまう辺り末期だな、私も。…大概、我が儘でいけない……。」
切なそうに笑いながら、シャアは指を離そうとした。咄嗟に追いかけてその腕を掴む。シャアが首を傾げた。
「アムロ?」
衝動的に引き留めたものの、アムロの方にも上手い言葉が有ったわけではない。ただ、何か言わなくてはという思いだけで自分の中に言葉を探す。
「…いつまでも、一方通行でも片思いでも……。」
ないんだから気にするな、と言いたかったけれど、それは言葉にはならなかった。自分の方こそがシャアと居ることを選んだ癖にその責任は彼一人に被せて、傲慢なことだとは思う。
耐えきれないように長い腕が伸びて、男性にしては小柄な赤毛の青年は赤い服の男の胸の内に落ちた。きつく抱きしめられて、喘ぐように囁く。
「人が、入ってきたら…。」
「構わんさ。今更、だろう?」
反論はしても抵抗はしないアムロの頬に、華奢な指が触れてゆく。
がくん、とエレベーターが微かな音を立てて止まった。タイムアップだぞ、と図々しい体を押しやる。
「つれないな。」
「公私の区別は付けたいからね、きちんと。」
すげなく言い放たれて、シャアは形のいい顎に手をかけてしばし考え込む仕草を見せる。
「ふむ、では…今夜君は非番だったな?プライベートルームで待っていたまえ。」
「…げ、あなたも非番かよ……。」
「げ、とはなんだげ、とは。」
殆ど上の空でいつもの軽口の応酬を繰り返し、呼吸がいい加減苦しくなっていたアムロはさっさと行け、と無慈悲に金髪の男を押し出す。ではアムロ、また後で、と言われた言葉にも舌を出して返しながら。
「…だからさ、別になんでずっと一緒に居るのかって言われても困るんだよ、俺も。」
エレベーターのドアが開いて、低重力に体を流しながら去ってゆく後ろ姿に向かって、アムロは密やかに呟いた。同時に息苦しさを解消しようと大きく息を吸い込む。
呼吸さえ苦しいほど存在を圧迫されるのに、どうして側にいるのかなんて考えたくもなかった。
その答えは、必然でなくてはならなかったから。
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To be Continued.
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