また会いましょう
-You're the Only One-

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 ※世界はSRW設定です。


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☆V☆


「アムロさん、次のミーティング、11:00時からだそうです。」
「ああ、ありがとうウッソ。」

 にっこり微笑んで年端の行かない少年に答え、アムロは作業工具を握った手を止めた。弄りかけのνガンダムの剥き出しの基盤類にちらりと目をやり、頬に着いた機械油を手の甲で拭う。
「半時間で用意するよ、ちょっと遅れるってブライトに言っておいてくれないか?」
「分かりました、僕先に行きますね。」
「ああ、頼むよ。」
 ひらひらと手を振るアムロに向かって笑いながら踵を返して歩き出したウッソがふと何かを思いついたようにもう一度振り返る。

「あ、そうだアムロさん。」
「ん?」
「クワトロ大尉、今日のミーティングは不参加だそうです。ネオ・ジオンの方でなんか会議があるんですって。」
「…ふぅん。」
 何でそれをわざわざ俺に言うのさ、と相手がカミーユ辺りだったら棘の一つも刺してやるところだが、年端もいかないウッソ宛には多少アムロも手加減を知っているらしい。気乗りのしない返事を一つ返しておいて、引っ張り出したコード類をもう一度収納する作業に没頭しだした。

 クワトロが、シャアが居ない事なんて別に大したことじゃない。いつものことなんだから。
 そう思おうとして、ふとアムロの手が止まった。…いつものこと、という単語に小さな違和感を感じたのだ。
 ここの所、クワトロ大尉としてだけでなく、ネオ・ジオンの総帥としての公務も加味されるようになってきたシャアの日常は多忙を極め、顔を見かけることさえままならなくなってきている。原因は何となく分かっているが。地球連邦との折衝だろう。

 自分をモルモットの如く地上に雁字搦めにした彼等のことをアムロは酷く嫌悪していたが、それでも愛するべき人たちが多数属する地球連邦の呪縛からは逃れられずにいた。
 数奇な運命によって今は同じ陣営にいるシャアもその彼の意志に妥協しているというのではないだろうが、今のところは彼自身が総帥を務めるスペースノイドの国家設立を目指す組織、ネオ・ジオンの政治方針を地球連邦と協調する方向に舵取りしている。基本的には水と油ほど相容れない組織だから苦労は並大抵ではないだろうが。

 それが嬉しいと言ってしまうと、傲慢になるのだろうか。

 シャアが自分の為にネオ・ジオンが地球連邦と共存する方向に進めていってくれると考えることも。だって、シャアが連邦と敵対したら、どうしても自分は再び敵として彼の前に立ちはだからねばならない。昔ならともかく今のアムロには身を切られるより辛い決断だが、でもアムロは他の道を選ばないだろう。それが分かっているから、シャアも。
 誰かが自分の為に何かをしてくれる、という経験自体アムロには数えるほどしかないので、もしかしたらとんでもない思い違いをしているのかもしれないが。それでも、思うくらいは良いだろう。

 唇が微笑みの形にカーブし、アムロは半ば口笛を吹きそうな上機嫌でνガンダムの整備を終了した。

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 ブライトとアムロを中心にした、おそらく最終になるであろう作戦に向けたパイロット会議も終了し、各自が会議の資料をまとめているところにドアが開き、金髪の男が入ってきた。
 全員が久々に見る姿に小さな歓声を上げる。仲間内では寧ろクワトロ大尉として受け容れられている男は笑って手を振った。

「ブライト、遅くなってすまない。終了したらしいとは聞いたのだがね、さっき終わったところだというのでいっそ説明くらいは聞けるかと考えて来させて貰ったよ。」
「クワトロ大尉、お忙しいのに無理はなさらなくても後でアムロなりカミーユなりを説明にやりますものを。」
 同じように多忙を極める苦労性の艦長は苦笑し、傍らに控えていた今では腹心と言っていい赤毛のエースパイロットを振り返る。

「アムロ、大尉に今の会議の要点を説明しておいてくれ。」
「分かったよ、ブライト。」
 アムロは微かに微笑んでシャアに向き直り、手元の資料を振った。

「ホラ、こっち来いよシャア。説明してやるから。」
「…いつも思うが、ブライトと私に対してでは態度が違いすぎないかね、アムロ。」
 一応同じく年長者で上官なのだが、とブツブツ文句を言うシャアの腰を軽く叩きながらアムロが先に進むよう促す。
「あなた相手になんで敬意払わなきゃいけないのさ?」
「…で、ミーティングはどこでやるのかね?君の部屋?私の部屋?」
「ベッドが無くて人目があるトコ。」
 にっこりと絶対零度の微笑みで断言され、シャアは溜息をついた。

「…つれないな、アムロ。おまけに信用もないと来た。」
「あなたが日頃信用できないような事ばっかするからだろ?自業自得だよ。」
 そうキッパリ言い切りながらも久々に顔を合わせる金髪の男に対する視線は甘い。

「そうだな、あなたの部屋にしようか。」
 シャアがふわりと嬉しそうに微笑み、不意打ちに近い幸せオーラの精神攻撃にアムロは柄にもなく赤くなってしまった。

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「夕食の時間までミーティングとは熱心ですね、アムロ大尉。」

 よろよろとすっかり混雑のピークは過ぎた食堂に現れたアムロに向かって、からかうような声がかけられた。
 アムロが何か言い返すより早く、アムロの手にしたトレイにいつも彼が食べるより二割り増し程度の量の食事が放り込まれる。
 愕然としてアムロは犯人に食ってかかった。

「ちょっと、何するのさ!」
「君は小食すぎるといつも言っているだろう?ただでさえ体力を消耗した後だ、しっかり食べたまえ。」
 キッパリ言い渡しながら自分は更にアムロの倍くらいの量をよそい、アムロより後から食堂に入ってきた筈のシャアは悠々と席に着いた。
 その前に腰を下ろしながらアムロが大体なんで体力消耗する羽目になったんだか、と皮肉混じりに問いかける。
「俺さ、確かミーティングって言わなかったか?」
 金髪の男は動じる様子もなく言い放つ。

「おや、久々に会うのにコミュニケーションの他にスキンシップも必要だろう?」
「程度を考えろよ。お互い若くないんだから…。」
 溜息をつきながら、アムロが皿の中の肉をつついた。シャアは黙って自分の皿の中の料理を切り分け、アムロの皿の中に放り込む。アムロが更に抗議の声をあげた。

「ちょ、マジでそんなにいらない…!」
「食べなければ食べさせるぞ。」
 フォークにトマトを刺して口元に持って来かねない勢いのシャアの視線にアムロは溜息をついた。

「分かった、食べるよ…。」
「いい子だ。」
 シャアがにやりと笑う。勿論アムロが面白いわけがない。
 いつか絶対復讐してやる、いや逆襲だ、逆襲のシャアだ…とよく分からない恨み言を呟きながら、アムロは夕食のビーフストロガノフを口一杯に詰め込んだ。途端にシャアに今度は
「行儀が悪い。」
と言われてしまったが。口うるさい小姑のような恋人を上目遣いでじろりと睨み、アムロはせめてもの意趣返し、と口を開く。

「あなたは意地が悪いけどね、シャア。」
「ならば私達は似合いの二人と言うことだな。」
 精一杯の皮肉をあっさりと返され、アムロは最早反論する元気もなくナイフとフォークを手にがっくりと項垂れる。

「勝手にしてくれ…。もう俺の負けでいいよ。」
「何を言う、何時でも君に完敗しているのは私の方だよ。」

 シャアは負けじとにっこり微笑み、アムロはちょっと目の前が真っ暗になるのを感じた。





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To be Continued.

 

 

三話目。おかしい…おかしいよ。何でまだラブラブなんだ?(まだって…)
予定ではそろそろ大喧嘩して別れてるはず…(遠い目)
というわけで予想外にシャアに溺れている(?)自覚のあるアムロさん、一体どうやって逆鱗逆撫でするのか。
疾風怒濤の次回を待て!(胡散臭い)

 

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