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※世界はSRW設定です。
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☆U☆
「あー、今日もよく分かんないけどなんか一杯付け狙われた気がする…。」
がっくりと力無く愚痴を洩らすアムロに向かって、シャアがかたんと櫛を置いて振り向いた。
「それを全て撃墜しておいてよく言う。エースパイロットが狙われるのは宿命だろう。」
「エースの座はそろそろカミーユ辺りに渡して俺後衛に引っ込もうかなぁ。」
その言い草に、呆れたような声が被さる。
「…後衛でじっとしてなど居られない癖に偉そうに言うものではない。」
スポーツドリンクをすすり込みながら片手でがしがしと収まりの悪い赤毛をタオルで拭くアムロの後ろに回り込みながら、先に身なりを整えたシャアが苦笑する。
「髪の毛が痛むぞ、貸したまえ。」
「いいって、女じゃないんだから。」
憎まれ口を叩きながら素直にシャアの手にタオルとついでに背中も預け、アムロは息を吐いた。
「…ちょっとこうしてて。」
「構わんよ。」
「あ、手は止めなくて良いから。」
「……君な。」
二人きりになると我が儘言いたい放題なんだから、とはよくアムロがシャアに対して使う表現だが。それは君だろうが、と言いたいのを押し込め、シャアはゆっくりと癖の強い髪の毛を乾かし始めた。
目を閉じて気持ちよさそうに体を任せているアムロに、頭上から柔らかく優しい声が降る。
「…少しはクールダウンしたのか?」
「ん、もうちょっと。」
ニュータイプとしての神経と感覚を極限まで使用して戦うアムロが、帰還してしばらくは夢と現の境目から戻れないということをとっくに承知している金髪の男は、黙って子供染みた愚痴にも付き合ってくれる。
段々に解れてくる精神と身体に、背中越し触れてくる暖かい波動の色は赤い。とろんと眠くなって閉じた瞼の裏の色のようだ。
日常性が復帰するまで、後少し。
「もうちょっと、こうしてて。」
満足の溜息と共に、アムロは囁くように言葉を落とした。
シャアは黙って頷く。此処は個室ではなく脱衣所で、しかも先程からシャワールームから出たそうにしているもう浴びるのは飽きたであろう何人かの困り果ててちらちらドアの隙間からこちらを覗いてくる気配と刺すような視線をビシバシ感じているのだが、赤い彗星はものの見事にそれを無視して、挙げ句に牽制までかけてみせる。
薄く笑みを浮かべながらむき出しの項に口付けると、アムロが咎めるような瞳で振り返った。強さを増す背後からの凶悪なプレッシャーもものともせずにシャアはにっこりと微笑む。
「どうぞ、君の気が済むまでこうしていると良い。私の胸ならいつでも貸そう。」
「ん、イラナイ。」
「酷いな。」
「今更、このくらいで?」
くすくすと笑い声を立てながら甘えるアムロをまるで猫か何かのようだな、と思いながら、文字通りこの子供っぽいエースパイロットを猫可愛がりしているシャアは生乾きの癖毛に指を絡ませ、落ちてきた滴をぴんと弾いた。
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どうして、あの人の側に居るんですか?
この艦に乗ってから、形は変われど気が遠くなるほど繰り返された質問だった。それは、アムロに対しても、シャアに対しても。
理由なんてないけどね、というのが最近のアムロの模範解答だ。シャアの方がどんな答えを返しているかなんてちょっと想像するだに恐ろしいので知りたくない気もするのだが。最も、マイハニーだのスィートだのモナミだのアムールだの聞いていて鳥肌が立つ単語頻出なのは想像するまでもないが。
なんで側にいるのかって、そんなもの突き詰めれば居心地がいいからだ。アムロが胸の中に消しようのないドロドロした闇のようなものを抱え込んでいるのはアムロ自身しか知らない事だが、ニュータイプとオールドタイプの境界線を突き抜けてあっち側に行っちゃった自分の内面を推し量ってくれるのは皮肉にも一年戦争以来ずっと時には最強のライバルとして、あるいは戦友として、常にアムロを理解しようと彼に拘り続けたシャアだけだった。
ニュータイプとしては不完全と称される彼だが、アムロに対してだけは間に入ったララァとの因縁が余りに強烈だったためか、どんな微かな変化でも敏感に感じ取るし、端から見たら謎なことも多いアムロの言動もどうして欲しいかほぼ完璧に理解することが出来る。
機体だのなんだので「シャア専用」という単語はよく聞くが、シャア自体が「アムロ専用ニュータイプ」なんじゃないのか、といっそ呆れ果てた口振りでブライトに評されたことはあったが(アムロは失礼な!と怒ったがシャアは苦笑するだけだった。)、とにかく。
ニュータイプとしてその精神に感応したり、必要以上に同調したり自分のプレッシャーで引っ張ってしまったりする事が原因で他人が近づく事に神経質なアムロにとって、ただ側にいるだけで心地がいい、というのはそれだけで奇跡に近い存在なのだ。
何故なのかは分からないが、シャアはアムロには引っ張られない。アムロという存在には直向きに拘って執着しているが、むしろアムロの方を自分の思考の海に引っ張り込んで苛々させるなんて芸当が出来るのは宇宙広しといえどシャア・アズナブル一人だけだ。
シャアは、アムロにとって一番近い他人。
陣営が違っても、敵同士で戦っても、何時でもシャアはアムロの最も身近に居る人間でなくてはならなかった。
離れる事なんて、想像も出来なかったし許せることではなかった。
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To be Continued.
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