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この傷は残ります、と言われた貫通創を見て浮かび上がった涙が地球の重力に引かれてシャアの上に落ちた。
ぱたり、ぱたり、と軽い音を立てて落ちる涙に、此処は確かに地球だと思い知る。
音もある、風もある、匂いもあるし引力もある。懐かしい人々も住んでいる。
だけども。アムロが焦がれて已まないのは、なにもない宇宙の方だった。アムロの中も空虚だったから、宇宙にいれば安心した。強烈な孤独も底のない空白も恐れることなどなにもなかった。ぽかんと空いたアムロの中のウツボも宇宙と本質的には同じものだ。
そこは、なにかを育み生み出すためのもの。
アムロが己を使わせたい相手だけは、もう決まっていた。
―――還ってきて、俺の中の空白を埋めて。
囁くと、吐息で長い金の睫がさやさやと揺らめいた。
とくん、と。心臓が跳ねて、誰も見ていないのにそわそわと落ち着かなくなる。
急激に体内の熱が上がる自分に、初めてアムロは生きて居るんだと実感し、同時にあまりの情けなさに赤くなって俯いてしまったのだった。
アムロは慌てた。これでもしぱちりとあの切れ長の瞼が開いて、中からコバルトブルーの見覚えのあるあの瞳が姿を現してアムロをじっと見つめたりしたら、あまつさえそれで嬉しそうに…微笑まれたりしたら。自分はそれだけですごくすごく恥ずかしいことになってしまうんじゃないだろうか。
考えた思考にざぶんと音を立てそうな勢いで沈没する。
―――どうかしてる、俺。
もうとっくの昔に「どうにかなって」はしまっているのだけれど、アムロは自分自身に諦めの悪い抵抗を試みた。空いている場所は分かっている。足りないところも知っている。埋めて欲しいという欲求も、その相手も方法も。どうして欲しいかもどうされたいのかも。
でも。
―――もし本当に現実に「それ」が叶ったら間違いなく俺は死ぬ、即死する。
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...end.
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