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どんなものを食べているか言ってみたまえ。
君がどんな人間であるかを言いあててみせよう。
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「クワトロ大尉、珍しいもの持ってるじゃない。それ、ひとくちちょうだい。」
アムロに言われた台詞がなんのことか、クワトロには一瞬分からなかった。その後で手にしたものに気付き、ああ、と苦笑する。
「これは、さっき持って居てと渡されたのだよ。残念ながら私のものじゃない。」
言う男の両手には、確かにクワトロには似合わなさすぎるソフトクリームが二つ。
「じゃ、誰の?」
アムロが当然ながら尋ねる。ソフトクリームなんて久しぶりに見たから、どうしても一口食べてみたかった。そのアムロの考えを読んだのか、クワトロがやれやれと肩をすくめる。
「ジュドーとウッソのだよ。…食堂でソフトクリーマーを実験的に入れたとかで、試作品のお相伴に預かったらしい。本人達は今、手を洗いにいっている。」
「ふぅん。」
言った後、自分のこれも機械油に汚れた手に視線を落としたアムロはもう一度クワトロを見上げてにっこり笑う。
「で、どっちジュドーの?」
悪戯ぽい瞳の光にアムロの意図を察したシャアが子供っぽいエースパイロットに呆れつつ、咎めるように軽く睨む。
「…君、仮にも上官だろう?」
「上官が部下の持ち物ピンはねするのなんて軍隊じゃ良くある話だよ。通行料通行料。」
ウッソのは可哀想だし、と思いやりがあるのかないのか分からないことを言うアムロに苦笑して、彼に甘いクワトロは分かった降参、と手に持つ片方を差し出した。
「可愛い追い剥ぎだな、全く。…ほら。」
「ん、ありがと。」
言って、アムロは顔をそちらに寄せようとしたときに、運悪く本来の持ち主が帰ってきてしまった。
早速上官の違法行為を発見し、弾劾の声をあげる。
「あー、なにやってるんですか、アムロさん!それ、俺のですよ?!」
「げ、ジュドー。」
やばい、と慌てたアムロはさっさと一口食べてしまおうと、ぱくりとソフトクリームの先端部分を囓り取った。ジュドーが悲鳴を上げる。
「ああー!俺まだ食べてないのにっ!!」
「ごっそーさんー」
もごもごとなんだか不明瞭な発音でそれだけ言うと、アムロはふとクワトロを見上げた。
名前を呼ぼうとして、発音し難いことに気付いて本来の名前を呼ぶ。
「ひゃあ。(シャア)」
「ん?」
一部始終を苦笑しながら見守っていたクワトロが、その呼びかけに反応してアムロの方を向き…絶句して固まる。
「ほれ、ふひて?(これ、拭いて?)」
「あ、ああ、アムロ、きみ…。」
クワトロが珍しく動揺したような言葉を漏らす。
「…?」
アムロは首を傾げ、飲み込み切れなかった分のソフトクリームをごくん、と飲み下した。
「…なに。」
「……いや。」
がっくりと項垂れるクワトロに、アムロは頓着せずに重ねて先程の要求をした。
「な、俺手汚れてるし、なんかハンカチかティッシュか持ってない?口の周りべとべとでさー。」
「…そうだろうとも。」
クワトロが僅かに不機嫌な口調でウッソと、悲しげに一口欠けたソフトクリームを眺めるジュドーに預かっていたそれぞれの分を渡してやりながら答える。
「な、服に着いちゃうって。でなきゃあなたのその服で拭いちゃうぞ。」
「止めたまえっ!!」
言いながら口元を赤い軍服の胸元に擦りつけようとする青年の攻撃を、鹿かなにかかね君は!と言いながらクワトロが三倍速でかわす。
「な、シャアー。」
「全く、来たまえ!そのべとべとの服と顔と手、一気に洗ってやるから!」
言いながら僅かに苛ついた口調で有無を言わさずアムロの腕を掴んで引きずり連れ去ったクワトロが、口の周りにソフトクリームを大量に垂らした青年から何を連想したのかは。
イヤと言うほどその後身体に教え込まされたアムロだけが知っていることだった。
後日。
「俺、もう当分ソフトクリームなんか見たくない…。」
とぼやくアムロに、自業自得です!と憤慨したように言うジュドーはいても、同情する人間はあまり居なかったようである。
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造物主は人間に生きるがために食べることを強いるかわり、
それを勧めるのに食欲、それに報いるのに快楽を与える。
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+++END.
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