乙女のレシピ




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「あ、みつけた、……きゃあ! カミーユ!」

 言いながらファ・ユイリィがどんと背中からぶつかってきたので、アーガマの廊下でクワトロやエマ達と立ち話をしていたカミーユは前につんのめりながら辛うじて踏みとどまった。

「ファ、なにやってんだよ!」
「ごめんなさい、ハロを追い掛けていたら、止まれなくなっちゃって」

 文句を言うカミーユに小さく手を合わせるファの足下で、ハロが脳天気に跳ねている。カミーユは溜息をつきながらファに手を貸して真っ直ぐ立たせ、重いんだから気をつけろ、と呆れた顔で少女に言った。

「なによ、助けてくれてありがとうって言おうとしたのに、重くてごめんなさいね!」
「昔よりずっと体積増えてるんだから気をつけろよ、シンタやクムなら弾き飛ばされてるぞ?」

 鈍くさいんだからなぁと呆れたような声で言うカミーユに、ファがむっとした表情になる。

「失礼ねー! 昔は自分の方がちっちゃかった癖して!」
「あ、でも、胸が背中に当たる感触はなかったから、その辺は成長してないみた……」
「カミーユー!!!」

 馬鹿にしてー!とぽかすか拳で殴りかかる少女と、痛いよ凶暴女!と防戦する少年の様子を苦笑気味に見ていたクワトロが、隣で呆れ顔のレコアの耳元に、若いのだな、と囁く。レコアは肩をすくめ、青臭くって見ていられないわね、と溜息をつき、二人のやりとりを聞いていたエマも少し笑った。

「お前等、いちゃつくのはその辺にしておけ、おじさん達には刺激が強すぎるからな」
「いちゃついてなんかいません!」

 同じく居合わせたヘンケンがからかうようにかけた声に、真っ先にカミーユが反応する。隣で、ファが真っ赤になってカミーユの馬鹿、と睨み付けてくるから余計にだった。

「なんだよ、俺が悪いのか?! ぶつかってきたのはファの方じゃないか!」
「カミーユが変なこと言い出すからじゃない!」

 再び舌戦に突入しかけた二人を、今度はエマがいなす。

「まぁ、いいじゃない。カミーユ、それじゃあもし私がバランスを崩しても、受け止めてくれるかしら?」

 年上の憧れの女性の言葉に、カミーユが喜んで、と背筋を伸ばして勢いよく返事をした。

「エマさんなら大歓迎ですよ!」
「なによ、カミーユのエッチ!」

 ぷっと膨れるファにエマは笑い、まぁ、カミーユに受け止めて貰ったらファに怒られるかしら?などと悪戯っぽい表情で聞いていると、そこにエマ中尉命のヘンケンがカミーユに任せるなどとんでもない!と割り込んできた。

「カミーユじゃまだまだ役不足でしょう!」

 その後どうも、ヘンケンはささやかな体重と続けて言おうとしたらしかったが、頭の中にはまだカミーユの「ファは胸がない」宣言が残っていたらしい。

「もちろん、エマ中尉のささやかな胸は私が誠心誠意受け止めさせて頂きます!」

 と、言い放って、場の空気を凍り付かせる。エマはぴしりと厳しい目つきでヘンケンを睨んだ挙げ句、
「ヘンケン艦長、それは完全なセクハラですわよ? 次回は軍法会議ものですからお気をつけて」
 と言い捨ててぷいとそっぽを向いて立ち去ってしまった。後に残されたヘンケンが呆然とエマの後ろ姿を追っていると、そこに躊躇いがちにクワトロが声をかける。

「ヘンケン艦長、…その、私見だが、私も先程の発言は些か不適切だったように思うのだが」
「クワトロ大尉に言われるまでもない!」

 そんなことは分かっている、戻ってきてくれ、弁解を聞いてくれ、エマー!と悲痛な声をあげるラーディッシュ艦長の純情の行方は、未だ雲の中を迷走中のようである。










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+++END

 

 

劇場版Zな皆様の感じで。カミファとかヘンケンエマとか大好きですよ〜。
そしてクワトロ大尉はかわいいといい(笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

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