瞬間の永遠
-MOMENT-

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―――Happy Birthday!! You-san, "PoP Peach Tea"!!




*:*:*:*
鳥のようにはばたけるなら
君の元へ飛んでいくでしょう
そして傷を負ったその背に
僕の羽を差し出すでしょう
*:*:*:*




 何かから逃げるように、ひたすら走り続けていた。

 暗闇の中、有るはずもない監視の目から逃げるように。…馬鹿だな、今更連邦が俺に何を期待する?

 いっそていのいい厄介払いが出来るとでも思っているかもしれないのに。

 なのに、走っている。足首に絡みつく重力の枷を断ち切るように。

 考えると止まってしまう勢いの元、飛び出してくる車に何度も跳ねられそうになったり通行人を交わしたりしながら俺は走る。

 さっき、気紛れに遊びに来たこんな辺境の辺鄙な都市の雑踏の中で、偶然見かけた後ろ姿は。あの感覚は、あの存在感は。

 見間違いじゃ、ない…!!

ああ、なんで気付かない。何故俺の存在が見えない。

あなただって俺と同じ、宇宙に生きる人間だろうに?


 名前を叫ぶわけにも行かず、俺は遠目にも鮮やかな金彩の後を追って走り続ける。もしかしたら俺に監視は居ないが、あの人には居るかもしれない。

 だったら、迂闊に俺と接触するのは拙いかもしれない。

 だけど、ああ。

 もうそんな気遣いもしなくて良いんじゃないか?
 叫んだら良いんじゃないか、心のままに、あの名前を。


 唇よ、俺をたった一人かき乱す、魂の震える魔法を唱えたまえ。


 でないとまた見失ってしまう。

 金の髪の男は、町外れまで来るとタクシーを止めて乗り込んだ。

―――いけない、追いつけない…っ!!!

 その瞬間、俺は理性も躊躇いも脳裏から吹き飛んで無くしてしまった。


「………――――---ッ、ァ!」


 ただ、叫んだ。あなたの名前を。

 夢、だったんだ。

 誰ともしれない街角で消えてしまったあなたに出会って。

 呼び止めて、俺からでもあなたからでもどちらかの存在に直ぐに気付いて。後を追って。

 振り返って、驚いた顔をして。微笑んで立ち止まって、腕を。…差し出してくれる。

 そんな夢を何度も見た。

 だけれど現実はそんなものじゃなくて、あの人を乗せたタクシーはそのまま何処か闇の中に消えていって仕舞った。

 慌てて周りを見渡したけど他に車はない。

 俺も車を追いかけて暫く走ったけれど、タクシーは後ろから走ってくる男の存在になんか気付かなかった。
 乗っている男の方も。

 追いかけたい。追い続けたい。

 なのにこんなにも俺とあなたの世界は交わらない…!!

 息を弾ませて俺はただ、金彩の男を呑み込んでしまった闇の中に、また独り立ち尽くしていた。

 流れ去ってしまった刻を恨むように遠くを睨みながら。

 何時までも、いつまでも。


+*:*:*+



 広げて全てを包み込もうとして、代わりに己の翼を傷つけるあの人を。

 愛を与えるためだけに生まれた、犠牲の子羊のような純粋なあの人を。

 いつからかこんなにも護りたいと思っているのに。

 もしも偶然とか運命とかいう力があるなら。
 その奇跡が俺を後押ししてくれるのなら。そうしたら俺はきっと、容易くあちら側に行けるのです。

 なのに俺の出会いはいつでもあの人には少し遅れて。

 あの人の手は俺に届くにはいつだって少しだけ短すぎるのです。

 本当にあなたが望んでくれていたのなら、運命だって超えてこられるほど強く。

 そうだったら、どんなに良かったか。

 あなたには、その力があったのに……!!

 俺の背中に、羽根があったら。

 あの人のような大きな自由な風切り羽根が。

 そうしたら俺は、迷わずに一直線に重力の頸木を断ち切っていたことでしょう。

 太陽に焦がれたイカロスのように真っ直ぐにあの人の所へ飛んでいったでしょう。

 それでも、身体も精神も心も魂でさえ、何一つ俺はあの人の所へ届けることは出来ないのです。

 全てを。俺が持っているちっぽけなものなら何もかも。
 差し出したいのに、捧げたいのに…!

 もう、受け取ってはくれないかもしれませんが。


+*:*:*+



 拳を握りしめ、天を仰いで俺は絶叫した。

 この声が、どんどん遠ざかる背中に届くように。あなたが俺に気付いてくれるように。

 全身全霊願いを込めて。腹の底から。


「…ぁ、…シャ……!!!」


 この名前が滅びの呪文で、唱えた瞬間に全てがこの刻のまま凍り付いて俺とあなただけを残して砕け散って仕舞えばいいのに、と何度も想像していたけれど。

 だけれども。

 遠く遙か彼方あの人の瞳の色に違いない天空に向かって叫んだ声は。

 きっと大気のない宇宙空間を越えることは出来ずに。
 音という存在では居られずに。
 あの人の耳には届かずに消えたのだろう。

 こんな永遠の刹那を繰り返して。

 いつしか、俺とあなたの間は抜き差しならないほど遠く離れて仕舞うのだろう。

―――だったら。距離だけでもあなたの近くで。

 鼻の奥をツンとさせる霞んだ視界の中、俺ははっきりとそう決めた。


その翌日。

俺はロンド・ベルへの転属願いを提出した。



+*:*:*+



 せめてその生涯の全てを一番側で見届けようと。

 もしもあなたが戦場で俺に出会って喜んでくれるのなら。

 その瞬間にでも俺はそのまま死んでしまおうかと思っているので。

 右手に死神の鎌と左手に鞘から抜かれた力天使の剣を持ってあなたの夢に対峙しようと思うのです。
 俺はあなたにとって神であり悪魔であり。
 あなたが最も忌み嫌う、正義と権力の使者として。

 もしも。

 あなたがこれ以上、この世の穢れに心を痛めることがなくてすむのなら。
 宇宙と地球の引力と人類への愛情と絶望の狭間で迷い苦しむことがなくなるのなら。



 俺はどんな存在にだってなれることでしょう。





*:*:*:*
花のようにはかないのなら
君の元で咲き誇るでしょう
そして笑顔見届けたあと
そっとひとり散って行くでしょう
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+++END.

 

 

お誕生日おめでとうございます。
なんで突然浜崎あゆみ?と思われそうですが。
これ実はゆうさんのお誕生日のプレゼント用に書きかけたんです。
…なのに舞台装置を逆シャアにしたのが間違いのハジマリでした…。
そしたらどっこい、全然目出度いお話じゃなくなってしまって(号泣)
もうほんまにもうすいませーーーーん、みーたーいーなー…

 

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