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017:とろける海で逢いましょう
夢だ、と思った。
精神の海だ。とろとろにとろけたバターのように甘ったるくて重い。
いやだな、と思った。ここにはいやなものがすんでいる。
帰ろうとしたところで、後ろから呼び止められた。
『大佐』
まるで悪戯小僧が教師に見つかったように首を竦めて振り返る。
「やぁ、ララァじゃないか、奇遇だな」
『奇遇じゃありません、待っていたの』
いいながら、少女はこちらに向けて手を出してくる。
『さ、出して』
「なにを?」
『お分かりになっていらっしゃるくせに』
咎めるように少女が唇を尖らせた。彼女にしては珍しい子供っぽい仕草に、つい微笑ましくて見とれる。
『アムロの欠片を分けて貰うなんて、大佐ったらいけないひと』
しかし、そう言われてどきりとした。さっと手で片目を庇う。
「返さない。これは、私がたった一つ、アムロから貰った大切なものだ」
『たった一つ、ですって?』
それを聞いて、少女はおかしそうにころころと笑う。
『可哀想な方。……あなたはアムロの全てを貰っているのに』
そして彼女はまた、とろとろのバターのような夢の塊の中に戻っていった。
とろける海で逢いましょう、そんな甘い言葉だけ残して。
この海の中にもしや、と思って、後を追いたかったが、拒まれてしまった。
大人になってしまった私の手はどうしても、彼女のように綺麗に夢の中には溶け込めないのだ。
沢山の人の気配がするのに一人で、私は孤独を感じて俯いた。
そしてアムロ、と名前を呼んだ。
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