|
++++++++++
016:指先攫う、君のこえ
夕焼けの空を見ていると、不意に彼の声を思い出した。
少し舌足らずで、甘い。
そうだ、と思った。
愛を囁くのに丁度いいのだ。恋を歌うのに適している。
初めて思い当たった。あの声で恋を囁かれたら、どんなにか素晴らしいだろう。
それなのに、一度も自分は彼の歌を聴くことは出来なかった。
なんて惜しい、と悔やむ。
指先攫う、君のこえ。きっと、自分は夢中になってもう一度、とアンコールをするだろう。
聞きたい、声だけでもいいから、もう一度、と願いながら、その夜は眠りについた。
++++++++++
|