|
++++++++++
015:不意に目が合って、逸らせなくなる
不意に目が合って、逸らせなくなる。そんな人間がこの世に何人居るものか。
女は、そんな希有な人間を雑踏の中で見つけてしまって、つい声をかけた。
「ねぇ、ちょっと」
その男は、女の声になど気付かないように早足で歩いていくので、女は衝動的にその腕を掴んだ。
「ちょっと、あなた!」
「……何か用かね」
振り向いた男の顔を見て、女は自分の認識が正しかったことを知る。
天上の青のような、こんな美しい青い瞳を彼女は今まで見たことがなかった。そして。
「綺麗なオッドアイね」
「ありがとう」
にっこりと微笑む男のもう一つの瞳は、森の光を閉じ込めたような温かい琥珀の色を湛えていた。
「ねぇ、今から時間は取れないかしら、もし良かったら……」
言いかける女の声を、男は遮る。
「いや、急いでいるんだ。この街を出るところでね」
「そう。残念ね。待っている人でもいるのかしら?」
女のかま掛けの質問に、男はただ微笑むだけで答えた。
「そう、妬けるけど、売約済みじゃ仕方がないわね」
あなたのいい人によろしくね、と言って去っていく女の後ろ姿には目もくれず、金髪の男は再び歩き出した。
世界中が、全く色を変えてしまったように思える。彼の瞳から見た世界は、いつもこんなに綺麗だったのだろうか?
だとしたら、地球を護るために命を賭けた彼の行動もあながち理解できないものではない。
愛おしさに溢れているのだ、何もかもが。
「君と一緒に、世界の全てを見よう」
一緒に旅をしよう。もう、何も恐ろしいものなどない。君はずっと側に居てくれるのだから。
男は呟き、そっと色を変えた片目を愛おしげに掌で撫でた。
++++++++++
|