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014:君がくれた、たったひとつの
男はもう、シャア・アズナブルではなかった。クワトロ・バジーナでもなかった。ダイクン家の人間ですらなかった。
男は、ただ人間として辛うじて生きていた。
その変化に男が気付いたのは、唐突だった。
ある日の朝、惰性で顔を洗って何気なしに鏡を見て、思わず息を飲んだ。
その変化を見極めたくて、久しぶりに髭も剃り、髪も整えると、浮浪者とはほど遠い秀麗な容貌が姿を現す。
ただ一つ、以前と違うのは、その地球にも喩えられた程の深青だった瞳が、片方しか見受けられないことだった。
「……これが、君がくれた、たったひとつの、」
呟くと、男はその場に蹲って片目から涙を流した。
やっと、生まれ変わることができた。そんな気がした。
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