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013:手探り
その日から、生きていくのが億劫になった。文字通り、食事をするのも、息を吸うのさえ。
見かねたらしく、葬式の後も残った黒髪の男が甲斐甲斐しく金髪の男が生活できるだけの世話を焼いてくれた。
しかし、男の方はちっともそれに感謝する気も起こりはしなかった。
男はただ、捨てて置いて欲しかった。朽ちるままにして置いて欲しかったのだ。
「どうして私を生かそうとする」
ある日、動こうともしない男に無理に食事を取らせようとするのが億劫で、そう尋ねた。途端に、黒髪の男からは苛立った叫びが返ってくる。
「アムロが遺した、たった一つの命だから、です。あなたにはそれを守る責務があるでしょう!」
叫んだ後、黒髪の男は金髪の男の胸ぐらを掴んで、炯々と光る瞳で睨み付けた。
「私の息子も、行方が知れません」
言った後で、やや静かに続ける。本当は、こんな所でこんな抜け殻のような男に構うよりももっとせねばならぬことがあると思うのに、ただ、あいつが望んだから、アムロが望んだから。
「生きている人間は、生き残った責務を果たさねばならない。生きなければならないのです」
最後に、男は綺麗な形通りの敬礼を金髪の男に送った。
「ごきげんよう、シャア・アズナブル。私は明日帰ります。もうお会いすることはないと思いますが、どうかご壮健で」
金髪の男は曖昧に頷いた。黒髪の男は言葉の通り翌日には姿を消す。
その日から、男にとって全てが手探りの日々が始まった。
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