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012:噎せ返るほどの甘い花の匂いに包まれて
病院のベッドで目を覚ました男は、目覚めたことを後悔した。
いっそこのまま永遠に眠っていれば良かったのにと、どれだけ自分を罵ったことか。
怪我が治るまでは待てない。そのままにはしておけない。断罪されるのならばされてしまえと、男は嘗て敵であった男の元に連絡を入れた。
連絡を受けた男は人目を忍ぶようにして駆けつけ、何も言わずに抜け殻のような男に代わって一切を取り仕切ってくれた。
葬列は、二人だけという淋しい見送りであった。本当は遠くから見ていたかったが、それでは余りに可哀相だと言われ、渋々ながらも参列をした。
叶うなら行方不明のままにしておいてやりたいというのが取り仕切った男の提案で、取り残された男の方もそれに同意した。
土中に埋められる棺の中に両腕一杯の白い花を入れながら、男は呟いた。
「こいつも、幸せだったのかもしれません」
返事すらできなかった。こんな事が現実だなどと、認めたくはなかった。
黙ったまま、自分も両腕一杯の花を棺の中に置き、目を閉じて祈りを捧げた。この夢が早く醒めるように、と。
君は逝く。噎せ返るほどの甘い花の匂いに包まれて。
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