恋唄100題

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005:恋ってどうにもならない感情なのね



 懐かしい夢を見た。

 薄情にも夢に見ても直ぐには名前を思い出せなかった、昔一時期一緒にいた女が、短く活動的に切られた栗色の髪の毛を揺らし、そこが印象的だった意志の強そうな眼差しで自分を真っ直ぐに見ながら言うのだ。

「恋ってどうにもならない感情なのね」


 それが別れの言葉であると男にはすぐに分かった。むしろ、切り出されてどこかホッとしていたかもしれないくらいだったのだ。

 その少し前に、彼女が"I am my beloved, my beloved is mine"という言葉をぼんやりと書類の裏側に書き綴っているのを見つけて、珍しい文句だと思ったので意味を尋ねた。

 彼女は暫く渋っていたが、やがて結婚指輪の決まり文句だということを白状した。

 その瞬間に、自分には彼女との終わりが見えてしまった。言った彼女もどことなく肩の荷が降りたようであった。

 彼女が望むようには、結局自分は彼女を愛してやれなかった。だから何も言わずに黙って行かせた。

 別れを告げられたのではなく、言わせた自分の狡さも十分に承知していたから、弁解も言い訳も誰に対しても一切しないでおこうと決めた。

 その後程なくして、彼女は恐らくはその「どうにもならない感情」とやらに突き動かされて永遠に彼の前から去っていった。

 それきり、自分は彼女の夢など、一度も見たことはなかった。見たいと思ったこともなかったが。

 どうしていきなりそんな夢を見たのか分からない。

 ただ、彼女の気の強そうな、少し強情そうな、それでいてどこか脆いところを伺わせるような、あの眼差しを思い出したのだ。

 不安にさせられる眼差しだった。それでいて、もっと見ていたかったとどこかで思ってもいた。

 夢の中身はただそれだけだったが、何故かすぐには忘れ去ることができそうになかった。

 アムロの顔を見て、「俺は、終わらせてなんか、やらないよ」という言葉を聞いて、あの夢で彼女の眼差しを見たときの不安を思い出した。

 どうしようもない焦燥感が沸き上がってきて、不安の理由を悟る。

 彼女の眼差しの意味が、ようやっと理解できたからだ。

 きっと自分も今、同じような目をしている。―――その事に怯えていた。

 全く、途方に暮れてしまう。

 恋は須くどうにもならない感情なのだ。始まるときは当然、終わるときもまた然り。






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+++END

 

 

ふたりでぐだぐだ言うだけで終わりそうです。

 

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