帰還
-Amuro's Counter Attack-

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 ※世界はSRW設定です。



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+VII+



 天の川にも似た不思議な光の渦の中で、シャアは白鳥の少女に対峙する。
 向き合う心の準備は、全く出来ていなかった。

 驚きに声を震わせつつ、混乱した思考のままシャアはもう二度と再び感じることも、ましてや逢うことなど決してないと信じて疑っていなかった彼女に向けて問いかける。

「ララァ…一体、何故、どうして君が…いや、それよりも何故私が?不完全なニュータイプである私が、再び君を見ることが出来たのだ?!」

―――それは、アムロのお陰。

「…アムロの?」

―――今、大佐の乗っていらっしゃるその機体。

 シャアがハッと気付いたようにぐるりを見渡す。
「サザビーか?!」

―――アムロが大佐のためだけに心を込めて造ったのです、…その機体はアムロそのもの。大佐を包み込んでどんな外敵からも護るように、大佐の想いを叶えるように。その強い思いが私を呼んだのです。…大佐の御許に。

「……そうか、お前が。」
 シャアは感慨深く呟き、この世に生まれ出たばかりの機体を愛おしげに優しく撫でた。
「ララァ、もしかして君はずっと私達の側にいたのか?」
 シャアの問いかけに答えて、脳裏に鈴が鳴るような笑い声が弾ける。

―――私は此処にはおりませんわ、大佐。何処にでも居て、何処にも居ないのです。

 あやふやな言葉に男が首を振る。鋭敏すぎる少女の感性に合わせるには、彼はもう大人に成りすぎてしまっていた。
「…まるで謎かけだな。アムロにはそれで分かるのか?」

―――アムロはこちら側の人ですもの。

 言われて、シャアは微かに表情を曇らせた。
「…そう、か。」

―――お寂しいですか?大佐。

「まさか。…一時は分かり合える君達に随分と妬いたものだが…今更もうそんな感情も枯れ果ててしまったよ。」
 苦く呟くシャアに、それは違います、と窘める声がする。

―――大佐、大佐、そろそろお認めになってもいい頃です。大佐はもう私を必要としていません。

 ララァの突然の宣告に、焦ったようにコックピットからシャアが身体を乗り出す。
「そんな筈があるか!ララァ、何故急に君が私に見えるようになったのかは分からない。けれど…。」

 其処までで、シャアは言葉に詰まった。私には君が必要だ、という言葉が喉の奥に引っかかったようにどうしても出てこない。…いつもなら滑らかに回転するはずの舌が錆び付いたように重い。困惑する彼を見かねたようにララァが先を続けた。

―――それは、大佐が寂しいから。

 シャアが彼女の口から聞くとも思わなかった台詞に些か呆然と繰り返す。
「…寂しい?私が、か?」

―――認めてしまうのが不安ですか?もう、子供みたいな駄々を捏ねるのはお止しになってくださいな。大佐には、大事なものが何かも必要な人が誰かも誰よりも良くお分かりになっていらっしゃるはずです。

「…買いかぶりすぎだ、ララァ。」
 シャアは首を振る。…否、認めたくない、と。
 唯一絶対のものを選んで手にしているのに。…そのことこそが亡くすことの恐怖を産むなんて、誰に言えた話でもない。情けない。…自分はいつの間にか若かった頃よりも弱い男になってしまった。

―――お出来になることを出来ないと仰るのは良くないですわよ、大佐。

 窘めるように言われ、シャアは苦笑した。
「…君は、相変わらず賢すぎる……。」

―――うふふ、大佐が物わかりが悪い振りをしていらっしゃるだけです。

 そこが大佐の一番素敵なところですけれど、という言葉と同時にふわりと意識に優しく触れる雰囲気に、シャアはふと表情を緩める。
「ララァ、ありがとう。」

―――はい。

「もう、行っても良い。…逝きたいのだろう?……君を宇宙の永遠の刻の中へ解き放ってあげよう。身勝手を言うようだが、莫迦な男に関わったと、後悔はしても否定はしないでくれ。私はこれでもそれなりに楽しかったし、君を愛していたつもりだよ。…アムロ程には君を理解できなかったなり損ないの私だが。」

―――ありがとうございます、でも大佐?

「…なんだね。」

―――ララァは本当に大佐を愛しております。

「ああ、私も…君を愛していた。」

―――ふふ、過去形ですの?妬けますこと。

 ちくちくと軽く意識を刺す優しい棘にシャアが詫びる。
「次は、君だけを愛して大切にしてくれる人…等という陳腐な台詞は言わんよ。君は君だけのために生きろとも言わない。…そうだな、次は私がこの手を離したことを後悔するような鮮烈な存在として生きて欲しい。苦しかったらいつでも呼べ。何度でも救いに行ってやろう。…あの時、出会った君を宇宙へ攫ったように。」

―――はい、大佐も。

「…また会える日まで、壮健でな。」

 白鳥は、役目を果たして天の川の向こうに帰ってゆく。その後を追おうとしても最早シャアには叶わないことだ。

 自分の為だけに用意された赤い機体、神からの贈り物とも思えるサザビーのコックピットで拡散から収束に向かう意識を感じながら、シャアは自分に何時でも奇跡をもたらす彼だけの神の名前を呟いた。


「…アムロ。」


 救いも癒しも、確かにその中にこそ。


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『シャア、…シャアってば、おい、返事しろよ?!』

 響いてくる苛立った声に、シャアの意識が現実に引き戻される。慌ててこちらからも会話を出来るように回線をセットし直した。

「あ、ああ、アムロか…すまない、私はどのくらい通信を絶っていた?」
 通信機の向こうで今度はアムロが沈黙する。
『は?…何言ってんだよ。耄碌すんには早いだろ?さっきあなたが変なこと言うから切ったとこじゃないか。』
「……そうか。」
 瞑目し、シャアは深々とシートに沈み込んだ。

「…それなら、それでいい。」
 先程の出来事は、アムロには感知できない類のことであったらしい。それを証拠に疲れたようなシャアの口調に淡々とした事務的な通信が続く。

『久しぶりのサザビーのサイコフレームは辛い?…神経系統への負荷はゼロに近いと思ったんだけど、何か俺の見落とした要素でもあったのかなぁ?何ならファンネルのチェックは後にして一遍帰ってくれば?俺ももうラー・カイラムに着くよ。お先。』

「ああ、そうだな。」

 永遠の時間とも思える邂逅は、実際にはほんの一時の白日夢だったのかもしれないが。
 或いは卓越した天才技術者が組み上げた赤い機体の見せた優しい幻だったのかもしれない。
 シャアがララァと確かに出会ったという証拠はないし、誰に語るような話でもない。

 それでも。

 単純すぎた他愛ない願いに、唇の端が上がる。


「今、そちらへ帰還する。」


 もしかして、私はずっとララァに謝罪したかったのだろうか。君をいつまでも愛していると、忘れないと誓いながら少しずつ変質していった自分を。

 あんなに拘って血の涙を幾度となく流し、癒えない傷を抱えていると思っていたのに。もう、違う存在を…他の人間を選んで歩き始めてしまった身勝手なシャア・アズナブル。
 幸せにならないとはどんなに後ろめたかろうが罪悪感が在ろうが絶対に言えない。意地でもなんでもここまで来たらアムロと二人笑って死ねる未来を目指したいものだと常々決心しているのだが。

 出会った奇跡が確執に変わったのは、シャアが彼女を愛していたからだった。

 そうして、シャアが宇宙へ誘った彼女はアムロと出会い、彼の孤独だった魂を初めて理解した。
 シャアがララァが苦界から抜け出す為用意された差し出された腕と新しい道ならば、ララァこそはアムロを救う為に宇宙へ届けられた運命と出会いだったのだ。

…そしてアムロは、誰ならぬシャアにとって唯一の。

 彼女にとっての彼等、彼等にとっての彼女はお互いにそれまでの古い世界とは違う新たなる場所への扉と、その鍵。
 自分とララァとアムロと、誰が欠けてもこの場所に来ることはできなかった。
 あらゆる意味で、ララァはシャアにとって母のような存在であった。心から愛した。…彼女が望むものではなかったかもしれないが。

 変わってしまう自分。
 変わらざるを得ない未来。もしかしたら、それは幸福の甘い響きも伴っている。

 それこそを許して欲しいと。

 それが、私のココロノノゾミだったのだろうか。

 サザビーを回頭させながら、名残惜しいとばかりに背後の何もない宇宙空間を振り返る。

「……ララァ。」

 その、微かな切ない呟きを。

 愛しきものであった存在を呼ぶ声を。


 回線が切れる前の一瞬に滑り込んだ音声として、アムロは…聞いてしまった。






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+++To be Continued.

 

 

はい、復唱。「男の嫉妬は単純計算でも女のざっと五十倍。」
…次回をお楽しみに(大爆笑)

「スカイ・ハイ」だの「地獄先生ぬーべー」だの言われ放題のうちのララァですが。
…本人のイメージはホラあれ。シャアがピンチになったらフラッシュバックに奴の影…じゃない(笑)
タクのシャアに悪さをするのは誰ザマス…ってそりゃアムロだ(違うから!!)
あれです。アルウェン。…シャアはでもアラゴルンより…レゴラスだよな…電波っぷりとか(違)

「男ってほんっと馬鹿よね…」という女性陣の呟きが聞こえてくるようです…(笑)
折角ほのぼのとララァと旧交暖めて(?)たのにねぇ、大佐。
そういえばこないだ知ったんですけど、「白き流星」ってアムロの呼び名はSRWだけなんですってねぇ…(汗)
…いいか。
いいや。(笑)誰も気にしちゃいないだろう(…こいつ。)

 

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