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嗚呼、この人ってかなりの美形なんだ・・・な。
*:※:*
コーヒーを飲みつつ何枚かの書類に目を通す矢鱈と目立つ赤い人を、偶然隣に居合わせた白い人は思う。
いつもは何気無しに見ていたその横顔を改めてじっくりと近隣で見たのである。
限りなくシンメトリーで上品な顔立ちも、柔らかそうな細い金色の髪も、自分には無いものだと溜息さえつきつつ。
まるで興味ある物を我慢出来ない子供のように、無意識にアムロは手を伸ばしていた。
さわ…っと柔らかな髪に指を差し入れる。
「…ん?」
「あ…。」
同時に発せられた声。
突然触れられた事に別段驚きもせず、緩やかに金糸の睫を一度だけ閉じ、再び優雅に振り向いた。
−−−はぁ?今俺何した?!
驚いたのはアムロの方で。自分の取った行動よりも、振り返り視野に入るアイスブルーの瞳に威圧され。
それがあまりにも深くて穏やかで、吸い込まれそうで苦しくて。
胸がキュウキュウして…。
って、何だ…?!
最後のキュウキュウって何だ?
「や…、うわ、ごめ…何?いや、何だろう、俺…。」
静まれ心臓!!
って、昭和の少女漫画じゃあるまいし。
目に星キラキラさせてって、それ違うしカミーユだし…ってそんな事どうでもいいし!
ていうか…待て。いや・・いやいや、そうでなくて!
俺、俺そーいうんじゃないです…たしか。
そーいうんじゃないはずです。
この人男だし、俺だって男だし!
ちょっと待ってください。
何なんだ、これ。
俺知らないぞこんな感覚。
…ていうか知ってるけど、これって男相手にしないし!
そんなの「変」だし!「恋」じゃないし!!(わかってるんだけど)
自問自答しながらも、テンションは上がり体温も上がる。
本当に何を興奮しているのか、息も上がれば頬もほのかに紅を帯びる。
「どうかしたのか、君?」
書類を離し、そのまま進めてくる手がぼんやり視界に入った。
だってそう、俺のはまだ紺碧のそれから目を離せずにいたのだから。
「や……、ほんと待って。」
「何が。」
いや、だから待って!
待ってくれって。
待って
待っ……
ちゅ。
!!!!!
…今度は差し出された掌に、勢い余って唇など降らせてしまった。
嗚呼、神様……俺もう駄目かもです。
泣きたいです。
決定的に馬鹿な事をしてしまいました。
だけど、
だけどどうにも止まらなかったんです。
さすがにこれにはこの男も驚いたようで。
あの綺麗な目をパチクリさせてこう言うのです。
「君は…、掌への口づけの意味を?」
いや、だから知る訳無いし。本当に知る訳無いし。
俺今きっと脳味噌別人間だし。
新造人間だし、キャシャーンだし!(黙っとけ)
「〜〜〜〜っじゃ!」
とにかくここは危険だ立ち去らねば。早くこの赤いのから離れなければ。
本能が危険を察知する。
突然立ち上がって踵を返すも、手足の感覚が何かおかしい。
素敵に同時に出てる気さえする。
動揺?!…なんで!
「おい、君、まちたまえよ。」
「な、なんですか。」
「なんですか、は私の台詞だよ。」
ほら…、だからこの男は。
背だって俺よりデカイから、数歩歩いてサラリと追い越すんだよ。
…癪にさわる。
しばらくお互いに沈黙しつつ、その場を動けず。
数秒経って赤いのが取った行動は…
「ん。」
−−−−なに?
何をやっているのですか、あなたは!!
この素敵な金髪の彼は、こともあろうに両手を広げて俺の前に立つのです。
これは何ですか?
俺は闘牛ですか?
ここへ飛び込んで来いとでも?
「私の赤い胸に飛び込んできたまえよ。」とかなんとか言っちゃうのですか、あなたは。
ぐるぐると訳のわからない思考が頭を駆け巡り呆然としている俺の手を、力強くそして目一杯優しく…赤い男は引き寄せたのだ。
ぼふん…と納まってしまった胸元は、それはもう暖かくて至極心地が良くて。
男だとか女だとかそんな事はどうでも良くて(全然どうでもよくないけど)、涙が出そうになったのも事実で。
「…何やってるの、あなたは。」
「私にだってわからないよ。」
「じゃあ何で俺達こんな風に抱き合ってるの。」
「さあ、なんでかな。」
異様に冷静な赤い男を見上げつつ、心地よい胸と腕から離れたくもなく。
それでも自分は“ノン気”だ!と、強く言い聞かしてみたり。
嗚呼神様、俺はいったいどうしちゃったのでしょうか。
何でこんな状況に陥っているのですか?
そしてなんとも心地良い、この感覚は何なのですか?
アムロは思う。
全てはこの「赤」と言う色が悪いのだと。
そう、絶対に俺のせいじゃない。と。
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+++END.
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