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03:つかの間のたわむれ
目を覚ますと、泣きそうな視線と目が合った。はあ、と眼帯をした男が安堵の息をつき、その後でああくそ、と悪態をつく。
「馬鹿野郎、ちっくしょ、なんで」
「?」
頬に優しい指先が触れる。トレードマークのような革手袋をしていない。素の指先が、グラハムの目元をくすぐった。
「顔に傷なんか残しやがって……俺、あんたの顔好きだつったろ」
嫌がらせかよ、と言われてグラハムは笑った。
金髪碧眼のグラハムに惚れたのは自分が面食いだからだと主張するのはいつものことで、それがニール一流の照れ隠しであることも知っている。
ならば、とグラハムは反撃に出た。
「君こそ、私の愛する青い瞳が一つ足りない気がするのだが」
「これは、……カプセルに入れば治る」
咄嗟に眼帯を抑えたニールがきまりの悪そうな口調でぼそぼそと言うのに、グラハムの表情が和らぐ。
なんという素晴らしい気分だ。目覚めたら、そこには最愛の眠り姫。……いや、この場合眠って居たのは自分だが。
迎えに来てくれたのだな、ニール、約束した覚えはなかったが嬉しいと素直に心情を吐露すると、困ったように青い瞳が泳いだ。
「私だって治らなくもない」
とてもとてもいい気分だ。なんだって誓えそうだった。
「嘘言え、無理だろ、そんな……」
「平気だ」
言って、男は爽やかに微笑んだ。ニールが居ると言うことは、つまり。
「ここは、あの世とやらだろう。君の好みの姿でいることだってできるはずだ」
傷だって消してみせよう、そして君と添い遂げよう! 金髪の男の高らかな宣言に、何故かニールは困ったような顔をした。
「あー……」
そっか、そうだよな、ぼそぼそと口の中だけで呟き、てへり、と子供のような笑顔を浮かべる。
「その、盛り上がってるとこ悪い」
「なんだね?」
もしや、ニールは天国だが自分は地獄行きだったのだろうかとすっ飛んだことを真剣にグラハムが考えていると、ニールはショックを受けずに聞けよ、と念を押してきた。
「俺もあんたも、死んでねえ」
「……」
目の前が、再び暗くなる。
「おい、グラハム? ちょ、気をしっかり持てよ!」
あれが今まで君から聞いた中でも一番衝撃的な告白だった、と聞かされるのは、ニールがこよなく愛するグラハムの金色の髪の毛がすっかりプラチナの色に覆い隠される頃の話であった。
>>>END.
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