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【朝の陽-EL DORADO:15-】
そのまま、遅くまで久々にシャアと話し込んだカミーユは旅の疲れもあってそのままソファで眠り込んでしまったらしい。
途中で身体の上に毛布か何かがかけられるのは感じていたが、それでも瞼を上げられないほど泥のように眠っていた。最も、ぼんやりした意識の向こうで
「なんでそんなこの子に優しいのさ、あなたは」
「そりゃあ、可愛い馬鹿弟子だって言っただろう?」
「…俺は?」
「拗ねるのは止めたまえよ」
「いいよ、後でベッドでゆっくり聞くから」
「…布団に入った瞬間に眠り込みそうな顔をしている癖に、何を言うか」
等と言うような新婚夫婦と見まごう会話が聞こえて来たので、恐ろしくて目を開けなかったのもちょっぴりあったのだが。
翌朝目が覚めると、部屋の中央のテーブルに、シャアが朝食の用意をしているところだった。
「あ、師匠、手伝います」
慌てて体を起こそうとすると、笑顔でいいから、と制される。
「昨日まで大変だったんだろう、暫く休んでいたまえ。ああ、手の怪我は勝手に治療させて貰った」
言われてカミーユが掌を見ると、岩壁を登るときに創った傷が綺麗に消えている。
そういえばこの人、神官だったって言ってたなぁ、と思いながら掌をひっくり返して確かめていると、どん、と寝ているベッド代わりのソファの片隅に途轍もなく低気圧のアムロが腰を下ろした。
「オ・ハ・ヨ・ウ」
「ああ、オハヨウゴザイマス」
たとえ仔竜でも年上は年上、しかも師匠の思い人(に、カミーユの中では昨日時点で既に決定している。シャアの意見は知ったことではない)。一応改まった態度でカミーユは接した。
暫くアムロは黙ったままカミーユの方を見ようとはしなかったが、やがてなにか覚悟を決めたように口を開いた。
「カミーユ、って言った?」
「ああ、はい、カミーユ・ビダンといいます」
今更自己紹介ていうか、勇者が竜王に挨拶ってなんか妙だよなと思いながら一宿のついでに今から一飯の恩義にも預かろうとしているカミーユは素直に名乗りを上げた。
「……ありがとね」
「なにがですか?」
驚いたように言うカミーユに、アムロがぼそぼそと言う。
「シャアがさ、ここに来て初めて食事をする気になってくれたんだ」
今までどんなに脅してもすかしても水一滴口にしなかったんだ、あのひと、と言われ、カミーユは苦笑した。
「まぁ、あなたが敵じゃないって分かったからでしょう。あの人、身内にはとことん甘いですから」
「…みたいだね」
今度こそちろりとアムロが横目でカミーユを見る。もしかしなくても、これは。
「あの、アムロ……さん」
「なに」
「言っておきますが、僕ほんとにただの弟子ですから。師匠には決まった恋人は、少なくとも俺が戦場で別れたときは居ませんでした」
竜王に嫉妬されてはかなわない、とカミーユは慌てて自己弁護を開始した。ついでにゴマもちょっと擦ってみる。
まぁ、その前のことはいいだろう。華麗な女性遍歴など語ろうものなら、シャアはまぁどうでもいいとして敵視される相手の女性達に気の毒だ。
自分自身に関しては、女みたいだとよく容貌をからかわれるので腹は立つが、その辺に関しては頗る普通な趣味だと自分では思っている。
「しかも結構真面目な人ですから、アムロさんに居ないと言ったのなら、恋人は居ないと思います」
「…そっか、良かった」
アムロが初めてにっこりと笑う。
「心配してたんだ、今朝も俺が食料調達に行くって言ったらカミーユはあれが好きだこれが好物だばっかり言うし」
―――師匠、気が利きすぎるのも時には罪ですよ。
ていうかどうして乙女心にはそんな鈍感なんですか、アムロさんは乙女じゃありませんけど!とカミーユは頭を抱えたくなる。
あれでいてシャアはもてる(あの外見があれば当然だが)のだから、世の中の女性の判断基準はどうなっているのか問いかけたい。まぁ、同じ側に置くなら見てくれが良いのに越したことはないのかもしれないが。
などと師匠思いな感想を胸に抱きつつ、カミーユは朝食が出来たと呼ぶシャアの声に身体を起こした。
アムロもとてとてと歩いていって、シャアの背中に寄り添うようにひっつく。改めて見ると、外見は確かに青年だが、言動は随分と子供っぽい。
「アムロさんは食べないんですか?」
テーブルの上に並んでいる食事が二人分なのに、カミーユが恐る恐る尋ねた。
「ああ、竜は基本的に人と同じようなものは食さないらしいな。味覚はそこそこ発達しているようだが…」
「お腹空かないもん。天からの気とか、大地の波動とかを受け止めたら十分だし。さっき食料仕入れに行くときに十分浴びてきたから、平気」
「……だ、そうだ」
「食べられないわけじゃないよ?」
「分かってる分かってる」
交互に返ってくる返事に、カミーユは些かげんなりし始めてきた。
なんだか、新婚家庭に遊びに来た新郎の兄弟か何かにでもなった気分だ。
じゃあ、アムロさんは兄嫁かよ、と自分で自分につっこみを入れながらカミーユは用意されたベーコンエッグの黄身にフォークを突き立てた。
食事が或る程度和やかに進んでいたところで、アムロが不意にぴくぴくと耳を動かしてふいと出入り口の方を向く。
「あ、…着いたかな」
「なにがだね?」
シャアが膝の上に腰をかけているアムロに向かって問いかける。
アムロがごく自然にここに座るに当たっては暫くすったもんだがあったのだが、結局シャアが折れることになった。師匠もいい加減諦めればいいのに往生際の悪い、とカミーユが思う次第である。
しかし、アムロはシャアには返事をせず、カミーユの方に向き直った。
「君の知り合いだと思ったから手は出さずに置いたんだけど、ほんとに知り合い?違うのなら追い払うから」
「え、…一体」
何を言ってるのですか、とカミーユがアムロに問いかけようとしたとき、部屋の隅にある昨日カミーユが開けて入ってきたドアが、また重い音を立てて突然開いた。
流石にこんな場所ではと気を緩めていたカミーユが咄嗟に剣の剣柄に手をかけて腰を浮かせ、シャアもアムロを背中に庇うように立ち上がる。飄々としているのはアムロ一人だ。
開いたドアから、よろよろと人影が中に転げ込んできた。
「カミーユさんっ!、…無事?!」
その声に、カミーユが目を丸く見開いて人影の名前を呼ぶ。
「あれ、お前…ジュドー?ジュドー・アーシタか?!」
「うん、そ……」
言いかけたジュドーは穏やかな雰囲気の漂う室内と明らかに歓待の最中の朝食満載のテーブルに、脱力したようにへたり込む。
「ちょ、俺カミーユさんが竜王を退治する為に岩山に登っていったとか聞いたから必死で後追ってきたのに、なにこんな所でくつろいでんの?!」
「いや、まぁ、これには深い訳が…」
つい昨夜自分がシャアから聞いたばかりのような台詞を言いながら、カミーユが弱ったな、と呟く。
「深い訳って!どんな訳かとっくり聞かせても…!!」
黒髪にきらきら光る緑柱石の瞳を持った少年が威勢良く食ってかかろうとしたところで、勢い良く腹の虫が音を立てる。どうも、朝食のベーコンの匂いが周囲に充満していたのが良くなかったらしい。
「…とりあえず」
真っ先に我に返ったシャアが、少年にカミーユの隣の席を勧める。
「そこに座ったらどうかね、君の分も朝食を用意しよう」
「……ゴチになります」
なんだか失速して気合いが抜けてしまったらしい少年はそう返事をして、項垂れつつテーブルにとぼとぼ歩いてきた。
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【不思議をください-EL DORADO:16-】
シャアの用意したもう一人分プラス一人前の食事を勢い良くかきこみ、少年は満足そうな息を付くと、元気良く自己紹介を始めた。
「ええっと、俺はジュドー・アーシタって言います。カミーユさんとは、カミーユさんが意識がないときに出会いました」
なんだか紹介になっているのかなっていないのかよく分からない自己紹介を、横合いからカミーユがぼそぼそと補完する。
「…僕を、こいつが助けてくれたんです」
「命の恩人って素直に言っていいよカミーユさん」
「なんか、今のですげぇ言いたくなくなった」
「なんでさ!」
どうしてそんなクールビューティなんですか!と喚き立てる少年の主張など綺麗に無視してカミーユが話題を先に進める。
「ところで、なんでお前わざわざこんな所まで来たんだ?」
その言葉に、はたと気がついたようにジュドーが手を打った。
「あ、そうだよ、俺、カミーユさんに力を貸して貰おうと思ったんだ!」
「力?」
「うん、カミーユさん、竜王アムロ・レイを退治しに行ったってファさんから聞いたから、それ手伝って助けて貰おうと」
続けるジュドーに、カミーユがちらりとシャアに寄り添ったままのアムロに視線を送る。
「いやまぁ、俺も予定が全然狂っちゃったから、お前に力貸してやらないこともないんだけど、…何?」
予定が狂うっていうか、調子も狂っちゃうよなぁ、という本音は余所にカミーユは続けた。ジュドーが待ってましたと身を乗り出す。
「妹が、妹のリィナが、俺が出稼ぎに出ている隙に、ハマーンに攫われたんだ」
その言葉に、先に食事を終えて朝食の後のコーヒーを優雅に啜っていた師弟二人の手がぴたりと止まる。
カミーユが何かを言うより先に、シャアが腹の底から苦々しげな言葉を絞りだした。
「ハマーン、とは、もしや西の氷の魔女、ハマーン・カーンのこと、かね……」
「そうです!知ってます?あ、そうか、カミーユさんの師匠さんだっけ」
一瞬きょとんとしたものの直ぐに納得する単純なジュドーを余所に、カミーユはしらりとコーヒーを飲みながら言い放つ。
「師匠、過去の因縁と対決ですねー。勿論一緒に来ますよね?これで決着着くかもしれませんよ?やー、よかった」
「カミーユ!」
シャアが苛立った声を挙げ、アムロが只ならぬ雰囲気にぴくんと反応して身を乗り出してきた。
「ちょっと、カミーユ、過去の因縁てなにさ?!」
カミーユは濃紺の瞳でちらりとシャアを一瞥すると、さっくり魂を竜王に売り渡す。
「うちの師匠はハマーン・カーンの恋人だったこと「も」あるんです」
含みのある言い方にシャアが違うとも言えず困り果てた表情になる。
「カミーユ、そう…妙なところを強調しなくとも…」
当然だが、カッとなったアムロがシャアの胸元に掴みかかった。
「あ…なた、一体何カ所に恋人を作っているんだ!」
焦ったようにシャアが答えた。
「今はいない!、落ち着きたまえ!!」
「当たり前だ!居たら俺が滅ぼしてる!!」
その発言に、カミーユは早々に師匠離れをした己の判断の確かさに胸を撫で下ろし、ジュドーはこの金髪のオッサン(ジュドー視点)には何があっても近付くまい、と固く心に誓ったのだった。
「で、なに?あんたハマーンの恋人だったわけ?」
「恋人だった覚えは私にはないのだが…」
「師匠は人外の生き物にものっすごく好かれますからねぇ。アムロさんもうかうかしていると危ないですよ」
「カミーユ!!」
「え、危ないって…なにが?」
「師匠は野山を歩けば人外の生き物連れて帰ってきますから。来る者拒まず去る者追わずで。誰彼構わず優しいのは駄目だっていつも言ってるのに」
「あ、それは俺も思った。見張ってないと危ないかな?」
「ええ、絶対」
「君達な…」
弟子と恋人候補の総攻撃に頭を抱えるシャアの方に何とはなしに同情めいた視線は送りつつも巻き込まれるのは回避したいジュドーが、それじゃ、カミーユさん一緒に来てくれるんだ、と胸を撫で下ろした。
「よかった、流石に俺一人じゃ西の国ネオ・ジオンまで行くのも不安でさ」
「心配するな、俺だけじゃない、俺の師匠の伝説の剣豪、『クワトロ・バジーナ』も一緒に来てくれるそうだから、大船に乗ったつもりになっていいぞジュドー」
にこやかに言い放つカミーユに、ジュドーが緑色の瞳を大きく見開いた。
「クワトロ・バジーナって、あのルウム戦役とか、竜王アムロ・レイと戦ったとかで有名な、ドラゴンスレイヤーの称号持ってる「ジオンの赤い彗星」?!マジ?」
そのジュドーの言葉に、アムロとカミーユが一斉に金髪の男の方に視線を送る。
「…俺、いつあなたに倒されたんだっけ」
「過去の栄光って背負って生きるの大変ですよね」
「さっきから随分気が合っているようだな、アムロ、カミーユ…」
溜息をつきながら、シャアが顔を上げてジュドーの方を見る。
「いかにも、私は嘗てクワトロ・バジーナと呼ばれた男だがね」
「ええ!」
ジュドーが素っ頓狂な声を上げ、暫くシャアの向かい側で黙ってコーヒーをすすり続けるカミーユと、シャアの腕にくっついて離れないアムロに交互に視線を送った後で、恐る恐るカミーユに尋ねる。
「ドラゴンスレイヤーって、竜をコマした人間に付く称号なんだっけ?」
「ああ、当たらずとも遠からずかな」
ぱちぱちと気のない拍手をするカミーユに、これ以上話を脱線されては敵わないと判断したのか、シャアが強引に話題を進めた。
「だが、今の私はシャア・アズナブルという神官でね。それ以上でもそれ以下でもない。神職にあっては剣を握ることもないから、国に返上してしまったし…」
「あ、この人前に俺と戦ったときより強くなってるよ」
シャアの台詞を横からかっ攫うようにしてアムロが微笑む。
「アム…」
「なんで?俺が言うんだから間違いないでしょう。随分修行した?」
にこにこと言い放つアムロに、シャアが逃れられないと悟って天を仰ぐ。どうやら、平穏な日々はここまでのようだ。まぁ、アムロに連れ去られた時点で既に平穏とは決別していたのかもしれないが。
溜息をつき、シャアはゆっくりと椅子の背に背中を預けながら観念したように言う。
「……私の剣は、古い知り合いの所に預けてある」
国王に没収と言われたので、飾り物にされるくらいならと古い知り合いに譲り渡したのだ、というシャアに、カミーユがそれじゃ話は簡単じゃないですか、と言う。
「じゃ、取りに行きましょうよ」
「簡単に言ってくれるな、カミーユ」
シャアが苦笑した。その後で、額に落ちかかってくる金糸の髪を多少煩げに掻き上げながら続ける。
「その古い知り合いだが、ちょっと厄介な立場でな。…東の国境近くに、ロンド・ベルという自治領があるのは知っているか」
その言葉に、カミーユが知っています、とすかさず答えた。
「その向こうに連邦の領域が広がっていますからね。僕と大尉がティターンズと戦った後に出来たんですよね?ジュドーはあの辺の出身だって言ってなかったか?」
「俺の故郷はすげー名もないど田舎だけど、まぁ東かなぁ…」
「懐かしい話だな。…で、連邦と同盟を結んでいるロンド・ベルとこのジオン公国はまぁいわば敵同士だ」
淡々と続けるシャアに、カミーユがそうですねぇ、と呟く。最も、カミーユ自身は何処かの国に仕官しているわけではないのだが。
「ロンド・ベルの今の領主の名前は知っているか、カミーユ?」
「…あ、いや俺もこの間意識が回復したところなので…」
「お前も良く知っている、ブライトだよ」
その言葉に、カミーユより先にシャアの横で黙って話を聞いていたアムロが反応する。
「ブライトって、『刻の賢者ブライト・ノア』?」
「知っているのか、アムロ」
シャアが驚いた様子で傍らの青年を振り返った。アムロが腕組みをする。
「うーん、知っているって言うか、俺まだほんの雛の時に、一時あの人に育てられた事があるんだ。俺の「アムロ」っていう名前をくれたのもあの人だし」
その言葉に、ブライトは一体幾つなんだ、と呟きながらシャアがぽん、とアムロの頭を撫でた。
「それは…また因縁だな。しかし、私と会ったときブライトはそんなことは一言も言わなかったぞ?」
「師匠、あの時は自分はシャア・アズナブルじゃなくてクワトロ・バジーナだって言い通していたじゃないですか」
すかさずツッコミを入れながら、カミーユがじゃあ、師匠の【サザビー】と【百式】はブライトさんが持っているんですか、と聞いた。シャアが大きく頷く。
「ああ、そういうことだ。そして、だねカミーユ。君達ならともかく、私をこの国がそう簡単に外に出してくれると思うかい?しかも、ロンド・ベルのある東の国境と、ハマーンの居るネオ・ジオンはこのジオン公国を挟んで丁度対角線上にある。公国の外周を回ろうにも、ア・バオア・クーやソロモンなど、沢山の砦や要塞を抱えているし、なにせジュドー君の妹が攫われている、急ぐに越したことはない」
「関所破りですか?」
「もしくはそれに準ずる事をするしかないだろう…私が入って足手まといでないのならね」
シャアの言葉に、とんでもない、とカミーユが首を振った。
「この際、多少遠回りしてもパーティに神官が一人居る居ないで大きく違いますよ。僕もジュドーも回復呪文は使えないし、少なくともハマーンに対する牽制になりますから、師匠は」
言った後で、ジュドーに視線を送る。
「お前は?」
「俺は、リィナが助かればなんでも。…カミーユさんが最善だと思うならそれに従うよ」
少年があっさり頷いたので、カミーユがにこりと破顔した。
「じゃあ、決まりだな。まずは師匠の剣をブライトさんの所に取りに行って、そうしてその後西の国を目指す」
言った後、大きく頷くシャアとジュドーの前でカミーユの視線はゆっくりとアムロに向いた。
「で、師匠」
カミーユとジュドーの視線がシャアとアムロを交互に見る。シャアがどことなく落ち着かない表情になった。
「…なんだね」
「…ええと、シャアのオッサン」
「その呼び方には承伏しかねる」
「じゃ、シャア」
「あ、それ呼んでいいの俺だけ」
「なんだよ注文多いなぁ。んー、じゃ、クワトロ師匠?」
「いつから私は君の師匠にもなったのかね…まぁいいが」
「あんた、その…竜、連れてくの?」
「……」
皆の視線が一斉にシャアの方を向いた。アムロがきらきらした期待に満ちた目でシャアの方を見上げている。
「アムロ、君、領土を離れて大丈夫なのか」
「別に。竜はどこでも棲めるし。問題ない」
「……しかし、君はまだ子供」
「そこら辺の魔法使いよりずっと役には立つと思うけど」
その言葉に、カミーユとジュドーは深く頷いた。
竜の魔力は計り知れないほど強大だ。しかも、目の前にいるのは「竜王」とまで謳われたアムロ・レイである。まだ子供だけど。
期待するような視線をカミーユとジュドーにまで向けられ、シャアは逃れられない運命を悟った。観念して、アムロに手を差し出す。
「分かった、一緒に来るかい?」
「行く。ブライトにも会いたいし」
「むやみやたらに竜の姿にならないと約束できるか?」
「そしたらずっと一緒に居てくれる?」
その問いには、すかさずシャア以外の二人が答える。
「約束します、アムロさん」
「宿屋の部屋分けもクワトロ師匠と一緒でいいぜ、なんならベッドも!…やったー、竜王様ゲットだぜ!」
東の国に住む怪物、ピカチュウには負けないからな、とはしゃぐ弟子他一名に、シャアが舌打ちしたいような表情を作る。
「君達!」
「だって、師匠神官じゃないですか。頑張って竜王様にお仕えしてご奉仕してください」
「そうそう、人身御供の家系ってね」
「…覚えておきたまえ」
どことなく、どんどん狭められる包囲網の輪の中に落ち込みつつある自分を感じて溜息をつくシャア・アズナブルであった。
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+++To be Continued.
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