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※世界はSRW設定です。
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"Bellum se ipsum alet"
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+VII+
キャスバル効果によって場が和みかけたその時。
オール・ハンズ・ポジションのレッドアラートが艦橋に鳴り響いた。
鳴り響く警報に流石に全員が色めき立つ。
「敵襲?!」
「奇襲か!!」
慌てて索敵をしていたオペレーターが焦ったように絶叫する。
「敵機影、急に出現しました!…背後もです、取り囲まれています!!」
「我々を待ちかまえていたようです…!」
ブライトが慌ててモニターに駆け寄り、マップ上に示された敵の光点の数に呻き声を上げた。
「此処まで多いか…!!」
「まさか…昨日の連邦からの通信って。…このことを?」
エマ中尉が息を飲む。
どうやら彼等は、敵が罠を張るそのただ中に飛び込んでしまったようだった。
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「艦長、どうします?!」
見上げられ、咄嗟にブライトは言葉に詰まった。ホワイトベースでの戦闘なら経験はあるのだが…。
生憎と彼は今、この艦自体の性能についての知識すら心許ない。
「敵はなんだ?」
「モビルスーツとモビルドール…使徒は居ないようですが…。」
オペレーターが切り替えながら更に幾つかの名前を挙げる。どれもブライトには聞き覚えのない単語ばかりだ。
―――そう思った瞬間、微かに胃が痛んだ。
「…そうだな…。」
頭を巡らせるが、良い方策は浮かばない。焦ると良くないとは思いながらも思考が空転するのを止められない。
困惑してちらりとアムロを見上げたが、彼も険しい目でマップを睨んだまま一言も発しない。どうやら真剣に対応策を考えては居るらしいが…。
「…兎に角、全速力で逃げた方がいいんじゃないのか?!」
コウがそう提案し、そうでしょう艦長、とブライトの方を振り向いた。そのコウの意見を不服とガトーが噛み付く。
「なんだと?!コウ・ウラキ、貴様こんな所で敵に背後を見せる気か?!」
頭ごなしに怒鳴りつけられ、コウがカッとしながらガトーを振り返った。
「うるさい、そりゃ俺だって逃げたくなんかないよ!!でもな、艦長が十九才の時のままなんだぞ?!記憶無いんだぞ?!アムロさんも、クワトロ大尉もっ!!こんなんで戦闘ができるかよっ!!」
ガトーはそれも一理ある、とは思ったが、此処で動揺しては隊全体の今後の指揮にも影響する、と眉を顰めた。
「だからといって浮き足立つのは良くない!」
「うるさい、ガトー少佐、作戦も無しに俺達だって出撃できないだろ?!」
承伏しかねる、とガトーが眉間に皺を刻む。
「馬鹿にするな、援護ぐらいなら出来るではないか!!」
「こんな突然の戦闘で、それで落とされたらそれこそ馬鹿らしいじゃないか!!」
一触即発。…艦橋の人間はコウの意見もガトーの意見も一理あるだけに旗色を決めかねて見守っている。
「揉めている場合じゃないだろう、お前達!…そうだな、俺と何人かが…。」
そこでやっとアムロが口を開いた。どうやら出撃して敵数を減らしつつ突破する事にでも決めたらしい。
「アムロ大尉、私が行こう。」
一歩でたガトーを、コウが制する。
「ガトー、あんた頭に血が上ってるんじゃないのか?!俺が行く。」
「コウ・ウラキ、貴様私を愚弄…!!」
またしても掴み合い寸前のコウとガトーに、流石に横合いで聞いていたアムロが割って入ろうかとしたとき。
「黙らないかっ!!!」
よく通る高い声の一喝にその場が水を打ったように静かになる。
キャスバルはまずガトーの方を向き直って一喝する。
「静まれ!貴様はジオンの軍人だろう!己の存在にプライドを持ちたまえ!」
続いて鋭い視線をロンド・ベル隊全員に送った。
「高々一個小隊や二個小隊のモビルスーツで浮き足立つのではない!!それでも貴様達は宇宙に冠する精鋭部隊か!!」
言い放ち様ざっと艦橋に近寄り、今は無人の艦長席の脇に毅然と立つ、幼い少年。
しかし、その際だった存在感に全員の視線が集中した。
キャスバルの背中から立ち上るオーラは既にいっぱしの指導者のものだ。
てきぱきとキャスバルがクルー全員に指示を出す。
「艦隊戦の心得の有るものは居るか。この艦一隻の陽動ではものの役にも立つまい。オペレーター、この艦全ての戦力と戦闘人員の表をピックアップできるか?」
その問いに、艦橋に向かって直ぐに返事が返る。
「今やっています!」
「一分で出したまえ!…手の空いたものは対空砲火準備、それ以外は各機体に乗り込んで待機!整備班、ぼさっとするな!可及的速やかにスクランブルに対応できる持ち場に移動、指示はブリッジから直接下す!」
そこで息を吸い、蒼の双眸に強い炎を揺らめかせる。
「諸君らの活躍に期待している。…行動開始!!」
キャスバルの言葉に全員が弾かれたように動き出す。
途中、モビルスーツデッキでアムロが自分の機体が分からないで混乱するというトラブルは有ったものの、暫く後には全員持ち場に着き、順に発進していく。
その間の敵の攻撃はなんとか機体からの対空砲火で凌いだ。
ブリッジにデッキからの声が次々に入ってくる。
『アムロ、νガンダム行きます!!』
『カミーユ、Zガンダム出ます!!』
『ジュドー・アーシタ、ZZガンダム行くぜ!!』
艦橋のオペレーターの側に立ち、次々にモビルスーツとパイロットの基礎データ画面を切り替えて目を通しながらキャスバルが更に個別の細かい指示を与える。
「モビルスーツを先行させろ!…スーパーロボットは出せるか?!」
ブリッジから整備班の声が聞こえた。
『今やっています!!モビルスーツは大方の機体が発進を終えました!!』
報告を聞き、キャスバルが頷いて各モビルスーツへの回線を開く。
「いいか、モビルスーツのパイロットの諸君!君達の仕事は陽動と敵の攪乱だ!」
フィールドのマップに目を走らせ、なぞりながら指揮を取る。
「ウラキ少尉、君はガトー少佐と右翼へ展開したまえ!君の機体は空中戦が得意らしいな?少佐に援護を頼みつつカミーユ君のZと先行したまえ!アムロ大尉、君とジュドー君でそれを受けて、とにかく攻撃力の高いスーパーロボット達が通る路を作るんだ!」
『やってみます!』
コウの元気のいい声がぱしりと返ってくる。
いい調子だ、とアムロと共にムードメーカの一端を担っているコウの様子に、艦橋の志気も満潮に近づく。
キャスバルは潮の満ち時を見誤らなかった。
「スーパーロボットが追いついたらモビルスーツは帰投して構わない。無茶は言わない、生きて返ってこい、全員、だ!いいか、突出しようとするな、深追いも禁止だ。各パートナーから離れるな!いいか、これは遭遇戦だ。戦略的な戦いじゃない!完全勝利の必要はないんだ!!兎に角突破口を作れ!その後は全機帰投!!全速力でこの空域から離脱する!乗り遅れるな!!」
咄嗟にコウとカミーユ、アムロとジュドーで組ませるのは本能か何かか、とオペレーターが感心する。キャスバルが選んだペアは機体同志の相性バランスが良いのだ。
先程の事態に続いて、例え薬を飲んでいようが年端が行かなかろうが、指揮官クラスの中で火急の事態への対応力の最も優れているのが誰だったかをまざまざと見せつけられた瞬間だった。
最後に私を信じろ、とキャスバルが全員に向かって言い放つ。
「君達には耳が痛い言葉かもしれないが、…ジオンが連邦に快勝したのは伊達ではない!!」
説得力、という言葉が固まりになって具現した瞬間であった。
先の大戦でキャスバル自身が戦場に居た筈はないのだが、それでも彼自身が指揮を取っていたかのような安心感。
呆気にとられて見守っていたブライトに向かって今回は留守番を言いつけられたハサウェイがねぇ父さん、と囁く。
「完璧、ですよね…キャスバル王子。」
この息子の言葉に、若すぎる父親はなかなかに複雑な表情で頷いた。
「うん…。」
指揮官代わって貰おうかな、とちょっぴり思ってしまう現時点若干十九才のブライト・ノアであった。
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+++To be Continued.
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