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※世界はSRW設定です。
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"deus ex machina"
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+VI+
二人組による言い訳合戦が始まった。
「いやあの、ジュドーと二人で資料室を漁っていて…。」
「そうしたらカミーユさんが古い映画の記憶メディアを見つけて…。」
「アナログ過ぎてなかなか見られなかったんですけど、この間ジュドーが拾ってきたジャンクの映像機器でやっと再生できて…。」
「見てみたら結構面白くて、で、映画に出てきた時間跳躍の薬を作ってみようって、カミーユさんが。」
「で、出来たらジュドーが試してみたいって言い出したんですけど…。しかも子供が若返っても仕方がないから或る程度年喰った人にしようって。」
「カミーユさんが、艦長達に一服盛ろうっていうから…。昨日の皆さんのコーヒーの中に、ちょっとずつ。」
「あ、俺ばっかりのせいにすんなよ!ノリノリだったじゃないか、ジュドーも!!」
二人の掛け合い漫才を聞いていて頭痛を覚えだしたアムロが深々と溜息をついた。その後できっと顔を上げて問いつめる。
「大体なんで薬で時空が超えられるんだよ!!」
「アムロさん、知らないんですか?ニュータイプは刻を超えるんです。」
思わずアムロはお前じゃあるまいしと思いきり叫んでいた。
「超えてたまるかぁっ!!」
ちっちっち、とカミーユが指を振る。
「化学実験室でラベンダーの香りがしたら時空を超えるのはお約束じゃないですか!!」
その台詞に、カミーユとジュドーが見ていた映画の内容に心当たりが付いたアムロががっくりと項垂れる。
「んな遙か昔の角川映画のネタなんか誰も覚えてないって……!!」
「ちなみにキーワードは『桃栗三年柿八年柚は九年で〜♪』の歌で記憶が繋がるんです。」
アムロが深々と溜息をついた。旧地球世紀のジュブナイル映画を見ただけで薬を調合するというのはある意味物凄く異能なのかもしれないが。
しかし、それはそれこれはこれ。
「お前は芳山クンか、カミーユ!!」
「じゃあアムロさんは深町君ですね!!」
「そう…俺は西暦2660年の未来から、時間跳躍の薬品開発のために絶滅した植物を採取するために地球に来たんだ…って違うだろ!」
カミーユが抜群の演技力で瞳を潤ませる。
「だって…もう時間がないわ…もう、どうして時間は過ぎていくの?」
「過ぎていくものじゃない…時間はやって来るもんなんだ」
視線が合う。
「深町君!」
「芳山クン!!」
時を超えて巡り会った二人はそこでひしっと抱き合おうとして…
「…やめないかそこの80年代映画アイドルオタク二人組!!」
大林監督の「時をかける少女」を見てないとわからんネタはやめんか!!とブライトが二人を引き離す。
その後で我に返ったらしいアムロをぎろりと睨んだ。
「アムロ、お前には資料室の使い方について後で別口で話がある。」
そのブライトの言葉にちょっと待ったー!、とアムロが声を挙げる。
「…っていうかなんで俺が犯人だって疑ってるのさ?!」
「記憶があろうとなかろうとそんな妙な映画の粗筋に詳しい時点でもうクロだ!」
相当ぐさっと来たらしいアムロが胸を押さえた。
「ああっ、痛い所突くね、ブライト…。」
はぁ、とそんなエースパイロットの様子に溜息をつきながら、アムロには任せておけないとブライトが話を引き取った。
「じゃ、あれか。タイムリープの能力が一時的に出ているということなのか。」
「ええ、多分そうだと思いますよ。…時代はまちまちみたいですが。ただ“同一時間に二重存在は不可能”なので、基本的には過去と未来の自分が同じ場所で顔を合わせそうになると時間的な軸で上位のハイアラキーにある未来の自分が質量で優先されて過去の自分が消滅するんですが、どうも行った先の自分が来てるみたいですね。」
滔々とカミーユが述べる。
「じゃあ…今頃ホワイトベースにはこの時間の『俺』が載っているのか?」
「あー、大丈夫だよ。ブライトなら十四年経つが経つまいがそう変わんないから違和感ないよきっと。」
「そういう問題じゃない!!」
飄々といい加減な意見を述べるアムロに噛み付きながら、ああ、今頃この時代の俺は何処に居るんだか、とブライトが呟く。
カミーユがあっけらかんと答えた。
「昨日今日明日のどこに行くかのコントロールが出来てタイムリープ出来ているんならいいんですけどね。…まぁ、薬の効果が切れたらイヤでも元の時代に戻されますから大丈夫ですよ!!」
明るいカミーユの口調にうっかり煙に巻かれそうになっていたアムロとブライトは、そこいらへんで問題は其処じゃない、ということをやっと思い出したらしい。
「そんなことよりカミーユ君とやら、覚悟は出来ているんだろうな?!」
「あ、そうだ、修正…!!」
再び色めき立つアムロとブライトの背後から、毅然とした声が掛かった。
「止めたまえ、いい大人が二人して。」
その声に、アムロとブライトは口々に文句を言いながら憤然として振り返る。
「ちょ、シャア…!お前も怒っていいんだぞ!」
「そうだ、大佐!」
アムロとブライトの顔を苦笑しながら交互に眺め、シャアとか大佐とは誰のことだと呆れ果てたように先程から繰り広げられるファルスに見入っていた少年がゆっくりと歩いてカミーユとの間に入る。
「…今はそんな責任問題を追求しても仕方がないだろう?我々に出来ることは与えられた状況でどうするか、ということだけだ。違うかね?」
キャスバルの正論極まりない言葉にアムロとブライトが顔を見合わせる。
「それは…。」
「まぁ…。」
そのままゆっくりと歩いて正面に回り込み、キャスバルが深い青の瞳でカミーユを見上げた。カミーユもキャスバルを見下ろす。
アイドルも俳優も赤面するほどの美少年二人のツーショットに女性陣の視線が釘付けになる。
そう怒った様子も何もなく、キャスバルがゆったりと口を開いた。
「カミーユ・ビダン君と言ったか。」
「あ、…はい。」
くすりと微笑み、キャスバルが青い髪の少年の顔を見上げる。大尉の面影あんまりないなぁ、とカミーユはそんな風に感じた。
「トラブルの一つや二つ、若い内なら誰でも引き起こすさ。…なぁ?それよりも引き起こした事態をどうするか、に君の人間としての真価が掛かっている。ベストを尽くすとはそういうことだ。薬が自然に切れるというのならそれはそれで構わないが、副作用や効果を短縮させる方法がないかどうかを調べてくれ。今は特に不自由はしていないが、私だって副作用だけは怖い。…艦長もアムロ大尉も君や皆の大事な上官だろう?」
咎めることもない穏やかな言葉に、毒気を抜かれたようにカミーユが素直に頷く。
「あ、はい…分かりました。」
キャスバルが頷いて、続けて聞く。
「…確認するが、此処にいる私達にはタイムリープの能力はないんだな?」
つり込まれたように、クワトロ大尉相手では出ないような丁寧な言葉遣いでカミーユが喋る。
「あ、ああ、はい。あくまで時間を航行しているのは本体の方です。」
「よし。…じゃあ、仕方もないな。この話は終わりだ。」
微笑み、キャスバルはカミーユ君も反省しているようだから、と有無を言わさずブライトとアムロを鎮める。
一部始終を見ていたジュドーがぽつっと漏らした。
「何かよくわかんないけど…キャスバル王子ってすっげぇ。」
現時点のラー・カイラムの中で、誰が一番精神的に大人であるか若干十歳程度の少年が全員に知らしめた瞬間であった。
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+++To be Continued.
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