月に吠え太陽と燃え
-Dear, My Fate.-

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 アムロ・レイの話が聞きたい?

 私の言葉で、私の口で、彼を語って欲しいというのかい?

…まぁ、構わないが。いいのかね。大して面白い話じゃないぞ。男が男の事を語るというのは。

 止したまえ。『運命』などという言葉は趣味じゃない。

 せめて『必然』と言ってくれないか。選んだのは私だよ。そこだけは譲れないな。



*:*:*:*
抱き合う度にほら
また君増えて行く
君が想うよりも僕は君が好き
*:*:*:*




 アムロとロンド・ベルに戻ってきてもう数カ月が過ぎた。

 途中派手に大喧嘩をやらかしたり連邦に正体がばれそうになってヒヤヒヤしたり、危うくネオ・ジオンに拉致されそうになったり様々なトラブルをくぐり抜けてきたが。

 今はもう随分日常生活も落ち着いている。
 戦況ははかばかしいとは言えないが、ロンド・ベルのメンバーがいれば大丈夫だろう。
 絶対に敵に好き勝手はさせないさ。私達が居る限り。

 そうそう、アムロともその大喧嘩が結果として良かったらしくてね。以前より仲良く成れた気がするよ。

 色んな意味でね。

 もっとも最近、宇宙の平和だとか正義の味方だとか一時の私みたいなことを言い出すからちょっと不安なのだけれど、本気なのだろうか?

 まぁ、アムロが選んだ道ならもれなく私は着いていくしかないのだけれど。

 うん、私にはもうアムロしか居ないからね。

 運命も、人生ですらも。

 その意味自体を彼に委ねてしまったから、なぁ。


+*:*:*+



 後悔?

 いや、しないね。早まったかなとは時々思うけれども。流石に。

 うん…アムロが新作のゲームとかガンダムいじりとかプログラミングにハマって生活不適応者状態の時は特にね。
 なんであんなにオンオフの切り替えが酷いのかと思うが。
 オフィシャルの場にいるという自覚があるときはそりゃぁ凛として居るんだが。
 雰囲気といい、持っているオーラといい…アムロには純白が似合うな、やはり。
 旧地球連邦のイングランドという国の国旗のような、真っ白のノーマルスーツに赤のラインが入ったνガンダムのパイロットスーツ姿が一番いいかな。
 イングランドの国旗は聖人の旗なのだよ。聖ジョージと言ってね。龍退治で知られている。倒した龍から深紅の薔薇が咲き誇ったという故事があって…彼に捧げられる花は深紅の薔薇の花なのだが。
 いや、話が逸れたが…聖人の名前と悪を倒す勇者というメタファーがね?
 彼自身のストイックな雰囲気と良く合っている。あの姿でデッキを歩いていると、皆が振り返っていくんだよ。

 うーん、見た目の華やかさとは違う。そちらとはむしろ無縁だな。
 飾らなくても視線が追うんだな。…集約される。
 人を惹き付ける『華』があるんだよ、アムロという存在にはね。

…内緒、なのだがね。
 むしろ、私はアムロこそ赤い色が似合うと思っているのだが。明らかに暖色系の方が似合うと思わないか?
 じっと見ていたまえ、無意識なんだろうけれど服とか小物でもね、買い物の時…青と赤と二つ並んでいるとちょっと考えて赤い方を手に取るんだよ。

 少し嬉しいかな。赤は私の好きな色だから。

 いや。本人は全くそんなことは考えていないだろうけれどね。
 言わないがね。言うと怒るからね、アムロは。
『二度と赤いものは買わない!』
 なんて宣言されそうだし。それは流石に淋しいので、私だけの秘密にしているのだが。
 私自身は金髪だろう?…本来は青色の方が似合うのだよ。好きな色と似合う色というのは違うからね。

 パーソナルカラーが逆というのも私達らしくて良いと思うよ。


+*:*:*+



 しかしだね。
 しかし、だよ。

 つくづく思うのだが、アムロ・レイというのは私以上に外面がいい人間だと思わないか?

 こんな風に一緒にいるようになって、こう、カミーユやコウ達若手のパイロットに慕われながら人の輪の中心で温厚に微笑んでいる勤務中のアムロを見ると正直言ってちょっと目眩がするのだが。
 すれ違い様にだね、アストナージ辺りに爽やかに挨拶しているのを見ていると複雑な気分だよ。

 嫉妬?私が?
…あの色気もクソも華も何もない兄貴ノリの超体育会系のガチンコ集団にかね……。
 そもそも「慕う」の意味が全然違うだろう。いや、確かに私とは合わないかもしれないが。
 其処まで自分に自信がないわけではないぞ、私も。

 そう、この間ジュドー達と一緒にスポーツ関係の施設に遊びに行ったらしいな。サッカーとかバスケットボールとか水泳とか一日力一杯遊んできた、と後でコウから嬉しげに聞かされたのだが。
…よっぽど言ってやろうかと思ったのだがね。私と二人の時は怪しげな部品問屋街のパーツジャンク屋巡り以外連れて行かれた事がないぞ、とね。
 ちょっとはガトー少佐辺りに鍛えて貰うといいんだろう。剣道とか柔道とか。あのカミーユでさえ空手の有段者だというのに。

 私?私は当然できるよ、士官学校出身だから。自慢ではないが、実技も学力も両方主席で出ているからね。フェンシングとか格闘技とか、全て人並み以上に一通り習得しているよ。元々ダイクン家の跡継ぎとして幼い頃から躾られていたしね。
 いや、だから私が誘ってもアムロは出てこないのだよ。「タルい」とか「面倒くさい」とか「そーゆー爽やかなの俺向いてない、汗流したいなら一人で流せ。」とか言いたい放題言われてね。

 案の定あの日も帰ってきたら早々にベッドに轟沈していたよ。夕食の後筋肉痛だと全身マッサージさせられたしね。
 こっちは仕事帰りだというのに。大体パイロットで軍人の癖に体力がなさ過ぎるのだよ、アムロは。
 全く、超インドア派の癖に見栄を張るから…。
 ブライト艦長の気持ちがつくづく分かる。ああ、分かるようになったよ。できるなら分かりたくなぞなかったが。

 アレに比べたら私なぞ可愛らしいものだと思うのだがなぁ…あそこまで表裏はないぞ、私に。

 アムロ・レイ崇拝者の一団にあの休日仕様のアムロを一度見せてやりたいもんだ。
 着替えはしないわ飯は食わないわ散らかしたらそのまんまだわその癖縄張りを触ると怒るんだよ。せめて無精髭は剃ってくれ!と泣きたくなるんだが。
 二十台も終わろうという男の首根っこ掴んで無理矢理風呂場に連行して風呂桶に放り込んで挙げ句体を洗ってシャンプーをして髪の毛を乾かす羽目になるとは思わなかったよ、この年になって。
 猫か犬か、アレは。全力で抵抗するし水はかけるしね。生傷が絶えないよ。顔は止めろ顔は、といつも言うんだが。
 言いたくもないが私の体は青痣と引っ掻き傷だらけだよ。勲章の様さ。
 色っぽい傷ならむしろ大歓迎なんだが…。本当のことを言うのも情けないし。
 それを見られてまたカミーユ辺りに妙な噂を流されたりしてね。
 泣きたいのはこっちだよ、全く。甘えてくれているのは良いのだが、物事には限度というものがあるだろう?!

…え?惚気ているようにしか聞こえないって?

 うん、実は今自分でもそう思っていた所だよ。下手なことは言えないな。


+*:*:*+



 アムロと出会って。

 不思議なのだが、全てをなくしたと言われるんだ、私は何もなくしては居ないのに。
 アムロなどは内心トラウマにしているようだがね。可笑しくなるのだが。人をあんな強引に振り回しておいて、今更…とは思わないか?
 受け取り側の考え方や感じ方の違いなのだろうけれども。

 いや、強引だろう。私を振り回しているのはアムロの方だと思うね。
 アムロは違うと言い張るかもしれないが、傍目で見ても主導権は明らかだろう?…違うかい?
 もし私が自信満々に見えるとしたら、それはアムロを選んで共に行く覚悟を決めているからだろう。
 私の行動の基本を決めるのはアムロだ。…アムロだけなのだよ。

 それだけで良い。
 他に迷いは、もうない。

 うん?…ああ。
 そうだね、時々可笑しくなることもある。こんなにシンプルな人間だったのだとね。
 まぁ、元々ちっとも複雑じゃないが。

 アムロは諦めないね。…其処が気に入っている。
 無気力に見えることもあるし熱くはないけれどね。彼という存在の芯の部分の熱と固さが私を引き付けて已まないのだよ。

 何処にも居ないし何にも代えられない存在だよ、私にとっては。
 他の人間のことは知らない。

 いつアムロを選んだか?…さぁ、忘れてしまったな。なんにしてももうずっと昔に決めたことだ。

 元々、何かを手に入れるためには何かを諦めざるを得ないと言うことを私は知っている。
 守りたいものが大切であればあるほど、それ以外のものはどんなに好きでも切り捨てるべきだと私は思う。
 対価とか代償というのはそういう類のものだよ。

 何もかも捧げても。…いや、全てが其処に収束する。

 全てを手に入れられるほど欲深いわけでもないし、其程の器量もない。

 ただ。


 アムロと二人、死ぬまで幸せだといいとそれだけ、思っている。


 うん?


 ああ、勿論一人じゃない、二人で、だよ。


 これでも、私は『赤い彗星』だからね。
 その位の気概はまだ、持っているつもりだが。

 …煩いって?まぁ、そうつれないことを言わないでくれ。

 申し訳ないが少しくらい惚気させてくれないか?
 求め続けていたものを漸くに手に入れた所なのだから。

 大声で大っぴらに言うとまたアムロが照れて怒り出すからね。
 焼き餅妬きだしね、最近分かったのだけれど。
 君とこんな話をしたと知ったらまたヘソを盛大に曲げるだろう。
 怒るとしつこいんだよ。いつまでも覚えているしね。
 身勝手で気まぐれで頑固でそのくせ変なところずぼらでまぁどうしようもない男だとは思うが、そこが良いんだから私もいい加減どうしようもない人間なんだろう。

 他人の欠点も短所も愛せないようじゃ、まずアムロとは居られないぞ、忠告しておくが。
 ま、どうしようもない同士仲良くやるさ。これからも、ずっと先も。


 だから。

 君と私だけの内緒の話だよ、これは。
 アムロには黙っていて欲しいな。
 指を出して。…約束できるかい?





 私が今、とても幸せなのだということは、ね。




*:*:*:*
抱き合う度にほら
欲張りになって行く
君が想うよりも僕は君が好き
*:*:*:*







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+++END.

 

 

連載完結記念、特別編。テーマ曲は『LOVE SONG』チャゲアスだ。(単に聞いてた)でもタイトルはhitomi(笑)
殆ど独走状態でえらい人気だったシャア・ダイクン総帥の惚気倒し独り言です。
アムロ視点ばっかりだったので、たまには思う丈を後書き代わりに存分に語っていただきました。
いや、一貫して言っていることは同じなんですけど、本編でも。
なんていうか恥ずかしい人です、相変わらず(大爆笑)
ちなみに。
「アムロにだけは黙っていて。」ということは。
「それ以外の人間には大っぴらに言って回れよ」という意味です。…よ…ね?

え?違う?!(笑)

ネオ・ジオンによるシャア元総帥拉致未遂事件はそのうち書きます(笑)←シリーズ終わったって言っただろう?!

ちなみに、金髪に青が似合うのは私以前にフランス人にさんざ言われたのです(笑)
てゆーか。基本的に青は金髪しか似合わないと言いきられましたわ(爆)東洋人はもっとこう、深い緑とかそっち系に行けと(笑)。

 

+++ back +++