お金がない!
-Hello Darling, Are You Working?-

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真面目に働きまともに収めりゃ手元に残らぬ自由主義社会
政治マフィアとやくざ坊主の脱税や免税にゃ腹が立つ
闇にて潤う共産世界稼げど家なき貧乏ブルース
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+後編+



『アムロ、νガンダム、行きます!!』

 声と共に純白の片羽根のエース機が飛び出してゆく。本日も敵の数は多く、エースの登場で艦橋は僅かに湧いた。

「やっぱり、アムロ大尉とνガンダムはかっこいいですよねぇ。」

 オペレーターの一人がどこかうっとりした様に言う。その発言を聞いていた、ブライトの横に控えたクワトロが満足そうに呟いた。

「当然だろう、ガンダムなのだから。しかも、パイロットはアムロだ。…なぁ、ブライト艦長。」
「そう…ですね。」

 ブライトの返事はどことなく生彩を欠いている。二人の眼前のスクリーンでは、今まさに華麗なモビルスーツ戦が始まろうとしていた。アムロの操るνガンダムの背中に装備されたフィン・ファンネルが広がろうとする…。

 その、晒された純白の片羽根に見慣れない模様を見つけ、オペレーターは目を擦った。

「あ、あれ…?」

 確か、アムロ大尉のνのパーソナルマークは肩に入っていて、あんな所には無かったはず…。

 その時、華麗な動きで敵を迎撃したアムロの機体が大写しになる。そこには、大きく燦然と輝く『アナハイム・エレクトロニクス』の社名とロゴ。更によく見ると、華麗に舞うファンネルのひとつひとつにも、νガンダム本体の腕や足にも、基盤メーカーや部品業者の社名がみっしり書き込まれている。思わず、オペレーターはブリッジを振り返った。

「あ、あの、艦長。」
「なんだ?」
「差し出がましいことを聞くようですが、あの、アムロ大尉のνガンダムのペイントは…?」

 その質問には、苦虫を噛み潰したような艦長の替わりに、クワトロが答える。

「ああ、見ての通りの協賛各社のロゴマークだが?」
「…協賛?」

 オペレーターが不審の声を上げる前で、アムロがまた秀逸な撃墜劇を見せる。クワトロが彼にしては珍しく、行儀悪くひゅう、と口笛を鳴らした。

「これでアムロの奴、この先一年間νガンダムの無償整備は固いぞ。」
「そうですかねぇ…。」
 眉間の皺を揉みほぐしながらぼそぼそと呟くブライトの肩を、あなたも共犯だ、とクワトロが叩く。

「協賛各社から広告を募って資金調達、というのはなかなか秀逸なアイディアだっただろう?」
「…それは…認めますが。」

 生真面目なブライトは矢張り歯切れが悪い。

「大人気だったじゃないか。アムロのνガンダム。」
「…まさか、あんなに希望があるなんて…。」
 ブライトの言葉に、クワトロが肩をすくめる。

「ブライト、君達はアムロの人気を過小評価しすぎだよ。一年戦争の英雄、滅多に人前に出てこないミステリアスなアムロ・レイ大尉、こんな時に使わずに何時使う?」
「いや、それはそうですが…。」
「ブライト、なにを躊躇う?ロンド・ベルのエース機と言えば、宇宙最強の広告塔だろうに。」
「それは分かっているんですけれどもね…。」
 更にモビルスーツだけではない、中身のパイロットも同時に売り込むつもりだよ、とクワトロが息巻く。

「任せてくれたまえ、艦長。うちにはアムロもいる、カミーユもいる、デュオもいる、ロランもいる、コウもガトーもそれこそやんちゃな弟タイプから頼りになる兄貴タイプ、エキゾチックな少年から正統派美少年まで選り取りみどり赤札大放出だ。◇ャニー○にもイ□ロー●ャブにも負けんよ。」
「いや…それは…。」
「艦長、宇宙世紀のメ●ー・キ△ガワを目指すかね?」
「……いえ、結構です。」

 力無く呟きながら、ミライ、チェーミン、お父さんは段々君達に向けて顔向けができなくなってしまいそうだよ、と。

 虚ろな思考の元で考える、中間管理職隊長ブライト・ノアであった。

 しかし余談だがこの一週間後、彼は地球の自宅の愛娘から『お父さん!カミーユ様のサイン送って貰える?!』という通信を貰っておいおい、あの修正小僧が『様』かよ、様!!と一人艦長室で諸行無常を噛みしめる羽目になるのであった。


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 そして、一ヶ月が過ぎた。

 出撃チームのモビルスーツをモニターで見たブライトは呆然と呟く。

「ジュドーのZZ、まんま耳なし法一じゃないか…。」

 そこには、絢爛たる戦う広告塔の攻防戦が繰り広げられていた。

『よーっし、行くぞー!!』

 ジュドーのZZガンダムのハイメガ粒子砲がチャージを終えて発射される。威力も派手だが見た目も派手なジュドーらしい攻撃に、戦場に仕掛けられている小型カメラは一斉に彼の愛機の映像を捉えた。

『リィナ見てるかー?!お兄ちゃんはやったぞー!!』

 艦橋に明るい声が響き渡る。オペレーターの一人が艦長席に向かって声をかけた。
「艦長、これでジュドーのやつ、カップ麺一年分は固いですよ。」
 艦長席で肩を落とすブライトの声は低い。
「…っていうか、なんであいつは食品メーカーばっかり選んで広告を受けてるんだっ!!」
「いや、生活の足しにするんだそうで…。」
「あいつとデュオのデスサイズと、もうちょっと企業は選べと言えっ!!」
 言ってから、ああ、待てよ、とこめかみに手を当てる。

「だからといってカミーユみたいに服飾ブランドで固められても、アムロみたいにモビルスーツの部品メーカーばっかりでも、ウラキ少尉みたいにコンピューター関連企業ばかりでも、なぁ…。」

 その場に兄の戦況を見に来ていたリィナが赤い顔でぺこぺこ頭を下げる。

「ごめんなさい、ごめんなさいっ…!馬鹿な兄で…!!」

 その後ろのモニターでは、丁度背中に大きく有名武器メーカーの社名を背負ったνガンダムが流れていく。それを見ながらオペレーターの一人が呟いた。
「そういえば、アムロ大尉のνガンダム、ファンネル一つで指一本(一千万円)らしいですよ、今相場。」
「……エース機だからな…。」

 最初は消極的だったのに、この間なんか目をきらきらさせてこの所帯は俺が背負って立つから!とか言ってたしなぁ。全く、頼りになるエースだよアムロは。呟くブライトは言葉は誉めていたものの、口調は疲れ果てた人間のそれとなり果てていた。


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「お疲れさま、アムロ。今日も上々の戦果だな。」

 デッキに帰ってきたアムロを真っ先に出迎えて労うクワトロに、アムロが嬉しそうな顔を向ける。既に彼はロンド・ベルのエースパイロットだけではなく、お茶の間にまでその名前と顔の響き渡るアイドルパイロットでもある。

「どういたしまして。最近さ、気合いの入り方違うんだよね。目立って稼がないといけないし!」
「そうか、まぁ深追いはしないことだな。」
 にっこり笑って言われ、自分が提唱した案とは言えクワトロが苦笑する。その彼に向かい、アムロがそういえば、と切り出した。

「ところでさー、シャア。あなたそのど真っ赤なサザビー、ペイントしないの。」
 クワトロが明らかに後込みした顔になる。
「いや、私は…。」
「しようよ。俺、最近アナハイムにせっつかれたんだよね、サザビーに広告着けさせるように説得してくれって。」
「…君はアナハイムの営業かね?!」
 クワトロは流石に目眩を覚えた。そう言えば最近、人気モビルスーツの広告掲載価格は高騰していると聞く。アムロのことだ、ガンダムの部品代とか整備料金とかその他諸々の鼻薬を嗅がされて居るのに違いない。

「イッとこう。どうせ死の商人に身売りする因果な商売なんだからさー、お互い。知ってる?あなたのサザビー、今じゃ『最後の聖域』呼ばわりされてるんだけど、整備班に。」
 クワトロが即答する。
「だったら私は聖域のままで居るよ。」
 仮にもあれはネオ・ジオン総帥専用機でね、というクワトロにアムロが軽く膨れた。

「あ、ひどい、俺だけ傷物で汚れきった身体にしておいて、自分は純潔のままなんて…!」
「誤解を招く言い方は止めてくれないか、アムロ。」
「一緒に堕ちるところまで堕ちようぜー。ほら、俺のνとあなたのサザビー、戦場で並ぶと絵になるってこの間ディレクターに言われて…。」
「だから…。」

 お揃いお揃い、と嬉しそうに言うアムロのノーマルスーツのあちこちにもペイントが入っている。出来ればこちらは綺麗な体で居て欲しかったとちょっぴり思う、所詮男とは身勝手な生き物であった。

「あ、でも。」
「?」
「あなたはあんまり表に出ないでよ。ただでさえ人気があるのに、この上アイドルパイロットにまでなられちゃ、適わないから…。」
「アムロ…。」

 言ってくれるのは嬉しいが、どうにもそのアムロの顔の真ん中に『あなたが出てくると俺一番になれないからヤダ』と書いてある気がしてならない、イマイチ恋人を信用しきれないお年頃のクワトロ・バジーナ大尉であった。アムロがそこでぽむっと思い出したように手を打つ。

「そうそう、この路線で行くなら写真とプロモビデオも絶対売れるってカミーユが言うんだけど。軍事機密に触れなきゃいいんだろ?」
「……そうだな、最後はソロデビューしてくれたまえ…。」

 その後、ロンド・ベルのパイロット達の関連商品が増え続けたことは言うまでもない。

 そして、どさくさ紛れにνガンダムの背中を買いきって『シャアvLOVE』と書かせようとしたどこぞのネオ・ジオン総帥がアムロにぶっ飛ばされたことも言うまでもない。


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 宇宙最強部隊、ロンド・ベル。またの名前をノア・イレギュラーズ。

 すっかり開き直った現在ではどうやら、連邦の誇るアイドル部隊になりつつあるようだ。次回の某大規模同人誌即売会では、多数のアイドルパイロット萌え本が発行されるのではないかと専らの噂である。

 ちなみに、なーんだ、今と一緒じゃん、等と言ってはいけない。

 余談だが、プロダクション名は『ライズィング・サン』とかなんとか言うようだ。本当に余談だが。



 とにもかくにも、赤字資金問題は解決されたようだが、ブライト艦長の胃痛のネタは当分減りそうにもないようである。





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人は世につれ街につれ無能な生命体
誰かに操られ何かに縛られて
123
流れてく
そうだろ!?
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+++END.

 

 

あはは、何とか終わりましター(笑)
「愛の貧乏脱出大作戦inロンド・ベル」、きっと巷にはパイロットの生写真が溢れかえったに違い在りません…。
そこ、欲しいとか言わない。邪ニーズショップでは売ってますかとか聞かない!(笑)

そういえばこれもあの暑い夏の一夜のネタですよ・・・(爆笑)
ゆうさん、カオリン・・・アレでまだ食いつないでます。
曲はクワタケイスケに変わってます。

 

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