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メチャクチャな愛し方
ボロボロのシャツを着て
ピンチに笑ってる
きみに惚れ直した
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+前編+
宇宙最強部隊、ロンド・ベル。
その内実が赤貧シャアカラーの如しであることは、最早周知の事実である。
今日も責任者の面々はやり繰りに頭を抱え、資金繰りに翻弄している。
そして本日。遂にブライトの度重なる溜息に心を痛めたらしいクワトロが、彼に対してひとつの申し入れをしたのだった。
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「ブライト艦長、最早この隊の資金は、連邦からのあればかりの予算では補えんよ。第一、ここは最前線だ。費用もかかるし、それなりのものをつぎ込まないと、この戦況では機体もパイロットも保つまいよ。」
渋い表情でそう言いながら上申書の束をぽんと机の上に放り投げる。殆どが機体の状態についての整備班からの嘆願書だった。
「それは分かっていますが…戦費の拡大は選挙のイメージにダイレクトに響きますからね。縮小、縮小の一途ですよ。…ご存じでしょう。」
眉間の皺と共に告げられるブライトの言葉に、自らもネオ・ジオンという組織の長であるクワトロは苦笑した。
「…勿論、重々承知している。」
「ネオ・ジオンはあなたが一人で支えているようなものですし、潤沢な資金源をお持ちのようですが…中間管理職は辛いですよ。」
だからといってあなたから資金援助をホイホイ受けるわけにもいきませんし、と冗談めかして言う艦長に、クワトロが真剣な表情になる。
「その事だが、事態は冗談ではない所まで来ている。…ブライト艦長、もしも良ければ私に一つ策があるのだが…。」
「なんです?」
その言葉に、クワトロがちらりと話を聞いているだけだったアムロに視線を送った。
「…アムロの協力が必要な話でもあるのだがね。」
その言葉に、同席していた赤味がかった鳶色の髪の青年が目を見開く。
「俺?」
モビルスーツや新技術なら幾らでも助言できるが、遣う方ではなくて稼ぐ方となると全く役に立たない(というより発言権を失う)ロンド・ベルのエースパイロットは首を傾げた。
「…俺に出来ることなら、なんでもするけど。」
そのアムロの台詞にクワトロが念押しをする。
「本当かね。」
アムロは腕組みをしながら考えこみ、ぼそぼそとこの場には出せなかった己の要求を口にする。
エース機に搭乗しているアムロも、最近は他の破損や劣化の酷い機体を優先して騙し騙し自分のガンダムを操っていたのだ。ただでさえ被弾率が低いアムロのここしばらくの回避率は神業を超えて奇蹟の域にさえ達している…が。
「うん。…νも長いことパーツ交換してやれてないし…直したいところもプログラムの書き換えも随分我慢してるから、なぁ…。」
お金あればいいよなぁ、とアムロが呟くのを聞いて、クワトロはよし、と頷いた。
「ではアムロ…その身体を売って貰いたい。」
「うん、いいよ………って、はぁ?!」
勢いで二つ返事で引き受けかけたアムロががくんと口を開けた。次いで真っ赤になって立ち上がる。
「ば、ばばば、馬鹿野郎!!誰が身体なんて売れるかよ!!いくらうちがビンボーでも人としての尊厳は売らないぞ!!」
「アムロ、まぁ話を聞け。」
「聞く耳持たないね!!大体、俺が好きでもない相手に身体を任せるとか思っているのか?見くびるなよ!」
「いや、そうではない、君は誤解している…。」
「なにを誤解するって言うんだよ!シャア、あなた俺に「愛している」とか「好きだ」とか「君だけだ」とか言ったのは、あれは嘘だったのか?俺を騙したのか?!」
「だからっ…!!」
「酷い…男の純情を弄ぶなんて…!!」
「頼むから話を聞いてくれ、アムロ。誰が君にウリをしろと言ったのだ!」
痴話喧嘩と言うよりかなり際どい言い争いを突発的に始めてしまった紅白二大エースをブライトが呆れ果てた表情で眺める。
勿論、幸か不幸かブライトはこの手の言い争いには慣れっこで今更ツッコミを入れる気にすらならない。
心の中だけでお前達頼むからその手の話題は自室から持ち出さないようにしてくれるなと言っているだろうにとかアムロ、男の純情ってお前年幾つだ、などと思いつつ、火の粉が掛からないように僅かばかり体を後ろに遠ざけた。
そんなブライトを余所にクワトロが焦れたように言葉を紡ぐ。
「アムロ、君じゃない、君の身体のことじゃないのだよ!」
「じゃあ誰だよ?!カミーユか?ジュドーか?ウッソか?俺に飽きた?あなたは結局、若い綺麗な子が好きなんだろう。…嘘つき、俺がおじさんになっても好きだって言ってた癖に!」
「いや、だから…アムロ…。」
「ネオ・ジオンの国家予算で人間買い切るだなんて、この人でなし!!」
「違うと言っているだろうが!!」
ついにクワトロも堪忍袋の緒が切れてしまったらしい。座っていた椅子から立ち上がってアムロを怒鳴りつけ、その側に回り込む
「なんだよ、言い訳なら聞かないぞ?!」
きっと眼前のクワトロを睨み付けるアムロの肩に手を置き、クワトロはその瞳を覗き込みながら激したように言い放つ。
「言い訳などするか!誰が君自身を他の人間に渡すなどと言った?君に触れて良いのは残念かもしれないが私だけだ。他人になど指一本触れさせるものかね!!」
その言葉にアムロがさっと頬を染めた。
「…シャア。」
「全く、人の話を聞くと言うことを少しは学びたまえ、アムロ。…私がそんなに信用できないのか?」
甘く睨まれて、アムロがふいと照れたように視線を逸らす。
「あなたが悪いんだ、誤解するようなこと言うから。」
「まさか誤解されるなどと思ってもみなかったのだよ。…君が欲しいというのならなんでも贈るが、金で君を買わねばならぬほど浅い仲でもないだろう?私達は。」
クワトロが微笑む。アムロがやっと表情を和らげた。しかし照れ臭いのか、相変わらず仏頂面でぷいと顔を背ける。
「…そんな、仲を取り沙汰されるような関係だったかな?」
「おや…つれないな?」
クワトロはくすくすと笑い、子供っぽい恋人の機嫌を取るためにスクリーングラスを外してアムロの好きなその秀麗な面を晒す。
横目でちらりと視線を送ったアムロの表情が更に緩んだ。
「…なに。…そんなものでご機嫌取ろうっていうのかい?」
「生憎、私はこの顔と身体ひとつしか君に気に入られるようなものは持っていないからね。」
「…ばぁーか。」
アムロがぼそっと呟きながら、クワトロの青い瞳を見上げる。…視線を受けて、その瞳がふわりと柔らかくなったので、つられてアムロの琥珀の瞳もとろんととろけた。
「…シャア。」
「…うん?」
呟きながら、誘われるようにゆっくりとクワトロはその長身の上体を倒し…。
「だから、お前達そーゆーことは自分の部屋だけでやってくれとあれほど…」
そこで部屋の中にいる第三者の地獄の底から響くような声でハッと我に返ったクワトロとアムロがばっと体を離した。
「あ、あははは、ブライト、居たの?」
照れ隠しのように言うアムロを殺意の籠もった瞳でブライトが睨む。全く、止めなければどこまで行くつもりだったんだろう、この目出度いバカップルは。
居たの、じゃないだろう。お前達の生写真とか売って隊の軍費の糧にすんぞコラ、と思いながらブライトがはあぁ、と深い特大の溜息をつく。
クワトロが誤魔化すように軽く咳払いをし、改めてアムロに向けて向き直った。
「ともかくだ、アムロ。私が売れと言っているのはνガンダムのことなのだが?」
しかし、この言葉を暫くぽかんとした顔で反芻していたアムロはその後でさっと顔色を青ざめさせ、逆に叫び返す。
「駄目だ、絶対駄目!νを売るなんて!その位なら俺が身体売るから!!」
「「………おい。」」
思わずクワトロだけではなく、ブライトまでツッコミを入れる。このガンダムキチめ、と舌打ちでもしたい表情のクワトロがブライト並に刻み込まれてしまった眉間のしわをぐりぐりと解した。
「そうではない…アムロ。スポンサーを募ろうというのだよ。」
「スポンサー?」
「うむ。…よく考えてみたまえ。我々の戦いは日々衛星中継で地球はおろかコロニーにも配信されているだろう?」
その言葉に、今やお茶の間夕方のニュースの顔でもある機体のパイロットはああ、そうかなぁと頷いた。
「それもそうだけど…。それとスポンサーと、どういう関係が…」
しかし、アムロはともかくブライトはこの時点でクワトロの意図に気付いたようだった。
「大尉、まさか…。」
クワトロがニヤリと笑う。
「その、まさかだよ。」
「しかし、うちは一応国家組織所属の正式な軍隊…。」
そのブライトの言葉をクワトロが鼻で笑い飛ばす。
「民間人協力者をこれだけ抱えている『ノア・イレギュラーズ』がかね?」
「その呼び方は止めてください!!」
アムロがあんぐりと口を開けた。
「ブライト、うちって『ノア・イレギュラーズ』なんて呼ばれてんの…?」
「そうだよ、アムロ。」
「大尉は黙っていてください!」
「ブライト艦長、背に腹は代えられぬという古来の格言もある。自分達で何とかしろと言うのなら自分達で手を尽くすまでだろう?」
クワトロ、悪魔の囁き。ブライトの表情が揺らいだ。
「いや、しかし…。」
「な、ブライトもクワトロ大尉も、なんの話をしているのさ?」
独りだけ未だに状況把握が出来ていないアムロが首を傾げた。
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OVER THE TROUBLE
死んでもオレの腕を離すな
今が人生で最悪の瞬間
OVER THE TROUBLE
しばらく世界中が敵だぜ
きみをさらって逃げろ RUN AWAY
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+++TO BE CONTINUED.
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