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She maybe the beauty or beast
Maybe the phantom or the feat
May turn each day into a heaven or a hell
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―――僕のせいで君が傷ついて、これまでのことが台なしになったというなら許してほしい。さあ、僕の胸に泣きにおいで。
「一体さっきから何を聞いてるのさ?」
耳に突っ込んでいたイヤーヘッドホンを片耳取り上げられ、返せと無言で手を差し出す。
取り上げた手は要求に応えず、イヤーヘッドホンの片方はそのまま赤褐色の癖毛の下にある耳に収まった。
二人で散歩に出た先、公園のベンチで休憩しているときの出来事である。
ちょっとあっちの方の花壇見てくる、とベンチを立ち上がって一周して返ってきたら、相方は持ってきていたらしいポータブルのプレイヤーで目を閉じて何かに聞き入っていた。
暫く隣りに腰掛けて景色などを眺めていたがそれはもう気持ちよさそうに聞いているので流石にちょっと興味が湧いたのだ。
耳に飛び込む柔らかくて深いゆったりした旋律。躍動感も高揚もなく語りかけ、寧ろ哀愁の方が先に立つような。
"Si je t'ai blessee, si j'ai noirci ton passe Viens pleurer au creux de mon epaule........"
……アムロには全く歌詞は聞き取れなかった。
「…なに、これ?」
「シャンソンだよ。とても古い歌だ。」
「へぇ、シャンソン。…な、これ何語?」
聞き慣れない言葉だけど、と言うアムロにシャアが解説を加える。
「旧地球世紀で言うフランス語だな。…ラテン語語源の古い言葉だ。」
「ふぅん。なんか、甘ったるい言葉と曲だね。」
「そういうものなのだよ。」
「そっか。」
どうやらあまりアムロの好みでは無かったらしいが、聞きかけた曲位は聞いてしまおうとでも思ったのかそのままメロディーの半分は返されることがなかった。
並んで腰を下ろしたままアムロは空を見上げ、シャアは木々を見つめながら同じ旋律を分かち合う。
暫く聞き入っていたアムロが顔を上げてシャアに尋ねる。
「ね、この歌なんていう歌なの、シャア?」
初めて金髪の男が微笑む。
舌の中で転がすような流暢な発音は流石と言おうか。
「"Viens pleurer au creux de mon epaule"……僕の肩でお泣き、とでもなるかな。」
そのタイトルは大して青年には感銘を与えなかったようだ。
「ふぅん。気障だよね、あなたにぴったり。」
「………。」
軽く息を吐きながら、男はかつて『女に突き放されていつまでも過去に拘る哀れな男』を唱わせたら天下一品、と称された歌手の名曲に聴き入るのだった。
とある麗らかな天気の日の、平和な午後の一幕である。
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end.
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