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まるでお月様のようだ、と幼い頃から容貌を評されることがよくあった。
初め頃はなんだよ、そんなに丸顔か、となんとなく不満を抱いていたのだけれど、
長じてそれが女性の容姿に付ける修飾語だと知って、益々不快になった。
僕は、女の子じゃありません、と何度口を酸っぱくして言い張れば信用して貰えるのか。
いや、多分もう、今の僕は女の子になんて絶対見えないだろうから。
どうすれば、からかわれなくなるのだろうか。女のようだと。
幼馴染みに相談したら、そんなことをぐじぐじ悩むのが女みたい、と一蹴された。
彼女はいつも、本質を実に容赦なく突いてくる。
―――悔し紛れに何だよオトコオンナ、と子供の頃と同じ返しをしたら、成長がないわねカミーユ・ビダン君、と年上ぶられた。
全くもって、彼女には敵わないのだ。
けれど、彼女には柔らかく受け止めて貰える僕の言葉は、時として人を傷付け過ぎてしまう。
本当のことを言うのが正しいことではないとは、誰も教えてくれなかったのに。
月さえ、太陽の光をそのままに反射している様に見えるだけなのだとは。
―――月は。
吹き寄せる風がすっかり冷気を孕み、冴え冴えとした外気の中、凛と光る月光を身に浴びて、僕は思う。
月は、陽光を受けて冴え冴えと中空に輝く。
与えられる存在であっても卑屈になることもせず、なんと形容されようが、不変で。
ただ泰然とそこに在る。
宇宙から地球に降りて、初めて大気にけぶって泣く満月を目にして。
僕もいつか、月のようになれたらなぁ、と思った。
全てのものを等しく照らし、傍若無人になにもかもを暴き立てる太陽ではなく。
孤高にしてどこか優しい月光の様に、ただそこに在れればいい。
微笑んで赦す、それだけで生きて行ければいいのに。
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...end.
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