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「……陽子?」
「んー。」
気怠い返事を返すと、溜息が降ってくる。
「…重いんだけど。」
「私は重くない。」
「オイラは重い……。」
ぼそぼそと文句を言う人語を喋るおおきなネズミは、金波宮の庭で一番日当たりのいい大木の下で久方ぶりの休憩時間とくつろいで本を読んでいたはずだった。
なのに、気がつくとその膝にずっしり重い荷物が乗っている。人の頭っていうのは重いんだからな、肩凝りになるくらいとぼやいてみても馬耳東風だ。
何度か同じ押し問答をして諦め、楽俊はぱたんと本を閉じて自らの脇に置いた。
「オイラはちょっと陽子に甘すぎる気もするんだがなぁ。」
「気のせいだろう。」
「あながちそうともいえねぇんだよな。陽子はなんのかんの言いながら人をその気にさせるのが上手いからなぁ…。」
ま、王様としちゃいいことなんだろうけど。
呟く灰色のネズミのふかふかとした毛皮に顔を埋めていた陽子がふと思い立ったように体を起こし、ぎゅうっと小柄な身体を抱き締める。
ぞわわわわっと楽俊の毛が尻尾まで逆立った。
「…モモンガみたい…。」
陽子の感想は相変わらず半テンポほどずれている。
「みたいであるかっ!!陽子、お前なぁ、オイラがいっつも慎みを持て慎みを持てってあれほど…!!」
お小言モードに切り替わる楽俊だったが、その後でもう一度絶句することになる。
「…髭がくすぐったいな。」
「…………ほっとけ。」
最早何もいう気力を無くして脱力するネズミを余所に、前々から実行してみたかった『楽俊のほっぺちゅー』を実行した陽子はご満悦でその毛皮にもう一度頭を埋めたのだった。
楽俊が読書の時間に無事戻るまでには、まだ暫しの時がかかりそうである。
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end.
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