|
**********
I WAS sick---sick unto death with that long agony;
and when they at length unbound me, and I was permitted to sit,
I felt that my senses were leaving me.
The sentence---the dread sentence of death---
was the last of distinct accentuation which reached my ears.
....Edgar Allan Poe
*:*:*:*
ゆっくり、ゆっくりと。
昔読んだ怪奇小説の一節のようだ。あれは、確か振り子に首を切られる前に助かったのだったろうか。
今のオレの様だよな、と自嘲の笑みが漏れる。
ゆっくりゆっくりと、オレの周囲の包囲網は狭まっている。
最初は阿笠博士一人。
服部、灰原、そして多分キッドのヤローも。
今じゃ、何人オレの正体を知っている?
知らない。蘭だけが今も知らない。
一番知っていて欲しい人は、気付いていない。報せていない。何度も機会はあったけれど、尽く下手な誤魔化しで押し通した。いや、もしかしたらもう…とっくにばれているのかもしれないけれど。
二人の間を繋ぐのは、電話線という細い一本の糸だけ。それさえ、肉声を聞かせてやることもままならない。機械を通した、合成された「新一」の声。
声だけじゃ。
触れることさえ叶わないなんて。…彼女の気持ちも知っているのに。
今更、今更今更今更今更いまさら。
―――言えるかよ、バーロー。
傷つけたくないという言葉に紛らわせて、狡くて卑怯なオレは真っ直ぐな彼女の気持ちと正面から当たる事を避け、とうとう手を取ることさえ出来なくなってしまった。
触れたい。大声で叫びたい。オレは何時でもお前の側に居るんだ、蘭。
オレがお前から離れる事なんて、出来る訳ないだろう?
そんなこと、本当はお前が一番良く知ってるんじゃないか。
蘭、蘭。らん…蘭ねーちゃん。
一番側にいて、一番遠くにいながらオレは名前を呼び続ける。
せめて、名前を。同じ空気を。お前の中の俺の気持ちへの変化が、一番近くで感じ取れるように。
決して手遅れになんかさせない。…いや、手遅れ…なのは。……本当か。
だけど、どんなにみっともなくても浅ましくても失えない。
―――蘭。
彼女がオレを見ないなら、オレが「新一」に戻る意味さえ無くなるって事、お前は知ってるか?
『バイバイ、新一。』
そう言って彼女が泣きながらオレにキスをする。
そんな哀しい夢が、本当の夢にならないように。
振り子が穴の底まで堕ちて、オレの首を切断してしまう前に。
―――早く。
**********
end.
|