そっと髪を撫でて 肩を抱いて そばにいるね
あなたが眠るまで やさしいキスをして
電話してくれたら 走って行くから すぐに行くから
なにもかも放り出して 息を切らし 指を冷やし
すぐ会いに行くから
*:*:*:*
□SIDE:"Amber"
ゆるゆると長目の焦げ茶の睫が動いて、ぱちんと開いた。
「ん、もう朝なのか?」
ひとつ小さな欠伸。その後胡散臭そうに起こしたはずのこっちを眺める。…相変わらず信用がない。
「…そんなに言わなくても聞こえてるよ。なんだよじっと見て。…さては、俺が寝ている間になんかしたな?」
見上げてくる悪戯っぽい瞳は赤みを帯びた琥珀の色に煌めいている。
暖かくとろける瞳の色は眺めているだけでも艶やかで、惹き寄せられてしまう。
羨ましいことにアムロはぱちんと目が醒める方だ。寝起きはいいね、と微笑んだ。
「…はいはい、相変わらず口うるさいんだからなぁ、は。」
肩をすくめてもう一度ぽすんと枕に頭を落とす。寝るなと言ってやるとおかしそうに微笑んだ。
「いつもと逆だね?」
言われたので少し膨れてみせる。
するとアムロはごめんよと笑いながら今度こそゆっくりと腕を伸ばし、私にキスをしてくれた。
「…大好きだよ、が。普段はあまり言ってあげられないけど…ね。」
照れ屋で言葉の少ない彼が甘える表情は滅多に見せないので正直嬉しい。
プレゼントのつもりかと聞くとそうだと素直に答えてくれた。
早起きは三文の得とかなんとか軽い嫌味はさらりと無視した。
琥珀色の熱を持った瞳が潤むのをうっとりと眺めながら、私も好きだと想いを告げる。
本当に、リラックスしているときは子供みたいな相手なのだけれど。
やられっぱなし、というのも性に合わない。
ふと悪戯を思い立って、腕を伸ばして男性にしては華奢な手首を取る。
訝しげな顔を気にも留めず、その手の平にキスを与えた。
「…なっ!!」
「お返しだよ。」
最後にぺろりと軽く舐めると真っ赤になって焦る彼が可愛らしくて笑い出したくなる。
そのまま知っているかなと注釈を付け加える。
「手の甲へのキスは親愛の証だけれど、手の平へのキスは…。」
「愛情の証なんだろう?知ってる、耳タコ!」
聞き飽きたよ正直のその台詞!!
と反論してくるこの世で最も愛おしい存在を赤ん坊のように胸の中に抱き締め、私はもう一度夢の中へと旅立つことにした。
どんなに照れ屋か知っているけれど、たまには主導権だって握らせて欲しい。
休日はまだ、始まったばかりなのだから。
もう一度眠りたいらしい、安らかに私の胸に顔を寄せて瞳を閉じるアムロを見ながら。
幸福という満ちる感情を、強く強く噛みしめていた。
*:*:*:*
報われなくても 結ばれなくても
あなたは
ただ一人の 運命の人
今日という一日が終わる時に そばにいられたら
明日なんていらない
髪を撫でて 肩を抱いて あなたが眠るまで
この出会いに やさしいキスを これが運命なら
*:*:*:*
□SIDE:"Sapphire"
目を覚ますと、もう相手は起きあがってこちらを見つめていた。
いつもは寝起きの悪い相手なので不思議に思う。こちらが起きたのに気付くと、青い瞳がふっと柔らかくなった。
「おや、起きたのか。」
…こんな時間に貴方が起きている方がおかしい。そう言ってやると苦笑した。
「そんなに睨むな。何もしては居ないよ。そんなことよりこそちゃんと布団は被って寝たまえ。風邪を引くだろう?…こら、寝るな。」
長い指が伸びる。起きろと頬をやわやわとくすぐられる。
いつもと逆だと笑い出すと困った顔になった。あ、珍しい。
金の濃くて長い綺麗な扇形の睫が伏せられると音がしそうだ。
じっくり眺めなくてもシャアが美形なのは知っていたけど、…ねぇ。
思わず起きあがると薄い唇にキスをした。あ、びっくりしてる。
「プレゼントかい?」
尋ねられたので笑顔でそうだと返してやった。滅多にしない好きだという告白も添えて。
嬉しそうなシャアにこちらも笑顔になってくる。早起きは三文の得だっていうでしょ?ご褒美だよ、たまにはね。
ふふんと得意になっていると、には驚かされてばかりだと深い青い瞳がもっと濃い色になる。
同時に降ってくる、甘いばかりの言葉と低く掠れた大好きな声。
「私も…正直此処までを想うようになるとは想像だにしていなかったのだが……。」
見惚れた、正直。呆然と眺める。シャアがここまで蕩けた表情が出来るだなんて。
コーンフラワーブルーだっけ、サファイアで一番高価なやつ、とか思い浮かべていると、腕を取られた。
油断した、と思った瞬間にはもう手の平に薄い唇が当たっている。ちょ、ちょっと!こら、舐めるなって心臓に悪いんだから!!
「…なっ!!」
「お返しだよ。」
しゃあしゃあと言い放たれる。ま、全くほんとにもう、油断も隙もないんだから貴方はっ!!
憤慨していると海の色の瞳がゆらりと波打ってこちらを眺めてくるからまた鼓動が早くなる。
「手の甲へのキスは親愛の証だけれど、手の平へのキスは…。」
「愛情の証なんだろう?知ってる、耳タコ!」
照れ隠しに甘い台詞は聞き飽きたと無愛想に言い放つと、じゃあ言葉はもう必要ないな、と。
長い腕が伸びてきて、しっかり腕に抱き込まれてしまった。
…なんかやっぱりペース奪われっぱなしの気がする。
まぁいいか。まだお休みは始まったばかりだし。
そう思いながら瞳を閉じた。