|
**********
:*+*+*:
誰もいない海
二人の愛をたしかめたくて
あなたの腕をすりぬけてみたの
走る水辺のまぶしさ
息も出来ないくらい
早く強くつかまえに来て
:*+*+*:
「…で、こんな所で何をしてるんだ?」
「カミーユ!」
弾かれたように振り返る黒髪の少女に、カミーユが首を傾げる。
「なんだよ、変なヤツだな。そんなに驚くところか?」
「だって、いきなりなんだもの…ああ、びっくりした。」
はぁ、と息を吐く幼馴染みの少女にカミーユが苦笑する。別に彼は驚かせるつもりはなかったのだが。ファもその事は良く知っているのだが、何となくカミーユのことを考えていたところだったので余計に驚いてしまったのである。
ばつの悪さを誤魔化すように、極力素っ気ない口調で尋ねてみる。
「なぁに、カミーユ。」
カミーユは彼女の肩を叩こうと上げていた腕を降ろしながら、視線を僅かに泳がせた。
「ああ、うん。クワトロ大尉が頼み事があるから来て欲しいってさ。」
少女が首を傾げる。金髪の、あの責任者であるところのお偉い大尉が、彼女に一体何の用事があるというのだろう。カミーユならともかく。しかも。
「頼み事?」
「ほら、地球から連れてきた子供二人をどうしようかとかいう相談だろうと思うけど…。」
言いながら、少年は少女の肩に着く豊かな黒髪にふと目を留める。何気なく手を伸ばしてさらりと流れる毛先の動きを指に掬い取ると、ファが焦ったようになによ、と苛立った声を上げた。
なので少年はそのまま無意識に、問いかける。
「そういえば、ファって昔は髪の毛、短くなかったか?なんで伸ばし始めたんだ?」
「ん、それは、女の子らしくないからよ。」
ファが苦笑する。その後で何か思いだしたように悪戯っぽく微笑んで付け加える。
「ほら、だって小さい頃なんか私と遊んでいたら必ずカミーユの方が女の子に間違われて…。」
「ファ!」
カミーユが僅かに拗ねた口調で黒髪の少女の饒舌を止めた。全く、そういうところが女の子みたいだ、って余計に言われること、分かってないのかしらね、とファは余計におかしくなった。
「今じゃ、カミーユと私と、どっちが女の子らしく見えるかしらね。」
「怒るぞ、ファ。」
眉を吊り上げる、文字通り柳眉を逆立てるカミーユに、ファがくすくす笑い出す。
「クワトロ大尉に聞いてみようかな。」
「〜〜っ、ファ!!」
「カミーユと私と、どっちが好みのタイプですか〜、とかー。」
「なに馬鹿なこと言ってるんだよ!」
「あれー?カミーユ、やきもち?」
「そんなっ…わけが、あるかぁっ!!」
かぁっと赤くなって反論する少年を、ファはもう少しからかいたくなった。
「心配しなくっても、カミーユの大好きなクワトロ大尉は取りませんー。」
「だからっ…!なんでそうなるんだよっ!俺はあんなオヤジなんて大嫌いなんだからなっ!!」
「はいはい。キライキライもスキのうち、って知ってる?カミーユ。」
「ファ!!!」
ぱっと逃げ出した少女を追い掛けながら怒鳴り散らす少年には、彼女の横に並んで自分が男らしく見えるだけの余裕がないから過剰反応を返すのだということを、少女は知らない。
少年が「女みたい」と言われても怒らなくなるのは、未だ少し未来、彼女の髪の毛が肩を超えて胸まで届くようになる頃のお話である。
:*+*+*:
好きなんだもの
私は今生きている
私は今生きている
私は今生きている
私は今生きている
:*+*+*:
**********
end.
|