PARK LIFE * * * * * * * * * * 「じゃあ、どーっしても僕が悪いって言いたいんだ、メフィスト二世。」 「だっから誰も言ってないだろう?!そんなこと!!謝れって言ってるだけじゃないか!」 「そーれーが、僕を責めてないって言える態度?」 「もー、二人とも止めるモン!」 『百目は黙ってろっっっ!!!』 双方から怒鳴りつけられて、百目が小さくなる。元々ほとんど怒ったり怒鳴ったりする事のない真吾が怒ると、相当怖い。しかし、百目はまだ果敢に調停を試みた。 「あ、悪魔くーん、止めるんだモン…」 「メフィスト二世に言ってくれよ!」 「あんだと?大体、先に俺のものに手を出したのはそっちじゃないか!!」 「だから!知らなかったから仕方ないだろう!?それに僕は謝ったじゃないか!!」 「いーやっ!謝って済む問題じゃないね!」 ……舌戦は堂々巡りだ。おろおろと見守る百目の背後に、ばさりと影が差した。 「はーい、元気?悪魔くん、百目ちゃん…って何事?」 「ああ、鳥乙女!いーところに来たんだモン!!」 窓から登場するなりあきれた声を出す鳥乙女ナスカの元へ、ほっとしたように百目が駆け寄った。 「悪魔くんとメフィスト二世を止めて欲しいんだモン!」 「はぁ?」 「大喧嘩してるんだモン!」 「大喧嘩って…悪魔くんと、メフィスト二世が?珍しいこともあるものねー。」 「そんな暢気なこと言ってる場合じゃないモン!!」 必死な形相の百目につられてナスカがそちらに目を向けると、確かに悪魔くんこと埋れ木真吾とその第一使徒メフィスト二世が睨み合っている真っ最中で。 「……いいんじゃない?あのくらいの年の男の子、喧嘩の一つや二つするわよぉ。しないほうがおかしいって。百目ちゃんもそんな気にしちゃ駄目だってば。」 「ナスカ、薄情だもーーーーーんっ!!」 あきれたように言うナスカに百目が抗議する。 「百目ちゃんは、騒ぎすぎ。大体原因はなんなの?」 「それは……」 百目がもごもごと口ごもるのと同時に、そこだけ聞きつけたらしい喧嘩の当人達がくるり、と振り向いて同時に叫んだ。 「悪魔くんが俺の秘蔵のゲキカラ・トウガラシ・ヌードル喰っちまったんだよ!」 「僕は謝ってるのにぜんっぜん聞こうとしないんだっ!!」 「謝ってる?逆ギレしただけじゃねーか!」 「それは君があんまり分からず屋だから…大体、僕んちに放置しといてよく言うよっ!!絶対、僕のもんだと思うだろう?普通!僕の机の引き出しに入ってたんだから!」 「だから、あれは誰かに喰われない用心としてだなぁ!!大体、悪魔くんが食べちまうなんておもわねぇよ、普通!!」 「それを言うなら君こそ僕の机をなんだと思ってるのさ!!食料貯蔵庫?君専用の?!生憎……」 「あーーーーーーっ!!もうやめなさいっっっっっっっっっ!!!!!!!!!」 ナスカに大声で止められ、さすがに二人の不毛な舌戦が止む。 「事情は分かったわよ…あきれてものも言えないわ。あんたたち仲良いくせにくだんないことで喧嘩するのねー。」 「べっつに、悪魔くんとなんか仲良くしたいなんて思ってネェけど?俺。」 「黙りなさい、メフィスト二世。どこんだって尻尾降って付いていくアンタが何いってんのよ。」 「ああっ?!ナスカ、そりゃちょっと聞き捨てならねぇ……」 「だぁ〜から、黙りなさいって。悪魔くんも悪魔くんよ。日頃は温厚なくせになんでこんなつまんないことにいちいち関わって怒ってるのよ。」 「だって、それはメフィスト二世が……」 「人の所為にしない!日頃は気にもしないでしょう?なーんで突っかかっていくんだか。」 「何だよ、ナスカ。てめぇ偉そうに言ってるけどコウモリ猫と年がら年中犬もくわないフーフゲンカやらかしてるてめぇに人のこといえんのかよ。」 けっ、という擬音と共に吐き出されたメフィスト二世の言葉に、元々武闘派のナスカの眉が吊り上がる。 「コウモリ猫のことは今関係ないでしょ??!!全くすーぐ逆ギレしていじけるんだからおぼっちゃまは。」 「何を?!悪魔くんもっ!、手ぇ叩いてんじゃねぇっ!!!」 「いや、言い得て妙だと思ってさ。」 「……そんならこっちだって言わせて貰うけどなぁっ!!そのタマネギ頭……」 「もーーーー本当に止めるもん!!!!!!」 横合いからの大声に、三人の言い争いがぴたりと止んだ。はぁはぁと、百目が肩で息をしている。 「みんなみんな大人げないんだもん!そんなんじゃ、そんなんじゃ東獄大帝には勝てないんだもん!」 体中の百個の目から涙をぶわわわわわ〜〜〜っと零して泣きわめく百目の姿に、慌てて皆が言い争いを止める。 「百目ちゃん、落ち着いて……」 「お、おい、ちょっと、そんな泣くなよ。なぁ。」 「そうだよ百目。いつものことじゃないか。」 しれっと言ってのけられた言葉に、百目の目からは新しい涙が吹き出し、鳥乙女とメフィスト二世は硬直した。 「あ、悪魔くん?」 「何?」 「もしかして、ほんっと〜〜〜に、怒ってる?」 「まさか。怒ったりなんかしないさ。『タマネギ頭』って言われたくらいで。」 にーっこりと微笑みながら浮かべられた氷の微笑を見て、魔界の公爵メフィスト家の長男坊は恐怖に顔を引きつらせながら必死でわびを入れたのだった。 「悪魔くん、怒ったらめちゃくちゃ怖いんだもーん……」 「いやだぁ…私たちは絶対怒らせないようにしましょうね、百目ちゃん。」 その様子を部屋の隅から見守りながら、ひそひそ呟く第六使徒と第八使徒の姿が在ったとか、無かったとか。 埋れ木真吾と十二使徒は、本日も平和である…… とりあえず、今日のところは。
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